14.巨神大戦③
『みなさん、足元に気を付けて下さい。
何か罠があるかもしれません』
ユーカがオルトスで駆け付け、念話で警告する。
トルルトと共に悪魔の猛攻を防いでいたトリリトは、
言われて地面を見ると、それが波立ってきたのに気付く。
『トルちゃん飛ぼう』
『分かった』
トリリトのルークスとトルルトのアルーニが飛ぼうとすると、
その足に地面から舌のようなものが絡みついてきた。
『真空刃!』
オルトスがそれを魔法の刃で切り裂いた。
2機はそれにより空中に飛び上がる事が出来る。
『サンキュー、ユーカ』
そう言いながらトルルトが地面に槍を刺し、
トリリトも続く。
地面に化けていた妖魔は姿を現し、溶けていった。
『こちらも排除出来ました』
クルク王女からも報告が来る。
すぐに王女が全機体に、
地面に化けている妖魔がいる事を連絡した。
『それではわたくしは戻ります、
という訳にはいかなそうですね』
オルトスの方にも悪魔が近寄っている。
『トルちゃん』
『ああ』
双子は周りの悪魔を倒しつつ、オルトスに近寄り、
襲って来た悪魔も排除する。
『ここら辺は悪魔が多いから、
なるべく早く離れろ』
『分かっていますわ』
トルルトに言われて少し腹を立てつつも、
ユーカは冷静に立ち去っていく。
『・・・トリとトル、こっちが辛い、
すぐに来て欲しい』
珍しくシルシから救援要請が来る。
見るとギルーンとヴァールが、
悪魔の物量に押され、埋もれていた。
『急ごう』
『はい』
周囲の悪魔を排除してから、
トリリトはトルルトとそちらへ向かう。
『はああああっ!』
アルーニとルークスは力を合わせ、
群れる悪魔を吹き飛ばした。
『・・・助かった』
『ありがとうございます。
ただ、ここに4機集まるのは得策ではありません。
すぐに他の右翼の方に行って下さい』
『了解です』
双子は二人を助けたら、
すぐに踵を返した。
『どんだけ敵がいるんだよ』
『トルちゃん、あれ』
トリリトはオルトスが、
1体の悪魔と戦っているのを見つける。
ユーカの実力は高いが、悪魔相手では敵う筈が無い。
『急ぐぞ』
アルーニは速度を上げて進み、
魔法で悪魔を焼き払う。
『すみません』
『いいって、ここはあたし達が守るから』
トルルトがユーカを助けられたのを見て、
トリリトはホッとする。
『トリ姉、横だ!』
叫びが聞こえる。
そして、左右から悪魔が迫っているのに気付く。
ルークスは右に槍を刺し、左は盾で防いだ。
が、その更に後ろに悪魔がいた。
さすがにそれにトリリトは反応出来ない。
『おらあっ!』
アルーニが槍を投げ、右にいた悪魔を貫いた。
そして左から攻撃してきた悪魔に対して、
オルトスが突っ込んできてそれを盾で防ぐ。
『ありがとう』
ルークスは急いで槍を引き抜き、
まず自分を攻撃している悪魔を突き刺す。
そしてオルトスを襲っている悪魔を狙おうとした。
瞬間、その悪魔は破裂した。
破裂は破壊を伴い、オルトスを吹き飛ばす。
『ユーカ!!』
トルルトは叫び、投げた槍を回収して、
吹き飛んだオルトスの方へ行こうとする。
しかし、場所が悪かった。
吹き飛んだ方向からは別の悪魔がやってきていた。
そして、身動きできないオルトスに襲い掛かる。
『やめろーー!!』
トルルトがアルーニを走らせ、
トリリトもすぐに追う。
しかし、悪魔の攻撃は、
オルトスの繭を突き刺していた。
『わたくしの分も戦って・・・』
それがユーカの最後の言葉だった。
アルーニとルークスは、
そこにいた悪魔を殲滅する。
『よくも、よくも、よくも・・・』
トルルトの様子がおかしい。
アルーニの赤色がより鮮明になっていく。
『トル、落ち着いて』
しかしトリリトの声はもう届かない。
アルーニは近くにいた悪魔へ向かって突進した。
それは猛獣のようで、近くにいた敵を切り裂いていき、
次々と獲物を求めて進んでいく。
付近に悪魔の緑の血が雨のように降った。
『トリリト、近寄っては駄目。
今はトルルトの思うままにさせましょう』
状況を理解したクルク王女から念話が来る。
『でも・・・』
『彼女が暴れれば、悪魔の数も減らせます。
それより他に被害が出ないようにして下さい』
クルク王女の言う通りで、
アルーニを避けた悪魔が再び後方へと向かい始めていた。
『分かりました、ここは私が死守します』
トリリトはトルルトの分も、
そして助けてくれたユーカの分も頑張ろうと誓った。
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(このままじゃ不味いな。
早くドドを解放しないと)
テルテはエリエが抜け、
徐々に押されている後方部隊を見て思う。
『悪魔がこちらを巻き込んで自爆する事があります。
気を付けて下さい』
クルク王女から全体に念話が届く。
敵も必死なのだろう。
地面に化けた妖魔に自爆する悪魔等、
何とかしてこちらの数を減らそうとしている。
シウンでは悪魔とまともに戦う事は出来ず、
大型妖魔を追い払いつつ、
周りの状況に注意する事しか出来ない。
『はっ!』
ナナがクオンで周囲の敵を浄化している。
まさに八面六臂の活躍だが、
