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悪姫恋聖  作者: ねじるとやみ
第5部 巨神大戦
64/82

14.巨神大戦③

『みなさん、足元に気を付けて下さい。

何か罠があるかもしれません』


ユーカがオルトスで駆け付け、念話で警告する。

トルルトと共に悪魔の猛攻を防いでいたトリリトは、

言われて地面を見ると、それが波立ってきたのに気付く。


『トルちゃん飛ぼう』


『分かった』


トリリトのルークスとトルルトのアルーニが飛ぼうとすると、

その足に地面から舌のようなものが絡みついてきた。


『真空刃!』


オルトスがそれを魔法の刃で切り裂いた。

2機はそれにより空中に飛び上がる事が出来る。


『サンキュー、ユーカ』


そう言いながらトルルトが地面に槍を刺し、

トリリトも続く。

地面に化けていた妖魔は姿を現し、溶けていった。


『こちらも排除出来ました』


クルク王女からも報告が来る。

すぐに王女が全機体に、

地面に化けている妖魔がいる事を連絡した。


『それではわたくしは戻ります、

という訳にはいかなそうですね』


オルトスの方にも悪魔が近寄っている。


『トルちゃん』


『ああ』


双子は周りの悪魔を倒しつつ、オルトスに近寄り、

襲って来た悪魔も排除する。


『ここら辺は悪魔が多いから、

なるべく早く離れろ』


『分かっていますわ』


トルルトに言われて少し腹を立てつつも、

ユーカは冷静に立ち去っていく。


『・・・トリとトル、こっちが辛い、

すぐに来て欲しい』


珍しくシルシから救援要請が来る。

見るとギルーンとヴァールが、

悪魔の物量に押され、埋もれていた。


『急ごう』


『はい』


周囲の悪魔を排除してから、

トリリトはトルルトとそちらへ向かう。


『はああああっ!』


アルーニとルークスは力を合わせ、

群れる悪魔を吹き飛ばした。


『・・・助かった』


『ありがとうございます。

ただ、ここに4機集まるのは得策ではありません。

すぐに他の右翼の方に行って下さい』


『了解です』


双子は二人を助けたら、

すぐに踵を返した。


『どんだけ敵がいるんだよ』


『トルちゃん、あれ』


トリリトはオルトスが、

1体の悪魔と戦っているのを見つける。

ユーカの実力は高いが、悪魔相手では敵う筈が無い。


『急ぐぞ』


アルーニは速度を上げて進み、

魔法で悪魔を焼き払う。


『すみません』


『いいって、ここはあたし達が守るから』


トルルトがユーカを助けられたのを見て、

トリリトはホッとする。


『トリ姉、横だ!』


叫びが聞こえる。

そして、左右から悪魔が迫っているのに気付く。

ルークスは右に槍を刺し、左は盾で防いだ。

が、その更に後ろに悪魔がいた。

さすがにそれにトリリトは反応出来ない。


『おらあっ!』


アルーニが槍を投げ、右にいた悪魔を貫いた。

そして左から攻撃してきた悪魔に対して、

オルトスが突っ込んできてそれを盾で防ぐ。


『ありがとう』


ルークスは急いで槍を引き抜き、

まず自分を攻撃している悪魔を突き刺す。

そしてオルトスを襲っている悪魔を狙おうとした。

瞬間、その悪魔は破裂した。

破裂は破壊を伴い、オルトスを吹き飛ばす。


『ユーカ!!』


トルルトは叫び、投げた槍を回収して、

吹き飛んだオルトスの方へ行こうとする。

しかし、場所が悪かった。

吹き飛んだ方向からは別の悪魔がやってきていた。

そして、身動きできないオルトスに襲い掛かる。


『やめろーー!!』


トルルトがアルーニを走らせ、

トリリトもすぐに追う。

しかし、悪魔の攻撃は、

オルトスの繭を突き刺していた。


『わたくしの分も戦って・・・』


それがユーカの最後の言葉だった。

アルーニとルークスは、

そこにいた悪魔を殲滅する。


『よくも、よくも、よくも・・・』


トルルトの様子がおかしい。

アルーニの赤色がより鮮明になっていく。


『トル、落ち着いて』


しかしトリリトの声はもう届かない。

アルーニは近くにいた悪魔へ向かって突進した。

それは猛獣のようで、近くにいた敵を切り裂いていき、

次々と獲物を求めて進んでいく。

付近に悪魔の緑の血が雨のように降った。


『トリリト、近寄っては駄目。

今はトルルトの思うままにさせましょう』


状況を理解したクルク王女から念話が来る。


『でも・・・』


『彼女が暴れれば、悪魔の数も減らせます。

それより他に被害が出ないようにして下さい』


クルク王女の言う通りで、

アルーニを避けた悪魔が再び後方へと向かい始めていた。


『分かりました、ここは私が死守します』


トリリトはトルルトの分も、

そして助けてくれたユーカの分も頑張ろうと誓った。


===========================================================================


(このままじゃ不味いな。

早くドドを解放しないと)


