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伝わる心、伝わらない心

タカヒロが珍しく昼過ぎに顔を出した


「じいちゃん。こんちは!元気そうじゃん!」

「どしたタカヒロ~またサボったのか!」


「違うよ。先生の月一回の全体会議でさ、学校に残ったらダメなんだ。だから来たんだよ」

「そうか。・・タカヒロ、あのな お前に黙ってた事がある。悪い。

あのな、お前がいつも会ってたりっちゃんって・・広沢律子って言う名前だろ。」


「なんで?りっちゃんがそう言ったの?てか

・・会ったの?」


「いやお前が_____________________________________

____________........そしてお前に話した俺らの文化祭のあのメンバー、・・・律子は広沢律子なんだ」


隆はベッドに置いてある栞も見せた。この栞の場所は俺らの場所だ。そしてよく見てみろ、ここにギターが描かれているだろ?」


「え?あっほんとだ~分からなかったけど、ギターだね」手に取り間近で見るタカヒロ

「わ、すごいや、本当だ」


隆は律子から伝言が来た事、実は同級生だった事、そして・・忘れられない人だと言う事をタカヒロに全て告げた。


「じいちゃん、、、話してくれてありがと。あのさ、俺もじいちゃんに話しておかなければならない事がある」


「なんだよ?」


「うん、これ・・」タカヒロは鞄から手帳を出し、間から一枚の写真を出した。

律子と隆の写真だった。


「これどこにあった?」隆は驚いてタカヒロに聞いた


________________________

「そうか~~しかし俺らはなにやってんだろうな! お互いなんでも話そうぜ?これから!」


明るく言いながらも写真を愛しい目で眺めてたのをタカヒロは真横から見ていた


そして、その言葉を聞いてタカヒロは安心して律子との事をゆっくりと話し始めたのだった


「あのね、りっちゃんが突然泣き出したんだよ。忘れられない人がいるみたいだった。

忘れられないと言うか忘れたくないって。僕に話す時ね、少女みたいにかわいい顔して話ししたんだよ・・

今でもね、好きみたいだよ・・・・


じいちゃんのこと・・」



隆は真剣に聞いていた「タカヒロ、真面目に考えてみ?もう半世紀前の事だ。しかもお互い結婚して

まあ、俺は失敗したけどな。


でも律子は旧姓のままだったな?」


「りっちゃん 子供もいるって。ただ結婚はしなかったって言ってた。一人で育てたって」


「そんなこと・・大変だったろうに・・何故なんだ・・」


「じいちゃん。会ってきなよ。もう偽りの伝言ごっこ止めなよ。りっちゃん・・待ってるよたぶん

今から行く?」


「今からか?今はダメだ

その、、心の準備ってもんが、、いや まず律子にもう一度だけ手紙を書くよ それから律子の体調も気になるし、俺はその アレだ、、  」      隆は珍しく焦りを見せた


「散髪してだな、それから髭剃って、パジャマも綺麗なやつじゃないとな。

いや、パジャマじゃ病人そのものだな 」



「じいちゃん、 ここ病院だし。」 タカヒロは笑いながら話す


「うんうん、パジャマね渋いの持ってくるよ。

それから売店横の散髪屋に予約入れておく 、売店でカミソリも買う。

それでいい? 」


そう言うとタカヒロは帰る準備をする。

律子に会いたいのはタカヒロも同じだったが律子の体調を考えて我慢したのだった、そして一番会いたいのは

祖父、隆だと言う事をタカヒロは心に留めた。




_______________




隆は律子への手紙を書きだした。




[律子へ]

俺が誰だか分かるか?隆。山村 隆だ。隆宏から全て聞いたんだ。栞で、栞でお前だと気付いた。

こんな偶然は奇跡のようだよ。

・・ずっとお前の事は覚えていた。

いや忘れられる訳ねぇ。俺はあの時若かった。自分の事しか見えてなかったんだよ。

会って謝りたいと思っていた。


体調が良ければ律子が退院する前に、少しの時間でいいんだ。話がしたいんだ。


_____________

____________

.........

[隆]



_________________



受付には無愛想な看護士と婦長がいた



「あら山村さん」


「婦長、 いつも申し訳ありません。

これお願いします 」



「はいはい!お安いご用よ!広沢さんが

戻られたら渡しておくわね」



「お願いします。」 深々と頭を下げる隆



隆がエレベーターに乗り込むと同時に受付の電話が鳴る




婦長が出る


「はい。はい、わかりました すぐに参ります。」

婦長が若い看護士の美山に言う


「美山さん 、婦長会議の時間が変更になったから今から行ってきます。

引き継ぎしますね、えっと・・まず

605の大下さんのレントゲン回収と点滴交換、


610の宮前さんはチューブ交換と体位交換

611、613の部屋回って検温、測脈、与薬の説明、 602の広沢さんには伝言 これも仕事の内よ

頼んだわね」



「・・分かりました。」


婦長が席を立ちエレベーターに乗り込んだ途端


「一人で忙しすぎるって話しよね~。はぁ~」だるそうに呟く看護士の美山

「さて、 とっとと済まそうっと 」


若い看護士は鼻歌混じりにカルテを持ち病室を回る




_____________「やっと終わった

人件費削りすぎなのよね 全く。


つぎは、、ああ伝言ね。下らないわ~ じいさん、 ばあさんの手紙ごっこ~。」


渋々、律子の病室に向かう看護士の美山



「まだか~ まだ帰ってないじゃん」


ナースセンターに戻ると、とりあえず受付下のカゴにそれを無造作に投げ入れた



「先に ご飯に行ってこよ。」

看護士の美山が休憩にたった


交代の新人看護士がやってくる


「こんなにも散らかしてさ美山さんたら!

また新人の私が注意されるってーの 。」


受付下のシュレッダー 行きのカゴを早速片付ける


シュー、ガリガリ

シュー、ガリガリ 無言で作業を続ける



真横にある引き継ぎ用のカゴも確認し

整理整頓した後、 検温に回る


夕方、婦長が戻って来る

「夕礼しますね。 では

引き継ぎお願いします 」



「....佐川さん 以上ありません 」


「.....宮前さん 床擦れが酷くなってました

経過観察です」


「問題ありません」





「分かりました 。ああ美山さん伝言もOKかしら?」

「あっ・・・はいOKです」美山は忘れていた事に気付く


婦長が席を離れた隙に伝言の入ったカゴに手を伸ばす

「あれ?ない、なぜ?わっどうしよ」


新人看護士がそっけなく答える「私が綺麗に片付けましたよ~美山さんそのままだったじゃないですかぁ~」


「どこに片付けたの?」「え?引継ぎファイルに挟みましたよ?」


「ないわよ?」「そんなぁ~~後はシュレッダーのカゴに入ってた分だけですよ?それなら全て、さっき・・」


「マジ?どうすんのよ。例のお手紙ごっこの紙あったのよ!」


「マジっすか?・・もうバラバラですよ・・」

「内緒にしましょうか?どうせバレないっすよ。二人とも結構年でしょ?

どっちかが忘れてたって事になるんじゃないですか~?」  「そうだね、まいっか。」






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