一夜目 アクムノハジマリ
遅れて申し訳ございません!
今回から本格的に始まっていきます!
目が覚めると、なぜかパジャマと裸足のまま知らない場所に立っていた。よくある異世界転生かとも思ったが、即座に否定した。
周りを見渡してみると、俺の町、夢美原——とは言えない。
所々に夢美原の面影は感じるが、夢美原とは絶対に違う、それだけは分かった。
夢美原のシンボルであるタワーも、全体的に赤黒く染まってて、さらに真ん中で折れている。ありえない。
上を見上げると空には——真っ赤な満月が浮かんでいた。
「これは…夢か?」
だとしたらなんてタチの悪い夢だ。いや、だとしなくてもこれはタチの悪い夢だ。
多分、夢の種類としては悪夢なんだろう。悪夢はストレスや疲労で見やすいといわれているらしい。恐らくここんとこ忙しくて疲れが溜まってたんだろう。しかし、悪夢とか小学生以来だな。
「よし、どうせならちょっと探検してみるか」
とりあえず、どうにもできないので適当にぶらついてみる。どうせ夢なんだから、目が覚めたらそこで終わってしまうんだし。
適当に歩いていた俺は、近所の公園に着いた。とは言っても、わずかに残る遊具からでしか分からなかったが。
「ん?」
目を凝らすと、公園の奥のほうに何やら黒い影がうごめいているのが見えた。
——直後、俺の危険信号が、過去最大の警鐘を鳴らした。
行くな。
戻れ。
近づいてはいけない。
第六感が、そう伝える。しかし、気になって仕方がない。
昔から俺の直感はよく当たっていた。でもそれは、危険という意味でだ。
実際、小学生のときはそれで事故に巻き込めれなかったし、高校のときも、近くのコンビニは嫌な感じがしたから別のコンビニに行くと、さっき行こうとしてたコンビニに強盗が入ったこともあった。
だから、今回のこれも、逃げたほうがいいんだろう。
「…」
でも…好奇心が勝ってしまった。どうしても見てみたかった。
一歩、また一歩と歩みを進めるたびに、第六感は、さらに強く訴える。
行くな。
戻れ。
それでも俺は足を止めない。いや、止められない。
行くな。
戻れ。
後悔する。
影まであとわずかという時に——俺は、転んでしまった。
「あっ…」
ゆっくりと影が振り返った。それをみた瞬間、俺は一気に冷や汗が流れた。
なぜって?——だってそれは、この世の生き物じゃないからだ。
大きさの異なる目をせわしく動かしながら、こちらを見据えるそれは——まさしく化け物だ。
それにさっきは暗いうえに離れていてよく分からなかったが、前身が赤黒く、まるで血をかぶったみたいだったからだ。
「う…うわぁ!!」
気が付くと俺は走り出していた。普通のな俺だが、足と体力にはそれなりに自信があった。
それに、あれに捕まれば間違いなく殺される。そんな確信にも近い予感があった。
俺はともかく全力で走った。裸足だとか今は関係ない。ただひたすら走った。
「うお!?」
足がもつれて転んでしまった。幸い、右足の膝を軽く擦りむいただけだ。
まだ走れる!そう思い立とうと——
「…!!」
背中に、強烈な悪寒が走った。見たくないのに、首は勝手に振り向く。
「な…なん…で…」
化け物は、あろうことか俺の真後ろにいた。全力で走ったのに、これでは意味がないじゃないか。
「ぅ…ぁ…」
もはや声すら出ない。
化け物の、手らしきものが、俺の顔に伸びてくる。
「(頼む…!早く、早く覚めてくれ…!!)」
しかし、覚めない。
その間にも化け物の手は、ゆっくりと手を伸ばしてくる。
「(早く!早く早く早く早く!!!)」
そしてとうとう、その手が顔を掴み、俺は、死を覚悟した——。
「——」
——目が覚めると、俺は自分のベッドの上にいた。
大量の汗をかいているから、パジャマがびちゃびちゃで気持ち悪い。
「…嫌な夢をみたな」
まぁ、夢だし気にすることもないか。とにかくこのパジャマを着替えたい。
俺は汗でびちゃびちゃのパジャマから一刻も早く着替えようとベッドから出て立ち上がった――すると足の裏が痛い。
「痛…なんだ?」
画鋲でも踏んだか?と思い確認すると、なぜか砂やじゃりがついていた。
「…何で、」
理解できなかった。寝ながら徘徊したとも思えない。
「…ここも、痛いな」
足の裏ばかりに気を取られていて気が付かなかったが、どうやら、もう一か所痛いところがあるらしい。
「一体ど——」
どこ、とは続けられなかった。なぜならパジャマの右足の膝の部分が泥で汚れていたからだ。
「っ――」
今度こそ、言葉が、出なかった。
だって膝の部分の泥。それにその下の擦り傷。
それは紛れもなく――俺が夢の中でした怪我と同じ場所だったのだ。
次回もご期待ください!