テルテはエリエが抜け、

徐々に押されている後方部隊を見て思う。


『悪魔がこちらを巻き込んで自爆する事があります。

気を付けて下さい』


クルク王女から全体に念話が届く。

敵も必死なのだろう。

地面に化けた妖魔に自爆する悪魔等、

何とかしてこちらの数を減らそうとしている。

シウンでは悪魔とまともに戦う事は出来ず、

大型妖魔を追い払いつつ、

周りの状況に注意する事しか出来ない。


『はっ!』


ナナがクオンで周囲の敵を浄化している。

まさに八面六臂の活躍だが、

徐々に疲弊している事がテルテにも分かった。

そして悪魔もクオンを避け、

別の方向からの攻撃が増えている。


『メグリさん、そちらの方向に8体悪魔が向かってます、

気を付けて下さい』


『了解した』


先程からメグリが乗るシンツの方に敵が集中している。

他の鎧にフォローして貰いたいが、

ナナもアミンも身動き取れない程度に押されており、

その余裕は無い。


『ラーラ、この状況を打開する、

何かいい案は無いのか?』


『難しいな。

右翼の戦場を迂回しつつ、

ドドの近くまで移動出来ればいいんだが』


敵の攻撃が弱まったところで、

徐々にドドの方へと移動はしていたのだが、

大型妖魔や悪魔と戦っている右翼の部隊がいて、

下手に近付けなくなっている。


『あたしが敵を引き付けよう。

その間にナナ様とアミンは魔導機を連れて、

一気に迂回してドド様のところへ』


『そんな、それではメグリが』


メグリの提案にアミンが拒否感を示す。


『正直、こちらの敵も捌ききれそうにない。

だったら、他の敵もまとめて引き受けた方がいい。

その間にドド様を解放出来れば、

まだ助かる見込みが高い』


『分かりました、やりましょう。

メグリ、お願いします。

アミン、なんとしても魔導機を守りつつ、

ドド様の元へ』


『・・・分かりました』


ナナが提案を受け入れたので、

アミンはそれに従うしかない。


『うちが先導して道を見つけます。

うちのルートを付いて来て下さい』


『現状敵が薄いと思われる場所を送った』


ラーラからシウンの地図データ上に、

迂回ルートが送られる。


『じゃあ、先導します』


『あたしが合図したら、

ナナ様達はここから離れて下さい』


テルテが動き出し、メグリがタイミングを計る。

テルテは後方部隊に先立ち、

全速力で中央寄りの迂回ルートを進んでいく。

あまり左に寄り過ぎると超越者との戦いに巻き込まれるので、

そのバランスが大事だ。


(大型妖魔!

でも!)


テルテはシウンに積んでいた、

新たな兵器を展開する。

これはラーラからもらった魔法の飛び道具を、

東の国の焔玉が打ち出せるように改良したものだ。

背中から前方に銃口を向け、

飛び出してきた大型妖魔に向けて放つ。


「グアアアアッ」


巨大な熊のような大型妖魔はまともに喰らい、

そして爆発、四方八方に飛び散った。

速度をなるべく落とさず、

シウンは更に注意しながら進む。

しかし、そこには悪魔が待ち構えていた。

さすがに飛び道具も悪魔には避けられるだろう。


(無理だったか・・・)


後続はまだ来ておらず、

シウンは数体の悪魔と向かい合う形だ。


『テルテさん、右へ避けて!』


念話が届いたので、言われた通り右へ飛ぶ。

すると悪魔の背後から稲妻が飛び、

テルテのいたところまで伸びた。

悪魔達は消滅している。


『助かったよ。

ゼンゼさん?』


『はい、敵を排除しつつ、

後方部隊と合流しようと移動していました。

もうすぐカレカと残った巫女達も来ます』


『ちょうどいい、こちらもドドの所まで、

後方部隊と移動している所だ。

合流しよう。

あと、メグリさんが1人で残って敵を引き付けてる。

助けに行ってくれないか?』


『そうですか。

テルテさんはここでカレカを待って下さい。

わたしはナナ様の方を確認しつつ、

メグリの所に行きます』


ゼンゼのニチゴウは猛スピードで後方へと向かう。


(間に合ってくれればいいけど・・・)


テルテは祈りつつ、周囲を警戒して合流を待った。


===========================================================================


『次は3人連続で!』


『『はい!』』


リグムが超越者に突撃し、

それが避けられた先をアイシンが矢で攻撃、

防御してる所へデュエナが斬りかかる。

更にリグムが攻撃するが、

それも防御され、相手の反撃を受ける。


攻撃が当たらない訳では無いが、

相手の再生速度の方が早い。

逆に覚醒している3体の鎧の再生は、

相手からのダメージに追い付かない。


(奇襲も、同時攻撃も、連続攻撃も駄目か。

考えてから動いては遅いんだ)


