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『元転生勇者だけど魔王討伐に惨敗して無職になったので、魔物専門の精肉店を始めたら美味くて滋養があると大繁盛!〜なお、一番美味い食材は魔王の模様〜』  作者: 藤台団二
【第1章】勇者廃業、そして実家の精肉店へ

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第五話:肉汁の決壊と、王都のハンバーグ・パニック

『カイト・ミート』へようこそ。


第四話で開発した新メニュー『アースクエイク・ポークハンバーグ』を、

いよいよ店頭で一般販売します。


カイトが無自覚に付与した異次元のバフ効果により、王都の冒険者たちが大パニックに陥るお話です。


どうぞ、おたのしみに

アースクエイク・ボアをミリ単位の包丁さばきで即死解体し、

無限収納(ストレージ)へと格納して店に持ち帰った翌朝。


我が『カイト・ミート』の店頭には

、開店二時間前だというのに

、商店街の端が見えなくなるほどの凄まじい大行列が形成されていた。


お目当ては、

昨日エレノアと一緒に開発した新メニュー


――『アースクエイク・ポークハンバーグ』である。


「はいはい、そこの大男の冒険者さん!

列を乱すと、ボアの骨で頭を小突きますわよ!

お肉は十分に用意してありますから、静かに並んでお待ちになって!」


割烹着姿のエプロンをきゅっと結んだエレノアが、

王宮仕込みの圧倒的な威厳とカリスマ性を放ちながら、

拡声魔導器を片手に荒くれ者たちを完璧に統率している。


もはや王女というより、商店街を牛耳る伝説のカリスマ女将の風格だ。


「よし、エレノア。焼き上がった先からどんどん出していくよ!」


「お待ちしておりました、カイト様! さあ、王都の歴史をひっくり返すお肉の登場ですわ!」


俺が調理場から、煙の立つ特大の鉄板を店頭のカウンターへと運び出す。


その上に並んでいるのは、パンパンに丸く膨らみ、

今にも内側から弾け飛びそうなほど肉厚なハンバーグの山だ。


ジュワァァァァァァァァッ!!!


良質なボアの脂が鉄板の上で狂おしく爆ぜ、

全人類の食欲を力ずくで覚醒させるような、

暴力的かつ神聖な香りが商店街一帯へと一気に広がった。


「な、なんだこの香りは……!?

嗅いだだけで、体内の魔力が勝手に循環を始めやがったぞ!?」


「おい、あのハンバーグを見ろ! 肉自体が輝いてやがる!」


並んでいた冒険者や街の住民たちが、

そのあまりの香りの暴力に、

一斉に直立不動の姿勢のままゴクリと生唾を飲み込んだ。


「はい、お待たせ!

焼き立てのアースクエイク・ポークハンバーグだよ。

肉汁が凄いから、服を汚さないように気をつけて食べてね」


最初に並んでいたベテラン冒険者のガゼルに、木皿に盛ったハンバーグを差し出す。


ガゼルはまるで伝説の秘宝を受け取るかのように緊張した面持ちで、

フォークを肉の中央へと突き立てた。


プツッ。


その瞬間、ハンバーグの表面が弾けた。


ドバァッ!!! と、

透明に澄み切った、しかし濃厚極まる『肉汁の濁流』が、

滝のように木皿の縁を越えて溢れ出してきたのだ。


「う、うわぁぁぁぁ!?


肉汁の、肉汁の川ができてやがる!


お、おのれ、一滴たりとも無駄にしてなるものかぁ!」


ガゼルは慌てて皿を口に傾け、

溢れ出る肉汁をすすりながら、

本体の肉を豪快に口へと放り込んだ。


モグ、と一口噛み締めた瞬間、ガゼルの動きが完全に停止した。


レベル999の俺が、

肉の温度を10度以下に保ったまま完璧な網目構造に捏ね上げたミンチ肉。


それは、

口に入れた瞬間にボアの爆発的な旨味となって一気に溶け出し、

ガゼルの五臓六腑を駆け巡った。


「う……美味すぎる……ッ!!


なんだこれは、大地の恵みが口の中で爆発していやがる!


それに……おい、おい嘘だろ!?

ステータス画面が……ステータス画面がおかしいぞ!」


ガゼルが絶叫しながらステータスを展開すると、

周囲の冒険者たちからも一斉に悲鳴が上がった。


【状態:『アースクエイク・ハンバーグ』の摂取により、全属性魔法耐性+30、および最大魔力量が一時的に35%上昇(持続時間:12時間)】


「ば、バフ効果の数値がバグってやがる!


国家お抱えの特級錬金術師が作る最高級の秘薬でも、

魔法耐性が5%上がれば奇跡だってのに、


30%!?


しかも魔力量まで増えてる!

これ、ただの料理じゃねぇ、神の領域の戦術兵器だ!!」


「おい、俺にもくれ!」


「俺が先だ!」


「金ならいくらでも出す!」


ガゼルのステータスを見た冒険者たちが、

文字通り正気を失ったような顔で財布を握りしめ、前へと押し寄せてきた。


カイトが『無限浄化』で魔物の生命力を最も純粋な形に昇華させてしまったせいで、ただの美味しいハンバーグが、人間にとっては一国を左右するレベルの超絶バフアイテムと化していたのだ。


「はいはい! お一人様一つまでですわ!

割り込みをした方は、憲兵隊を呼ぶまでもなく、私が直接このヘラで叩き出しますからね!」


エレノアが凛とした声を響かせ、パニック寸前の暴徒たちをその圧倒的なカリスマ性でねじ伏せていく。


カイトが神速の包丁さばきで次々とハンバーグを焼き、

エレノアがそれを完璧な手際で売り捌く。


世界最強のお肉屋さんと、割烹着を纏った最強の看板娘の連携により、

新メニューは初日から王都の商業ギルドの歴史を完全に塗り替えるほどの大ヒットを記録した。


「ふぅ……。今日もなんとか売り切れたね、エレノア」


「お疲れ様でした、カイト様。

ですが……

これは少々、街の噂になりすぎてしまいましたわね。これほどのバフ効果を持つ食材、王宮の上層部や、強欲な貴族たちが黙って見過ごすとは思えませんわ」


営業終了後、すっかり空になった鉄板を拭きながら、エレノアが少し真面目な顔で呟いた。


「あはは、まあ、ただのひき肉料理だからね。もし変な人が来たら、その時はその時だよ」


カイトはのんきに笑いながら、自分の手のひらを見つめた。

今日も毒見でハンバーグを三個ほど食べたせいで、自身のレベル999のステータスはさらに微増している。誰がどんな嫌がらせをしにやってこようが、お肉の繊維を傷つけずに一瞬で三枚おろしにする準備は、いつでも整っていた。


しかし、エレノアの予感は的中することになる。


この『肉汁が決壊するハンバーグ』の異常な効果の噂は、瞬く間に王宮の影へと届き、

かつてカイトを「無能」と罵って追い出した強欲な文官の耳へと、

確実に届きつつあったのである。


(第六話へ続く)



第五話をお読みいただき、本当にありがとうございました!


ハンバーグの肉汁と凄まじいステータス上昇値に

、街中がひっくり返る日常商業回でした。


もし「ハンバーグが美味しそう!」「エレノアの女将っぷりが最高!」と思ってくださった方は、ぜひページ下部にある【ブックマークに追加】や、評価の【⭐︎⭐︎⭐︎︎︎︎︎︎︎︎⭐︎⭐︎】(星5つ!)をポチッと押して応援していただけると幸いです!

次回、この利権を狙って王宮からあの「無能な文官」が嫌がらせにやってきます。どうぞお楽しみに!

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