第二話(前編):ドラゴンの仕入れと、お肉屋さんの日常。
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無職から大繁盛店の店主(&無自覚レベル999)へと転身したカイト。
今回は高級食材『レッドドラゴン』の仕入れへと向かいます。
世界を滅ぼすレベルの猛獣を前に、
お肉屋さんとなったカイトはどう立ち向かうのか……?
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鼓膜を破らんばかりの咆哮が、赤茶けた岩山に響き渡る。
そこに君臨していたのは、
全長二十メートルはあろうかという巨躯。
深紅の鱗に覆われ、口からは一吹きで城塞都市をも灰にするという熱線を漏らす、
生態系の頂点――Sランクモンスター『レッドドラゴン』だった。
普通高ランク冒険者パーティでも無理で、
ギルドが国に要請を出し、
数ヶ月前から国家規模の予算を組み、
数百人の精鋭騎士団を率いてようやく挑むレベルの天災だ。
だが、
エプロンを外して「仕込み用」と称した元聖剣を片手に持つ俺にとっては、少し違う。
「うん、いい色艶だ。太もものあたりもしっかり肉が詰まってそうだし、何より尻尾が丸々と太ってて脂が乗ってそうだな。これは良い『尾肉』が取れるぞ」
完全に、市場で牛や豚の品定めをするお肉屋さんの目線だった。
ドラゴンは、侵入してきた哀れな人間(俺)を蹂躙せんと、大気を震わせながら猛然と突っ込んできた。ギチギチと音を立てる鋭い爪が、俺の脳がけて振り下ろされる。
「ほいっと」
俺は半歩だけ身を引いてそれをかわす、紙一重だ、全て見えている。
レベル999の身体能力から見れば、
ドラゴンの超高速の突進も、
前世の商店街で
おばちゃんたちが繰り広げるタイムセールの猛アタックに比べればスローモーションのようなものだ。
「悪いな。
常連のギルドから『尾肉十キロ』の予約が入ってるんだ。
暴れて肉に傷がつくと価値が下がっちゃうから、
一瞬で終わらせるね」
俺は腰の肉切り包丁(聖剣)を静かに抜いた。
前世で親父から叩き込まれた、肉の繊維を傷つけずに一刀両断するプロの技。
それに、レベル999のステータスと、
あらゆる障壁や耐性を無効化する『無限浄化』の力が上乗せされる。
スウ、と息を吐き、包丁を真横に一閃した。
「――秘技・超高速三枚おろし」
ザシュウッ! と、肉を切るにしてはあまりにも軽やかな、風を切るような音がした。
次の瞬間、
レッドドラゴンは何が起きたのかも理解していない表情のまま、
その巨躯を崩れ落ちさせた。
完全に息絶えているが、
その断面は信じられないほど滑らかで、
血の一滴すら無駄に流れていない。
まさに、肉の旨味を完全に閉じ込める至高の即死解体。
「よし、まずは『無限浄化』っと」
俺が死体に手をかざすと、眩い聖なる光がドラゴンを包み込んだ。
ジジジ、と不気味な黒い霧――魔物特有の凶悪な『瘴気』が、
一分子も残さず綺麗に消滅していく。
これで、毒肉だったドラゴンは、人類が食べられる最高級の「熟成竜肉」へと昇華された。
「さて、尾肉を十キロ切り出して……残りは店のおすすめメニューにするか。あ、レバーも綺麗に残ってるな。ドラゴンレバ刺し(※要加熱)として出したら冒険者たちが喜びそうだ」
浄化した者なら生死をとわず、制限なしに無限収納も習得していた。
俺はテキパキと巨大なドラゴンを解体し、無限収納に詰め込んでいく。
重労働のはずの仕入れだが、レベル999の俺にとっては、スーパーの買い物袋をぶら下げて帰るのと大差ない。
「よし、急いで店に戻ろう。エレノアが待ってるしな」
ホクホク顔で岩山を駆け下りる俺。
まさか、
このドラゴンが「とある重要人物」の愛玩動物だとは、この時の俺は微塵も知らなかった。
(後編へ続く)
第二話(前編)をお読みいただきありがとうございました!
ドラゴンをまるで夕飯の材料のようにサクッと仕入れてしまったカイト。
後編では、店に戻ったカイトの元に、あの「懐かしのポンコツ仲間たち」がとんでもない姿で大集結します!
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