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過去からの手紙

重い足取りで隆の病室に戻ったタカヒロ



「どしたんだ?早くねえか? 」

「うん・・ 会えなかった。

検査だって。」


「そうかー仕方ねえな。」


「じいちゃん、明日から学校行くよ

りっちゃんは三日後しか会えないみたい。 じいちゃん実はさ、、、」


「なんだ? 」


「あのさ、、りっちゃんってさ・・

いや、やっぱ俺からは言えないよ」


「なんなんだ変な奴だな 」


「三日後また来るよ」


「タカヒロ、 先生から言われたろ?

来るなら学校が終わってから来い。 さ、たまには下まで送ろうか!」隆はベッドから降りスリッパを履く


「いいよ~送るなんて~どっちが病人なんだよ。」


「おめぇ 病人って嫌な言い方するねぇ~もうピンピンしてんぞ!ピンピンしてんのは他にもあったりしてな?」


「相変わらずだねー」タカヒロはクスリと笑う


二人は一階に降りて来た

すると隆の前を金髪のあの娘が通り過ぎた


「あれ?あの娘?おいタカヒロ、りっちゃんがいるぞ!」


「え?うそ?何処?何処?」

「ほれ、あの自販機の前を見ろ」隆はニヤニヤしてタカヒロの腕を引っ張る


「え?自販機?」タカヒロの視線に入るのは若い男と派手目の金髪の若い女だけだった

「そこだよ。やっぱあの小娘はダメだな。顔がいいから男と遊びまくるぞ」


「・・・じいちゃん。誰?誰あの人?あんな人知らないよ」

「りっちゃんだろ?お前が毎日会ってるあのりっちゃんだろ。金髪って言ってただろ。」


タカヒロはおかしくなった。

「じいちゃん、金髪って本気にしてたの?ごめんごめん。

違うよ。りっ、ううん。律子さんはもっと上品な人だ。それに僕なんかよりさ、じいちゃんの方が、あっいや

・・・・また今度話すよ。


送ってくれてありがと。学校帰りにまた来るね。」


「、、お、おう。」隆は首を傾げながら

「律子さんか・・律子さんね・・・」隆は自販機の前の二人を横切りエレベーターに乗り込んだ



____________________


そして、タカヒロは学校に行きだした

その頃 律子は体調を崩して一週間ほど寝込んでいた


律子も気になっていた。 がしかしテラスへ行く元気もなかった

タカヒロとの約束が気になり律子は担当の看護士である婦長に相談をしてみた


「_________

そうなの。 だから毎日楽しそうにしていたのね 」

婦長は親身に聞きながらそう答えた


「何か伝言あれば 伝えてあげるわよ、で

その方は何階から来られてたのかしら?」


「わからないの。 ただ肝臓を悪くして入院してると言っていたわ」


「名前は分かる?」

「ええ。山村・・・・隆。山村 隆さん」


律子は付き添いであるタカヒロの名前ではなく


<隆>と告げた。それはどうしても確認しておきたかったからでもある


「分かったわ。調べておくわね。」


「お願いします」

「大丈夫よ。広沢さんはゆっくり養生しておいてください」



婦長はナースセンターに戻って調べる事とした。


「肝臓、肝臓、、<肝胆膵外科>、、、ないわ。、、<肝臓内科>、山村、、山村 隆、、ああ8階ね。」


内線で8階のナースセンターに電話をかけた


「もしもし、6階消化器内科の小川ですが」  「小川婦長。お疲れ様です。」

「そちらの階に山村 隆さんいらっしゃるわよね?」


「ええ。山村さんね?あの山村さんね・・」

「え?あの山村さん?」


「あの方は有名よ~他の患者さんのお子さんが騒いだだけで声を荒げるし、短気だし、まあこの階では有名な患者さんよ。だから今は4人部屋だけど1人よ。あの部屋だけ1人よぅ。」 肝臓内科の婦長が言う


「そうなの・・まあいろいろあるんでしょ。

あのね詳しくは知らないのだけど伝言を預かっているの。それだけ伝えてほしいのよ」


「伝言ですか・・山村さんにね・・」 少し嫌そうに婦長が答える


「手紙を預かるのでまたそちらに行きます。」

「分かりました。」





_________

隆が食堂から戻ると隆のベットの上に二つ折りにされたコピー用紙が置いてあった。

その上には付箋が一枚、事務的に貼られていた


<山村さんへ 6階の婦長経由で手紙を預かりました  石野>

 「あのヒステリ眼鏡の石野かよ」隆はブツブツ言いながら付箋の付いたコピー用紙を開いてみる


[タカへ 

すれ違ったまま こんなにも会えないなんてね・・・。昔のような、なんだろう・・切ない気持ち?に

なりました。おかしいでしょ?


二人の本も後、少しだけ残っていますね。栞も挟まったままですね。

考えればタカは学生さんだものね。勉強頑張っていますか?

高校時代は大切に過ごしてね。文化祭に向けて練習もあるでしょう。

陰ながら応援してるわ。


文化祭って素敵な響きよね。私達も最高だったもの。メンバーの絆を大切にね。

大人になってもそれらは切れる事はないわよ。


また近い内に会えますように。  この手紙は婦長さんにお願いしました。

あ、それとずっと前に、前にね、言った事覚えてる?私が泣いてしまった訳を。

次に会う時に話すわね。退院する前までにはね!私達は友達だから。


一つだけ今、話すなら・・私の大切な心の曲。それは<Hey Jude>でした。

続きは今度ね!

ではまた、ハナミズキの下で会いましょう


広沢 律子]





<タカへ  すれ違ったまま  こんなにも逢えないなんてね・・・・>


隆は目を疑った

タカとは自分の学生時代のあだ名しかも・・・

一行目を読んだ瞬間 過去からの律子の手紙だと思った。思わず目を擦った。

「これは夢なのか?・・・まさかな」



<二人の本も・・>


隆は我に返ったのだ  


「な、訳ねぇよな あーびっくりした。

久しぶりにあんな話をしたからだな~俺もどうかしてるぜ。

りっちゃんがタカヒロに書いてくれたんだな。あの金髪娘にしては達筆だな

金髪娘・・タカヒロは違うと言ってたっけ。律子さん?」


・・・・・・・


内容を読み進めて行く内に表情が変わる隆


広沢・・律子・・


どういう事なんだ?

いや違う。違うはずだ。うん 違う。結婚したら性は変わるはずだ。

俺は何を考えているんだ。



隆は混乱した


Hey Jude、 心の曲 、

広沢律子

頭の中で繋げばあの律子以外に考えられないのだ


「・・・・・ハナミズキの下でか。」

隆はそのタカヒロ宛ての手紙をベッド脇の引き出しの奥の方に

仕舞った




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