15.巨神大戦④
「まずは残存戦力を確認しよう。
覚醒可能な者は4名とも健在、
2重適合可能な者は1名死亡、1名戦闘不能で、
6名が健在となっている」
アミアは生き残った者を集め、
巨神戦に参加出来る人数を確認し、
その状況を説明してる。
巫女のメグリは残念ながら死亡し、
パートナーのアミンは落ち込んでいた。
暴走状態にあったトルルトは力を使い果たし倒れ、
命に別状は無いものの、意識不明の状態だった。
「それ以外の残存戦力は、
王国騎士団は2名死亡、2名健在、
神聖騎士団は3名死亡、10名健在、
教団戦闘部隊は4名死亡、1名戦闘不能、8名健在、
巫女は5名死亡、2名戦闘不能、17名健在となっている。
第2工程の必要機体数は40で、
現在37、不足の3機分は、
2重適合可能な者で補えるだろう」
ギリギリの状態だが、
ドドが言うには覚醒可能の4機の強さが、
想定以上なので、第1工程をドドと4機で行え、
2重適合者は防衛と第2工程に回せるらしい。
「魔術師は10名全員健在、
これで巨神対策の第1から第3工程まで、
問題無く行えると考えられる。
ただし、作戦中に先程のように、
敵が現れる可能性が高い。
2重適合者のうち、
アミンとトリリトは魔術師の護衛、
シルシとクルク王女は他の部隊の護衛、
カレカとゼンゼは第2工程に参加して欲しい」
とりあえず状況を伝えて反応を見る。
全員が疲弊しているのは分かっているが、
時間が経てば敵が動き出す可能性が高い。
早いうちに終わらせた方が安全だろう、
というのがアミア達の判断だった。
「テルテさんは周囲の警戒ですか?」
クルク王女がテルテが入ってない事を指摘する。
「テルテは妖魔が出た時の掃討担当です。
その為の武器を今、集めてる」
アミアはテルテがこの場にいない事の意味を説明する。
「他に何か意見は?」
「わたくし達の不徳なのですが、
巫女の中に裏切り者がおりました。
もしかしたら、この中にもまだ、
裏切り者がいる可能性もあります。
その対応が必要じゃないでしょうか?」
ナナは言いにくい事を自ら切り出す。
巫女の裏切りを知らなかった者達の一部がざわつく。
「監視を付けよう。
第1工程の時はカレカとゼンゼが、
怪しい動きが無いか見張り、
第2工程、第3工程の時は覚醒可能の4名が見張る。
これで裏切り者がいても、
最低限の被害で食い止められる筈」
「見張りの中にも、
裏切り者がいる可能性があるんじゃないのか?」
邪教団のビンサが指摘する。
「もし監視に選んだ6名に裏切り者がいたなら、
超越者を倒す前に裏切って、
こちらが全滅していただろう。
あたしは6名とも信頼出来ると認識している。
どのみち、この中に裏切り者がいたら、
その時点で巨神討伐は不可能になる」
「まあ、そうだな。
口出しして悪かった、話を進めてくれ」
ビンサも納得したようだ。
過去にアミアの部下だった彼女だが、
昔一緒に戦っていた時より、
今の方が彼女の感情が理解出来て、
仲間として見られるようになった気がした。
「他にも意見があれば言って欲しい」
アミアは言うが、特に意見は出てこない。
「大丈夫でしょう。
巨神討伐を始めましょう」
クルク王女の言葉で巨神討伐が始まった。
まずは巨神がバランスを崩し倒れても、
巻き込まれない位置まで全体を移動させる。
そして第1工程の部隊が進み出る。
龍神ドド、アミア、リンリ、エリエ、
ナナの1体と4名だ。
4人は機体を覚醒させ、飛び立つドドに続く。
『わしが全力で膝の関節に突進する。
お主らはわしの攻撃が終わった後に、
4機で突っ込んで欲しい』
『『了解』』
そしてドドの身体が金色に光り、
巨神の巨大な左足の膝の裏辺りに突っ込んでいく。
間近で見る巨神は不死鎧に似た装甲が、
幾重にも複雑に重なって出来ており、
それが生物ではなく、造られた機械であると分かる。
『何だ?』
と、ドドが止まる。
見ると巨神の身体の各所から光線のようなものが発射され、
それが当たったドドの一部が焼けている。
『防衛機能?
