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『元転生勇者だけど魔王討伐に惨敗して無職になったので、魔物専門の精肉店を始めたら美味くて滋養があると大繁盛!〜なお、一番美味い食材は魔王の模様〜』  作者: 藤台団二
【第1章】勇者廃業、そして実家の精肉店へ

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第一話(後編):レベル999の肉屋、開店する。

お待たせいたしました、第一話の後編です!


勇者をクビになり、魔物専門の精肉店を開業したカイト。


彼が毎日「試食」を繰り返すうちに起きたトンデモナイ身体の変化と、店にやってきた意外な美少女の正体とは……?


それでは後編をどうぞ!

それから数ヶ月後。


王都の喧騒から少し離れた、下町の商店街の一角に、新しく一枚の看板が掲げられた。


『魔物専門精肉店 カイト・ミート』


開店当初は、


街の人々から「頭がおかしくなった元勇者が、呪いの肉を売り始めた」と、ひどく不気味がられたものだ。


通りかかる子供たちは遠巻きに俺の店を指差し、母親たちは「近寄っちゃいけません」と耳打ちしていた。


だが、

一人の飢え死にしかけていた下級冒険者が、

破格の安値で売られていた『浄化済ゴブリンのモモ肉』を、

文字通り毒見のつもりで口にした瞬間から、世界の歴史が再び動き出した。


「な、なんだこれはぁぁぁ!?


信じられないほど柔らかい!


噛むたびに溢れるこの濃厚な肉汁、

そして……

身体の芯から、信じられないほどの活力が湧き上がってくるぞおおお!」


その冒険者は、

長年の無茶な戦闘でボロボロだった古傷が完全に癒え、

それどころか翌日には魔術の許容量(魔力量)が倍増していたという。


口コミというものは、恐ろしい速度で広がる。


カイトが『無限浄化』で瘴気を極限までカットした魔物の肉は、

ただ単に安全というだけではなかった。


魔物が本来持っていた強大な生命力や魔力が、

すべて『極上の旨味成分』と『超強力な滋養強壮バフ効果』へと変換されていたのだ。


「カイトさんのところのオークバラ肉を食べたら、冷え性が一発で治ったわ!」


「一晩中剣を振り続けても、ドラゴン肉の端切れを食べたら全く疲れねえ!」


「あそこの肉は、教会の最高級ポーションより効くぞ!」


瞬く間に、店は毎日が大行列の超大繁盛店へと変貌を遂げた。


王都中の冒険者、騎士、果ては遠方の貴族までもが、

カイトの肉を求めて裏口から大金を積んでやってくるようになった。


「はい、毎度あり!

オークのロース肉三キロね!

しっかり火を通して食べてよ!」


エプロン姿で威勢よく包丁を振るう俺の傍らで、

パチパチと小気味良い音を立ててフライパンを揺すっている、絶世の美女がいた。


ウェーブがかったプラチナブロンドの髪を後ろでまとめ、

白い割烹着(前世の記憶を頼りに俺が作らせたやつだ)を身に纏い、

頬に少し小麦粉をつけた彼女は、

非常に甲斐甲斐しい手つきで、特製のミンチ肉を丸めていた。


「カイト様!

『特製コカトリス肉のコロッケ』が、

もうすぐ三十個揚がりますわ! 店頭に出してもよろしいですか?」


鈴を転がすような美しい声でそう言ったのは、エレノア。


この国の第一王女であり、

かつて俺が魔王討伐を成し遂げた暁には、

結婚を約束されていたはずの、


俺の『元婚約者』だった。


魔王討伐に惨敗した際、

国の上層部は大慌てで俺との婚約を強制的に白紙撤回(解消)した。


無職で行方不明になった男に、

王女を嫁がせるわけにはいかないからだ。


だが、エレノア本人は違った。


国が婚約を解消した翌日、

彼女は王宮を脱走し、

着の身着のままで俺の店に転がり込んできたのだ。


『国があなたを見捨てても、私は絶対にカイト様から離れません!


