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悪姫恋聖  作者: ねじるとやみ
第5部 巨神大戦
65/82

15.巨神大戦④

「まずは残存戦力を確認しよう。

覚醒可能な者は4名とも健在、

2重適合可能な者は1名死亡、1名戦闘不能で、

6名が健在となっている」


アミアは生き残った者を集め、

巨神戦に参加出来る人数を確認し、

その状況を説明してる。

巫女のメグリは残念ながら死亡し、

パートナーのアミンは落ち込んでいた。

暴走状態にあったトルルトは力を使い果たし倒れ、

命に別状は無いものの、意識不明の状態だった。


「それ以外の残存戦力は、

王国騎士団は2名死亡、2名健在、

神聖騎士団は3名死亡、10名健在、

教団戦闘部隊は4名死亡、1名戦闘不能、8名健在、

巫女は5名死亡、2名戦闘不能、17名健在となっている。

第2工程の必要機体数は40で、

現在37、不足の3機分は、

2重適合可能な者で補えるだろう」


ギリギリの状態だが、

ドドが言うには覚醒可能の4機の強さが、

想定以上なので、第1工程をドドと4機で行え、

2重適合者は防衛と第2工程に回せるらしい。


「魔術師は10名全員健在、

これで巨神対策の第1から第3工程まで、

問題無く行えると考えられる。

ただし、作戦中に先程のように、

敵が現れる可能性が高い。

2重適合者のうち、

アミンとトリリトは魔術師の護衛、

シルシとクルク王女は他の部隊の護衛、

カレカとゼンゼは第2工程に参加して欲しい」


とりあえず状況を伝えて反応を見る。

全員が疲弊しているのは分かっているが、

時間が経てば敵が動き出す可能性が高い。

早いうちに終わらせた方が安全だろう、

というのがアミア達の判断だった。


「テルテさんは周囲の警戒ですか?」


クルク王女がテルテが入ってない事を指摘する。


「テルテは妖魔が出た時の掃討担当です。

その為の武器を今、集めてる」


アミアはテルテがこの場にいない事の意味を説明する。


「他に何か意見は?」


「わたくし達の不徳なのですが、

巫女の中に裏切り者がおりました。

もしかしたら、この中にもまだ、

裏切り者がいる可能性もあります。

その対応が必要じゃないでしょうか?」


ナナは言いにくい事を自ら切り出す。

巫女の裏切りを知らなかった者達の一部がざわつく。


「監視を付けよう。

第1工程の時はカレカとゼンゼが、

怪しい動きが無いか見張り、

第2工程、第3工程の時は覚醒可能の4名が見張る。

これで裏切り者がいても、

最低限の被害で食い止められる筈」


「見張りの中にも、

裏切り者がいる可能性があるんじゃないのか?」


邪教団のビンサが指摘する。


「もし監視に選んだ6名に裏切り者がいたなら、

超越者を倒す前に裏切って、

こちらが全滅していただろう。

あたしは6名とも信頼出来ると認識している。

どのみち、この中に裏切り者がいたら、

その時点で巨神討伐は不可能になる」


「まあ、そうだな。

口出しして悪かった、話を進めてくれ」


ビンサも納得したようだ。

過去にアミアの部下だった彼女だが、

昔一緒に戦っていた時より、

今の方が彼女の感情が理解出来て、

仲間として見られるようになった気がした。


「他にも意見があれば言って欲しい」


アミアは言うが、特に意見は出てこない。


「大丈夫でしょう。

巨神討伐を始めましょう」


クルク王女の言葉で巨神討伐が始まった。


まずは巨神がバランスを崩し倒れても、

巻き込まれない位置まで全体を移動させる。

そして第1工程の部隊が進み出る。

龍神ドド、アミア、リンリ、エリエ、

ナナの1体と4名だ。

4人は機体を覚醒させ、飛び立つドドに続く。


『わしが全力で膝の関節に突進する。

お主らはわしの攻撃が終わった後に、

4機で突っ込んで欲しい』


『『了解』』


そしてドドの身体が金色に光り、

巨神の巨大な左足の膝の裏辺りに突っ込んでいく。

間近で見る巨神は不死鎧に似た装甲が、

幾重にも複雑に重なって出来ており、

それが生物ではなく、造られた機械であると分かる。


『何だ?』


と、ドドが止まる。

見ると巨神の身体の各所から光線のようなものが発射され、

それが当たったドドの一部が焼けている。


『防衛機能?