そんなの聞いてないぞ』
『わしも知らん。
昔はそんなものは無かった』
ドドは一旦距離を取る。
すると巨神の攻撃は止んだ。
『元々あった機能か、
追加された機能かは知らんが、
とにかくあれをどうにかしないと、
攻撃出来ん』
『『わたくし達にやらせて下さい』』
そう名乗り出たのはエリエとナナだった。
『ナナ様の鏡は光線を防御出来ます。
ナナ様に囮として近寄ってもらい、
開いた砲門をわたくしの矢で射抜きます』
『出来るのか?』
『砲門の頑丈さにもよりますが、
恐らく大丈夫でしょう』
エリエに自信はあるようだ。
『なら二人にお願いしよう。
地上の部隊は流れ弾に注意して貰わないとな』
アミアが地上の部隊に連絡し、
それからエリエのアイシンとナナのクオンが巨神に近付く。
『行きます!』
クオンは鏡を大きく前面に展開し、
巨神へと近付いていく。
アイシンは弓矢を構え、巨神の動きを待つ。
アミア達は少し距離を取り、それを見守った。
『来ました』
クオンの鏡に光線が当たり、反射する。
エリエは光線が出ている場所を狙って矢を放つ。
矢が当たると、そこは爆発し、光線は止まった。
『破壊出来ます!』
『続けてくれ』
それからアイシンは次々と現れる砲門を破壊し、
クオンは何とか複数の方向から来る光線を反射し続けた。
100を超える数を破壊したところで、
光線は出なくなった。
『全て破壊出来たようです』
『お疲れ様、
その分、攻撃の方はあたし達が頑張るよ』
『お願いします』
2機がこちらに戻ってくる。
『それじゃあ今度こそわしの出番かな』
ドドが再び輝きだし、巨神へと突っ込んだ。
全力の体当たりは破壊を伴い、
巨神の左足の膝の裏がどんどん削れていく。
しかし巨神自体の大きさは異常で、
ドドが自分の身体3つ分ほど削っても、
まだ微動だにしない。
『これで最後だ!』
ドドの身体は輝きながら炸裂する。
巨神の膝の裏に大きな丸い穴が出来た。
『ドド様!』
その姿が消えたのでナナが心配の声を上げる。
『生きとるよ。
さあ、お主達の番だ』
穴の中心から鎧大になったドドが出てきた。
力の関係で縮むしかないのだろう。
『行くぞ!』
『『はい』』
ドドが穿った穴に向かって4機は進む。
よく分からない機械で出来た装甲の内部が見えてくる。
『4つの穴を膝に向けて掘るイメージで。
一番左側があたし、次がナナさん、
その次がエリエ、一番右側がリンリだ』
『『了解』』
力を使った二人でも内側なら、
既に丸型に深くなっているので壊しやすい。
それに外側の穴が大きい方が、
巨神もバランスを崩しやすいだろう。
アミアはリグムの両手に光の刃を出し、
矢になったつもりで、巨神の中を掘り進む。
巨神自体はかなり丈夫な素材に感じるが、
覚醒した鎧の攻撃は難無くそれを破壊出来る。
そろそろ力が無くなりそうになった時、
ドドから念話が届いた。
『もういい、そろそろ巨神が倒れる。
早く離れろ』
アミア達は急いで反転し、
穿った穴から落ちてくる障害物を避けながら、
巨神から離れた。
それは最初はゆっくりと、
やがて、勢いよく崩れていく。
立っていた巨神の左膝がずれていき、
それを防ぐように右足が前に出る。
右足が大地を踏むと大地に振動が起こり、
右足の先は下層まで沈み込む。
そのまま左足も前に落ち、膝が地面に付いた。
2度目の振動が起き、その衝撃で、
周辺の大地もひび割れる。
巨神は片膝が付いた状態で止まった。
『これで巨神は修復モードに入る。
修復に数時間はかかる筈だ。
さあ第2段階に移るぞ』
鎧形態のドドが言い、
アミア達は部隊へと戻った。
「裏切り者が出たのか?」
戻ってみると部隊は騒然としていた。
アミアは状況を確認する。