私をこのお店の女将にしてください!』

と、涙ながらに訴えられ、なし崩し的に今ではお店の看板娘兼、コロッケ作りの職人として毎日エプロン姿で手伝ってくれている。


「ありがとう、エレノア。

助かるよ。

君の作るコロッケは、今やうちの看板メニューだからな」


「ふふっ、カイト様にそう言っていただけると、

夜通しジャガイモを潰した甲斐がありますわ!」


王女としてのプライドを完全に犬に食わせたレベルで、

満面の笑みを浮かべるエレノア。


街の男たちは、この絶世の美女が揚げる揚げたてのコロッケ(滋養強壮効果抜群)を目当てに、

今日も凄まじい行列を作っている。


そんな平和で、

最高に充実したお肉屋さんライフを送っていた俺だったが。


実を言うと、一つだけ、誰にも言えない秘密があった。


「よいしょ、っと……」


俺は、カウンターの奥で、

常連客からの『特別な予約注文』が書かれたメモ帳を開いた。


【予約:


高級冒険者ギルド「暁の盾」様 レッドドラゴンの尾肉 十キロ】


「ドラゴンかぁ……。

予約が入っちゃったな。

仕入れに行くのが、けっこう面倒なんだよな、あれ重いし」


そう、仕入れである。


魔物専門の精肉店を開業してからというもの、

俺は毎日、売り物となる魔物を自分で狩りに行っていた。


なぜなら、

瘴気を完全に浄化できるのは俺だけだし、

最高の鮮度で解体するためには、自分で仕留めるのが一番早いからだ。


そして、

仕入れた魔物の肉を「試食(毒見)」と称して、毎日、朝昼晩と食べ続けていた。


ゴブリンの唐揚げ、オークの生姜焼き、ワイバーンの手羽先焼き、コカトリスの筑前煮……。


その結果。


俺の身体には、とんでもないバグが発生していた。


魔物の極上の生命力(経験値)を、

浄化された最も純粋な形で毎日大量に摂取し続けたせいで、

俺のステータス画面は、いつの間にかとんでもない領域に達していたのだ。


ちょっと試しに、頭の中でステータスを念じてみる。


――ピコン。


【名前:カイト】

【職業:精肉店二代目(元勇者)】

【レベル:999】

【体力:99999 / 99999】

【魔力:∞(無限)】

【スキル:無限浄化(アンリミテッド・ピュリファイ)、超高速解体、食材鑑定(SSS)】


「……うん、何度見てもバグってるな」


レベル999。


かつて魔王城に挑んだ時の俺たちのレベルは、せいぜい60前後だった。


世界最強と謳われる聖騎士団長ですら、レベルは80程度だと言われている。


それが、

毎日「美味い美味い」と魔物の肉をバクバク食べていただけで、

世界の理を遥かに超越した、

人類史上存在し得ない『SSSランク解体聖勇者』になってしまっていた。


今の俺の手にかかれば、

どんな凶悪なSランクモンスターであっても、

包丁(一応、元の聖剣だが、今では完全に肉切り包丁として研ぎ澄まされている)を一振りするだけで、一瞬にして骨と肉が綺麗にセパレートされる。


「まあ、いいか。お肉屋さんとしては、腕が立つに越したことはないしな」


俺は深く考えるのをやめ、

聖剣(肉切り包丁)を腰に差し、エプロンを外した。


「エレノア、ちょっと裏山までドラゴンの仕入れに行ってくる。


店番、頼めるか?」


「はい!

いってらっしゃいませ、カイト様!

今日も美味しいお肉を期待していますわね!」


元王女の元気な声に見送られながら、俺は店を出た。


まさか、

この「ちょっとしたドラゴンの仕入れ」が、のちにあのポンコツな仲間たちとの再会、

そして、世界を揺るがす『大号泣の魔王討伐(?)』へと繋がっていくとは、

この時の俺はまだ、知る由もなかったのである。


ちなみに――。


俺が持つ最高級の『食材鑑定(SSS)』のスキルで、

以前戦った【魔王】の情報を見たとき、

一番下の『おすすめの調理法』の欄に、

こんな一文が書いてあった。


【※魔王肉:世界で最も柔らかく、至高の旨味を持つ。

あらゆる食材の中で、魔王が一番美味い模様。】


「……いや、さすがに魔王は食べないけどね」


俺は苦笑いしながら、伝説の竜が住まう山へと、軽やかな足取りで向かうのだった。


(第二話へ続く)

第一話(後編)までお読みいただき、本当にありがとうございました!


無自覚のまま世界最強のお肉屋さんになってしまったカイトと、

コロッケ作りに命をかける元王女エレノアのコンビ、いかがでしたでしょうか?


毎回、お読みいただいた最後に皆様からの感想や評価をいただけるのが、

作者にとって何よりの励みになります。


もし「この先が読みたい!」「面白かった!」と思っていただけましたら、


ぜひページ下部にある【ブックマークに追加】や、評価の【⭐︎⭐︎⭐︎︎︎︎︎︎︎︎⭐︎⭐︎】(星5つ!)をポチッと押して応援をお願いいたします!


皆様の一票が、カイトの仕入れるお肉をさらに美味しくします。どうぞよろしくお願いいたします!

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