そんなの聞いてないぞ』


『わしも知らん。

昔はそんなものは無かった』


ドドは一旦距離を取る。

すると巨神の攻撃は止んだ。


『元々あった機能か、

追加された機能かは知らんが、

とにかくあれをどうにかしないと、

攻撃出来ん』


『『わたくし達にやらせて下さい』』


そう名乗り出たのはエリエとナナだった。


『ナナ様の鏡は光線を防御出来ます。

ナナ様に囮として近寄ってもらい、

開いた砲門をわたくしの矢で射抜きます』


『出来るのか?』


『砲門の頑丈さにもよりますが、

恐らく大丈夫でしょう』


エリエに自信はあるようだ。


『なら二人にお願いしよう。

地上の部隊は流れ弾に注意して貰わないとな』


アミアが地上の部隊に連絡し、

それからエリエのアイシンとナナのクオンが巨神に近付く。


『行きます!』


クオンは鏡を大きく前面に展開し、

巨神へと近付いていく。

アイシンは弓矢を構え、巨神の動きを待つ。

アミア達は少し距離を取り、それを見守った。


『来ました』


クオンの鏡に光線が当たり、反射する。

エリエは光線が出ている場所を狙って矢を放つ。

矢が当たると、そこは爆発し、光線は止まった。


『破壊出来ます!』


『続けてくれ』


それからアイシンは次々と現れる砲門を破壊し、

クオンは何とか複数の方向から来る光線を反射し続けた。

100を超える数を破壊したところで、

光線は出なくなった。


『全て破壊出来たようです』


『お疲れ様、

その分、攻撃の方はあたし達が頑張るよ』


『お願いします』


2機がこちらに戻ってくる。


『それじゃあ今度こそわしの出番かな』


ドドが再び輝きだし、巨神へと突っ込んだ。

全力の体当たりは破壊を伴い、

巨神の左足の膝の裏がどんどん削れていく。

しかし巨神自体の大きさは異常で、

ドドが自分の身体3つ分ほど削っても、

まだ微動だにしない。


『これで最後だ!』


ドドの身体は輝きながら炸裂する。

巨神の膝の裏に大きな丸い穴が出来た。


『ドド様!』


その姿が消えたのでナナが心配の声を上げる。


『生きとるよ。

さあ、お主達の番だ』


穴の中心から鎧大になったドドが出てきた。

力の関係で縮むしかないのだろう。


『行くぞ!』


『『はい』』


ドドが穿った穴に向かって4機は進む。

よく分からない機械で出来た装甲の内部が見えてくる。


『4つの穴を膝に向けて掘るイメージで。

一番左側があたし、次がナナさん、

その次がエリエ、一番右側がリンリだ』


『『了解』』


力を使った二人でも内側なら、

既に丸型に深くなっているので壊しやすい。

それに外側の穴が大きい方が、

巨神もバランスを崩しやすいだろう。


アミアはリグムの両手に光の刃を出し、

矢になったつもりで、巨神の中を掘り進む。

巨神自体はかなり丈夫な素材に感じるが、

覚醒した鎧の攻撃は難無くそれを破壊出来る。

そろそろ力が無くなりそうになった時、

ドドから念話が届いた。


『もういい、そろそろ巨神が倒れる。

早く離れろ』


アミア達は急いで反転し、

穿った穴から落ちてくる障害物を避けながら、

巨神から離れた。


それは最初はゆっくりと、

やがて、勢いよく崩れていく。

立っていた巨神の左膝がずれていき、

それを防ぐように右足が前に出る。

右足が大地を踏むと大地に振動が起こり、

右足の先は下層まで沈み込む。

そのまま左足も前に落ち、膝が地面に付いた。

2度目の振動が起き、その衝撃で、

周辺の大地もひび割れる。

巨神は片膝が付いた状態で止まった。


『これで巨神は修復モードに入る。

修復に数時間はかかる筈だ。

さあ第2段階に移るぞ』


鎧形態のドドが言い、

アミア達は部隊へと戻った。



「裏切り者が出たのか?」


戻ってみると部隊は騒然としていた。

アミアは状況を確認する。