「はい、巨神が倒れたタイミングで。
ただ、ビンサさんがすぐに気付いたので、
被害は1機だけだったのですが、
ビンサさんが・・・」
カレカが悔しそうに言う。
「神聖騎士団に裏切り者はいました。
私が気付かなかったばかりに。
振動の後、ラグアはバランスを崩した振りをして、
私の鎧に攻撃を仕掛けて来たんです。
それに気付いたビンサさんが、
攻撃をし、周りの私達は何があったか分からず、
手出し出来ず見殺しに・・・」
「止めに入った時には既に、
ビンサさんの機体は破壊され、
周りで見ていた者の証言で、
先に攻撃を仕掛けたのが、
神聖騎士団のラグアだと分かったのです。
すみません衝撃で目を離したばっかりに」
「終わった事はいい。
被害が少なくて良かったと思おう。
そして亡くなったビンサに報いる為にも、
作戦を成功させよう」
気を落としているキマキとゼンゼに向けて言う。
巨神が倒れた際の衝撃についても、
もっと考慮すべきだったのだろう。
「それでは第2工程に入りましょう。
神装、神聖鎧、不死鎧の皆さん、
お願いします」
クルク王女が場を仕切り直し、
第2工程に移る。
「機数が減った分、
クルク王女も第2工程に参加して欲しい。
護衛と監視はシルシとあたし達でやるんで」
「分かりました」
部隊を全体的に巨神の方に移動させ、
第2工程が始まる。
「それでは魔力を集中させ、
巨神を持ち上げます」
各鎧は魔法を唱え、その力が巨神へと集まっていく。
『・・・アミア、来た』
シルシが敵襲に気付く。
このタイミングを狙ってか、
大型妖魔が湧いてきた。
『エリエとナナさんは監視の方を。
リンリ、シルシ、迎え撃つぞ』
『はい』
『・・・分かった』
シルシも疲れているだろうが、
ギルーンを敵へと向かわせる。
リグムとデュエナははさすがに覚醒は使えない。
『わしも妖魔ぐらいなら相手になろう』
鎧形態のドドも参戦する。
『少し位うちにも活躍させて欲しいかな』
そう言ってやって来たのはテルテだ。
『補充は出来たのか?』
『そりゃあ、もう大漁だよ。
じゃあ、うちから行くからな』
テルテはシウンを妖魔の群れの前に立たせる。
『発射!』
魔法の発射装置は焔玉を群れに向かって発射した。
それは的確に放たれ、
次々と爆発、群れを粉々にしていく。
『わしらの出番は無いかな』
『魔導機の方に悪魔です!』
そんな中、トリリトから念話が飛ぶ。
『シルシとドドはそっちを頼む』
『・・・了解』
『よし来た』
さすがに悪魔の相手は今のアミアには辛い。
『リンリ、ここで踏ん張るぞ』
『うん!』
そんな中だった。
『悪魔が自爆して被害が!
魔導機も!』
トリリトの悲痛な叫びが聞こえた。
『すまない、リンリ、
テルテと二人で耐えてくれ』
『うん、大丈夫だよ。
行ってきて』
アミアは急いでリグムを向かわせる。
『・・・悪魔は倒した』
魔術師側の戦いは終わっていた。
『アミンさんが身を挺して守って。
それでも悪魔が連鎖して自爆で、
間に合わなくて・・・』
トリリトは少し混乱している。
アミンのコウガは悪魔の自爆により、
上半身がほぼ無くなっていた。
そしてその周りにいる3機の魔導機も、
大破している。
『すまん、わしの力でも、
魔導機は直せん。
それに中の魔術師もこれでは・・・』
ドドも間に合わなかった事が悔しいようだ。
『ラーラ、何か策はあるのか?』
『アミア、こっちに来て欲しい』
そしてラーラの魔導機の横に行き、
彼女の指示で周りに聞こえないよう、
直接声に出して会話する。
「魔導機は直る。
魔導機には1日に1度、搭乗者も含め、
完全再生出来る機能が付いている。
これはいざという時の為に秘密にしていた。
ドゼビムの指示だ」
「本当か?