徐々に疲弊している事がテルテにも分かった。
そして悪魔もクオンを避け、
別の方向からの攻撃が増えている。
『メグリさん、そちらの方向に8体悪魔が向かってます、
気を付けて下さい』
『了解した』
先程からメグリが乗るシンツの方に敵が集中している。
他の鎧にフォローして貰いたいが、
ナナもアミンも身動き取れない程度に押されており、
その余裕は無い。
『ラーラ、この状況を打開する、
何かいい案は無いのか?』
『難しいな。
右翼の戦場を迂回しつつ、
ドドの近くまで移動出来ればいいんだが』
敵の攻撃が弱まったところで、
徐々にドドの方へと移動はしていたのだが、
大型妖魔や悪魔と戦っている右翼の部隊がいて、
下手に近付けなくなっている。
『あたしが敵を引き付けよう。
その間にナナ様とアミンは魔導機を連れて、
一気に迂回してドド様のところへ』
『そんな、それではメグリが』
メグリの提案にアミンが拒否感を示す。
『正直、こちらの敵も捌ききれそうにない。
だったら、他の敵もまとめて引き受けた方がいい。
その間にドド様を解放出来れば、
まだ助かる見込みが高い』
『分かりました、やりましょう。
メグリ、お願いします。
アミン、なんとしても魔導機を守りつつ、
ドド様の元へ』
『・・・分かりました』
ナナが提案を受け入れたので、
アミンはそれに従うしかない。
『うちが先導して道を見つけます。
うちのルートを付いて来て下さい』
『現状敵が薄いと思われる場所を送った』
ラーラからシウンの地図データ上に、
迂回ルートが送られる。
『じゃあ、先導します』
『あたしが合図したら、
ナナ様達はここから離れて下さい』
テルテが動き出し、メグリがタイミングを計る。
テルテは後方部隊に先立ち、
全速力で中央寄りの迂回ルートを進んでいく。
あまり左に寄り過ぎると超越者との戦いに巻き込まれるので、
そのバランスが大事だ。
(大型妖魔!
でも!)
テルテはシウンに積んでいた、
新たな兵器を展開する。
これはラーラからもらった魔法の飛び道具を、
東の国の焔玉が打ち出せるように改良したものだ。
背中から前方に銃口を向け、
飛び出してきた大型妖魔に向けて放つ。
「グアアアアッ」
巨大な熊のような大型妖魔はまともに喰らい、
そして爆発、四方八方に飛び散った。
速度をなるべく落とさず、
シウンは更に注意しながら進む。
しかし、そこには悪魔が待ち構えていた。
さすがに飛び道具も悪魔には避けられるだろう。
(無理だったか・・・)
後続はまだ来ておらず、
シウンは数体の悪魔と向かい合う形だ。
『テルテさん、右へ避けて!』
念話が届いたので、言われた通り右へ飛ぶ。
すると悪魔の背後から稲妻が飛び、
テルテのいたところまで伸びた。
悪魔達は消滅している。
『助かったよ。
ゼンゼさん?』
『はい、敵を排除しつつ、
後方部隊と合流しようと移動していました。
もうすぐカレカと残った巫女達も来ます』
『ちょうどいい、こちらもドドの所まで、
後方部隊と移動している所だ。
合流しよう。
あと、メグリさんが1人で残って敵を引き付けてる。
助けに行ってくれないか?』
『そうですか。
テルテさんはここでカレカを待って下さい。
わたしはナナ様の方を確認しつつ、
メグリの所に行きます』
ゼンゼのニチゴウは猛スピードで後方へと向かう。
(間に合ってくれればいいけど・・・)
テルテは祈りつつ、周囲を警戒して合流を待った。
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『次は3人連続で!』
『『はい!』』
リグムが超越者に突撃し、
それが避けられた先をアイシンが矢で攻撃、
防御してる所へデュエナが斬りかかる。
更にリグムが攻撃するが、
それも防御され、相手の反撃を受ける。
攻撃が当たらない訳では無いが、
相手の再生速度の方が早い。
逆に覚醒している3体の鎧の再生は、
相手からのダメージに追い付かない。
(奇襲も、同時攻撃も、連続攻撃も駄目か。
考えてから動いては遅いんだ)
アミアは分かっているが、
人としての肉体を操る限界が、
壁として立ちはだかる。
気を抜けば攻撃が飛んできて、
思考する時間は奪われた。
(ここがあたしの限界か)
そして、一つ可能性が浮かんだ。
『リンリ、好きなように攻撃してみろ。
あたしはそれに合わせる。
エリエは援護に徹してくれ』
『分かった』
『了解です』
リンリはリーダーには向かないかもしれない。
それでも鎧を操る力は、
この中で一番だと感じている。
だからあたし達はそれに合わせればいい。
デュエナの動きが止まる。
それに合わせてリグムも、アイシンも停止する。
超越者の攻撃が来るのが分かる。
でもデュエナは動かない。
アミアはリンリを信じ、その動きを待つ。
『はっ!』
デュエナが動く。
敵の攻撃を受けつつ、そのまま突進する。
アミアも身体が勝手に動き、
攻撃を躱さず、それに付いていく。
超越者がそれに気付き、避けようとする。
そこに上空からのアイシンの矢が飛び、
超越者がそれに反応する。
刹那、デュエナが超越者を斬る。
リグムも続いて斬る。
×の形に超越者は裂けた。
(やったか?)