「はい、巨神が倒れたタイミングで。

ただ、ビンサさんがすぐに気付いたので、

被害は1機だけだったのですが、

ビンサさんが・・・」


カレカが悔しそうに言う。


「神聖騎士団に裏切り者はいました。

私が気付かなかったばかりに。

振動の後、ラグアはバランスを崩した振りをして、

私の鎧に攻撃を仕掛けて来たんです。

それに気付いたビンサさんが、

攻撃をし、周りの私達は何があったか分からず、

手出し出来ず見殺しに・・・」


「止めに入った時には既に、

ビンサさんの機体は破壊され、

周りで見ていた者の証言で、

先に攻撃を仕掛けたのが、

神聖騎士団のラグアだと分かったのです。

すみません衝撃で目を離したばっかりに」


「終わった事はいい。

被害が少なくて良かったと思おう。

そして亡くなったビンサに報いる為にも、

作戦を成功させよう」


気を落としているキマキとゼンゼに向けて言う。

巨神が倒れた際の衝撃についても、

もっと考慮すべきだったのだろう。


「それでは第2工程に入りましょう。

神装、神聖鎧、不死鎧の皆さん、

お願いします」


クルク王女が場を仕切り直し、

第2工程に移る。


「機数が減った分、

クルク王女も第2工程に参加して欲しい。

護衛と監視はシルシとあたし達でやるんで」


「分かりました」


部隊を全体的に巨神の方に移動させ、

第2工程が始まる。


「それでは魔力を集中させ、

巨神を持ち上げます」


各鎧は魔法を唱え、その力が巨神へと集まっていく。


『・・・アミア、来た』


シルシが敵襲に気付く。

このタイミングを狙ってか、

大型妖魔が湧いてきた。


『エリエとナナさんは監視の方を。

リンリ、シルシ、迎え撃つぞ』


『はい』


『・・・分かった』


シルシも疲れているだろうが、

ギルーンを敵へと向かわせる。

リグムとデュエナははさすがに覚醒は使えない。


『わしも妖魔ぐらいなら相手になろう』


鎧形態のドドも参戦する。


『少し位うちにも活躍させて欲しいかな』


そう言ってやって来たのはテルテだ。


『補充は出来たのか?』


『そりゃあ、もう大漁だよ。

じゃあ、うちから行くからな』


テルテはシウンを妖魔の群れの前に立たせる。


『発射!』


魔法の発射装置は焔玉を群れに向かって発射した。

それは的確に放たれ、

次々と爆発、群れを粉々にしていく。


『わしらの出番は無いかな』


『魔導機の方に悪魔です!』


そんな中、トリリトから念話が飛ぶ。


『シルシとドドはそっちを頼む』


『・・・了解』


『よし来た』


さすがに悪魔の相手は今のアミアには辛い。


『リンリ、ここで踏ん張るぞ』


『うん!』


そんな中だった。


『悪魔が自爆して被害が!

魔導機も!』


トリリトの悲痛な叫びが聞こえた。


『すまない、リンリ、

テルテと二人で耐えてくれ』


『うん、大丈夫だよ。

行ってきて』


アミアは急いでリグムを向かわせる。


『・・・悪魔は倒した』


魔術師側の戦いは終わっていた。


『アミンさんが身を挺して守って。

それでも悪魔が連鎖して自爆で、

間に合わなくて・・・』


トリリトは少し混乱している。

アミンのコウガは悪魔の自爆により、

上半身がほぼ無くなっていた。

そしてその周りにいる3機の魔導機も、

大破している。


『すまん、わしの力でも、

魔導機は直せん。

それに中の魔術師もこれでは・・・』


ドドも間に合わなかった事が悔しいようだ。


『ラーラ、何か策はあるのか?』


『アミア、こっちに来て欲しい』


そしてラーラの魔導機の横に行き、

彼女の指示で周りに聞こえないよう、

直接声に出して会話する。


「魔導機は直る。

魔導機には1日に1度、搭乗者も含め、

完全再生出来る機能が付いている。

これはいざという時の為に秘密にしていた。

ドゼビムの指示だ」


「本当か?