でも、だったらあたしや護衛には、
その事を言っておいても良かったんじゃ」
「駄目だ。
護衛に言ったら、
無意識に手を抜いてしまうかもしれない。
その場合、
今の自爆で完全に破壊される機体が出た。
犠牲は無い方がいい。
でも、これは成功させるには必要な事だ。
この事の責任はドゼビムが取ると言っている。
とにかく第2工程が終わるまでは、
この事はここだけの秘密だ。
アミアはあたしが何とかする、
とだけみんなに伝えてくれ」
ラーラの言っている事は分かる。
だが、もっとうまいやり方があったのでは、
とアミアは思ってしまう。
アミアはその考えを一旦捨て、
作戦を成功させる事に集中した。
「分かった。
第3工程は任せる」
「ああ、絶対成功させる」
アミアはラーラの元を離れる。
『魔導機に被害は出たが、
ラーラの方で何とか対応出来ると言っている。
とにかく第2工程が無事完了するよう、
引き続き対応してくれ』
アミアは念話を飛ばし、各状況を整える。
シルシとドドは魔導機の護衛にそのまま残し、
ナナにはリンリ達と妖魔対応をしてもらう。
アミアはエリエと裏切りを監視しつつ、
全体に変化が無いか、注意する。
やがて、ゆっくりと巨神が上昇し始めた。
『第2工程完了しました』
クルク王女が報告する。
巨神は一番下の足の部分も地面より数十メートル上に浮き、
完全に地上と分離していた。
『ラーラ、第3工程を始めてくれ。
戦闘可能な機体は全て、
寄ってくる妖魔と悪魔を撃退してくれ』
魔導機が前進し、護衛がその周りを囲む。
魔導機は10機とも稼働状態になっているが、
それに対して疑問を口にする者はいなかった。
『ではテレポートを始めます。
完了まであたし達は集中するので、
周りに敵が来ないようにお願いします』
そしてラーラの魔導機を中心に、
魔導機達は杖を掲げ、
そこから紫色の光が伸びていく。
それは巨神を徐々に包んでいった。
『アミア、悪魔だ。
うちには無理だ』
テルテから念話が届く。
『反対側も悪魔です。
わたくしが向かいます』
エリエは最後の力で覚醒し、敵へと向かっていく。
『クルク、監視は頼む。
あたしも行ってくる』
『分かりました、
無理しないで下さい』
シルシとドドとトリリトは、
魔導機のそばに置いておく必要がある。
裏切り者対策はクルクに任せるとして、
他に2重適合出来る者は残っておらず、
アミア達が踏ん張るしかない。
『リンリとナナはどうだ?』
『私は何とか頑張れる』
『わたくしも少しの間なら、覚醒出来ます』
『分かった、そっち側は任せる』
アミアはリグムを覚醒し、
悪魔が新たに現れた、
エリエが向かった方へ行く。
『結構いるな』
『愛の力で頑張りましょう』
エリエももう後が無いのだろう。
とにかく魔法が完了するまで、
時間を稼ぐしかない。
リグムはハルバードを構え、
なるべく多くの悪魔を巻き込んで振り回す。
アイシンも武器を刀にし、
手当たり次第に斬りまくった。
『援護します。
ナナ様の方にはカレカが行きました』
ニチゴウで2重適合したゼンゼがやって来る。
彼女は第2工程で殆ど力を使った筈だ。
『助かる』
『頑張りましょう』
ただ、その助力は嬉しいものだった。
なんとしても3人とも生き残りたい。
アミアはどんどん意識が薄くなるのを感じながら、
何も考えずにハルバードを振るった。
『テレポート、完了しました!』
途切れそうな意識の中、
ラーラの念話が聞こえる。
巨神の方を見ると、その全身が紫色の光に包まれ、
やがて薄れていく。
そして巨神はその姿を完全に消した。
「我々の勝利です!!」
「「おおーーーーーーー!!!!」」
クルク王女の宣言に勝利の叫びが広がる。
悪魔達も敗北を知ってか、
目の前から逃げていく。
さすがにそれを追う余裕のある者はおらず、
アミアも覚醒を解いてその場にリグムを休ませた。
『アミアちゃん、やったね』
『ああ、生き残れたな・・・』
そう答えたところでアミアの意識は無くなった。