そこへアイシンの矢の雨が降り注ぐ。
『防御して!』
リンリの言葉に急いで防御態勢を取る。
超越者を中心に闇が広がり、
急いで張った防御の魔法が消え、
超越者側の装甲が溶けていく。
「やるねえ、お前ら。
少し油断したかなあ」
超越者の声に怒りが混じっている。
装甲は溶けてはいるが、
まだそこに超越者は立っていた。
(もう少しなのに)
アミアはさすがに残された力が少ないのを感じる。
リンリもエリエも同じだろう。
やはり超越者を人間が倒すのは無理のか。
アミアが諦めかけた、その時だった。
「助太刀しよう。
ただ、わし自身の力は使えぬ、
お主達で倒してくれ」
右側からドドが姿を現した。
魔術師による解放が間に合ったのだ。
「龍神か!
あの役立たず共め!!」
超越者が悪態をつく中、ドドからの力で、
アミア達の疲労と神力が回復していくのが分かる。
「わたくしも参戦致します」
そしてドドの下からナナのクオンも現れる。
右翼側も後方部隊も何とかなったのだろう。
「何人で来ようが結果は変わらんよ」
超越者の装甲の再生も完了していた。
「超越者様。
戦う前に一つだけ聞かせて下さい。
なぜ人間相手にこのような行いをなさったのですか?」
ナナが問い掛ける。
「超越者の行いには意味が無いって知ってるだろ。
まあ、今回のはゲームだ。
面白い案を出す奴がいてな。
俺はそれに乗っただけだ。
トワの国が壊れるのを中から見るのは楽しかったぞ」
超越者は答える。
こいつを倒してもまだ終わりではないのか?
アミアはそんな考えが浮かぶが、
今は戦いに集中する。
「分かりました。
トワの国の大巫女、ナナ・クイン。
ミルミ様の命により、貴方を討ち滅ぼします」
「出来るならやってみろ」
超越者からの攻撃が飛ぶ。
4機はそれを避け、
超越者の周りを囲むような形になる。
『リンリ、さっきと同じだ。
リンリに任せる。
エリエとナナさんは援護を頼む』
『うん』
『了解です』
『了解いたしました』
また全機の動きが止まり、超越者も警戒する。
それは一筋の光のようだった。
デュエナの突撃に超越者は反応しきれない。
リグムも波に乗るようにそれに続く。
そこへ空中のクオンからの光の波動が降り注ぎ、
超越者が回避する先へとアイシンの矢が飛ぶ。
「このおおおおお!!」
超越者が自身を中心に闇を破裂させる。
しかし、デュエナは止まらず、
そのまま光の剣を相手の胸に突き刺す。
続いてリグムが光の刃を斬り下ろし、
地面に光の柱が立つ。
クオンの鏡の光は柱に向けて明るさを増し、
アイシンの放った巨大な矢がそこへと突き刺さる。
『浄化を!!』
リンリが叫び、デュエナの手を超越者の方へ広げる。
リグムも同様に手を広げ、力を超越者へ集中する。
上空からクオンとアイシンも同様に手を広げた。
超越者は身動き出来ず、光が広がっていく。
「人間風情がーーーーっ!!!!」
そして超越者は消滅した。
『はぁ』
アミアは力が抜け、リグムの覚醒が解ける。
他の3人も同様に覚醒が解け、ぐったりしていた。
『やったな』
『うん、出来たね』
『ミルミ様の加護がありましたから』
『みなさん、本当にお疲れ様です』
4人で身動き出来ずに称え合う。
「よくやったな。
だが、夜までにあれを何とかせんと」
見守っていただろうドドがやってきて、
声をかける。
同時に先程までではないにしろ、
少しだけ疲労と神力が回復した。
見上げれば巨神はまだ悠然と立っている。
『じゃあ、さっさと片付けようか』
アミアはリグムを立ち上がらせた。