でも、だったらあたしや護衛には、

その事を言っておいても良かったんじゃ」


「駄目だ。

護衛に言ったら、

無意識に手を抜いてしまうかもしれない。

その場合、

今の自爆で完全に破壊される機体が出た。

犠牲は無い方がいい。

でも、これは成功させるには必要な事だ。

この事の責任はドゼビムが取ると言っている。

とにかく第2工程が終わるまでは、

この事はここだけの秘密だ。

アミアはあたしが何とかする、

とだけみんなに伝えてくれ」


ラーラの言っている事は分かる。

だが、もっとうまいやり方があったのでは、

とアミアは思ってしまう。

アミアはその考えを一旦捨て、

作戦を成功させる事に集中した。


「分かった。

第3工程は任せる」


「ああ、絶対成功させる」


アミアはラーラの元を離れる。


『魔導機に被害は出たが、

ラーラの方で何とか対応出来ると言っている。

とにかく第2工程が無事完了するよう、

引き続き対応してくれ』


アミアは念話を飛ばし、各状況を整える。

シルシとドドは魔導機の護衛にそのまま残し、

ナナにはリンリ達と妖魔対応をしてもらう。

アミアはエリエと裏切りを監視しつつ、

全体に変化が無いか、注意する。


やがて、ゆっくりと巨神が上昇し始めた。


『第2工程完了しました』


クルク王女が報告する。

巨神は一番下の足の部分も地面より数十メートル上に浮き、

完全に地上と分離していた。


『ラーラ、第3工程を始めてくれ。

戦闘可能な機体は全て、

寄ってくる妖魔と悪魔を撃退してくれ』


魔導機が前進し、護衛がその周りを囲む。

魔導機は10機とも稼働状態になっているが、

それに対して疑問を口にする者はいなかった。


『ではテレポートを始めます。

完了まであたし達は集中するので、

周りに敵が来ないようにお願いします』


そしてラーラの魔導機を中心に、

魔導機達は杖を掲げ、

そこから紫色の光が伸びていく。

それは巨神を徐々に包んでいった。


『アミア、悪魔だ。

うちには無理だ』


テルテから念話が届く。


『反対側も悪魔です。

わたくしが向かいます』


エリエは最後の力で覚醒し、敵へと向かっていく。


『クルク、監視は頼む。

あたしも行ってくる』


『分かりました、

無理しないで下さい』


シルシとドドとトリリトは、

魔導機のそばに置いておく必要がある。

裏切り者対策はクルクに任せるとして、

他に2重適合出来る者は残っておらず、

アミア達が踏ん張るしかない。


『リンリとナナはどうだ?』


『私は何とか頑張れる』


『わたくしも少しの間なら、覚醒出来ます』


『分かった、そっち側は任せる』


アミアはリグムを覚醒し、

悪魔が新たに現れた、

エリエが向かった方へ行く。


『結構いるな』


『愛の力で頑張りましょう』


エリエももう後が無いのだろう。

とにかく魔法が完了するまで、

時間を稼ぐしかない。


リグムはハルバードを構え、

なるべく多くの悪魔を巻き込んで振り回す。

アイシンも武器を刀にし、

手当たり次第に斬りまくった。


『援護します。

ナナ様の方にはカレカが行きました』


ニチゴウで2重適合したゼンゼがやって来る。

彼女は第2工程で殆ど力を使った筈だ。


『助かる』


『頑張りましょう』


ただ、その助力は嬉しいものだった。

なんとしても3人とも生き残りたい。

アミアはどんどん意識が薄くなるのを感じながら、

何も考えずにハルバードを振るった。



『テレポート、完了しました!』


途切れそうな意識の中、

ラーラの念話が聞こえる。

巨神の方を見ると、その全身が紫色の光に包まれ、

やがて薄れていく。

そして巨神はその姿を完全に消した。


「我々の勝利です!!」


「「おおーーーーーーー!!!!」」


クルク王女の宣言に勝利の叫びが広がる。

悪魔達も敗北を知ってか、

目の前から逃げていく。

さすがにそれを追う余裕のある者はおらず、

アミアも覚醒を解いてその場にリグムを休ませた。


『アミアちゃん、やったね』


『ああ、生き残れたな・・・』


そう答えたところでアミアの意識は無くなった。

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