アミアは分かっているが、

人としての肉体を操る限界が、

壁として立ちはだかる。

気を抜けば攻撃が飛んできて、

思考する時間は奪われた。


(ここがあたしの限界か)


そして、一つ可能性が浮かんだ。


『リンリ、好きなように攻撃してみろ。

あたしはそれに合わせる。

エリエは援護に徹してくれ』


『分かった』


『了解です』


リンリはリーダーには向かないかもしれない。

それでも鎧を操る力は、

この中で一番だと感じている。

だからあたし達はそれに合わせればいい。

デュエナの動きが止まる。

それに合わせてリグムも、アイシンも停止する。

超越者の攻撃が来るのが分かる。

でもデュエナは動かない。

アミアはリンリを信じ、その動きを待つ。


『はっ!』


デュエナが動く。

敵の攻撃を受けつつ、そのまま突進する。

アミアも身体が勝手に動き、

攻撃を躱さず、それに付いていく。

超越者がそれに気付き、避けようとする。

そこに上空からのアイシンの矢が飛び、

超越者がそれに反応する。

刹那、デュエナが超越者を斬る。

リグムも続いて斬る。

×の形に超越者は裂けた。


(やったか?)


そこへアイシンの矢の雨が降り注ぐ。


『防御して!』


リンリの言葉に急いで防御態勢を取る。

超越者を中心に闇が広がり、

急いで張った防御の魔法が消え、

超越者側の装甲が溶けていく。


「やるねえ、お前ら。

少し油断したかなあ」


超越者の声に怒りが混じっている。

装甲は溶けてはいるが、

まだそこに超越者は立っていた。


(もう少しなのに)


アミアはさすがに残された力が少ないのを感じる。

リンリもエリエも同じだろう。

やはり超越者を人間が倒すのは無理のか。

アミアが諦めかけた、その時だった。


「助太刀しよう。

ただ、わし自身の力は使えぬ、

お主達で倒してくれ」


右側からドドが姿を現した。

魔術師による解放が間に合ったのだ。


「龍神か!

あの役立たず共め!!」


超越者が悪態をつく中、ドドからの力で、

アミア達の疲労と神力が回復していくのが分かる。


「わたくしも参戦致します」


そしてドドの下からナナのクオンも現れる。

右翼側も後方部隊も何とかなったのだろう。


「何人で来ようが結果は変わらんよ」


超越者の装甲の再生も完了していた。


「超越者様。

戦う前に一つだけ聞かせて下さい。

なぜ人間相手にこのような行いをなさったのですか?」


ナナが問い掛ける。


「超越者の行いには意味が無いって知ってるだろ。

まあ、今回のはゲームだ。

面白い案を出す奴がいてな。

俺はそれに乗っただけだ。

トワの国が壊れるのを中から見るのは楽しかったぞ」


超越者は答える。

こいつを倒してもまだ終わりではないのか?

アミアはそんな考えが浮かぶが、

今は戦いに集中する。


「分かりました。

トワの国の大巫女、ナナ・クイン。

ミルミ様の命により、貴方を討ち滅ぼします」


「出来るならやってみろ」


超越者からの攻撃が飛ぶ。

4機はそれを避け、

超越者の周りを囲むような形になる。


『リンリ、さっきと同じだ。

リンリに任せる。

エリエとナナさんは援護を頼む』


『うん』


『了解です』


『了解いたしました』


また全機の動きが止まり、超越者も警戒する。


それは一筋の光のようだった。

デュエナの突撃に超越者は反応しきれない。

リグムも波に乗るようにそれに続く。

そこへ空中のクオンからの光の波動が降り注ぎ、

超越者が回避する先へとアイシンの矢が飛ぶ。


「このおおおおお!!」


超越者が自身を中心に闇を破裂させる。

しかし、デュエナは止まらず、

そのまま光の剣を相手の胸に突き刺す。

続いてリグムが光の刃を斬り下ろし、

地面に光の柱が立つ。

クオンの鏡の光は柱に向けて明るさを増し、

アイシンの放った巨大な矢がそこへと突き刺さる。


『浄化を!!』


リンリが叫び、デュエナの手を超越者の方へ広げる。

リグムも同様に手を広げ、力を超越者へ集中する。

上空からクオンとアイシンも同様に手を広げた。

超越者は身動き出来ず、光が広がっていく。


「人間風情がーーーーっ!!!!」


そして超越者は消滅した。


『はぁ』


アミアは力が抜け、リグムの覚醒が解ける。

他の3人も同様に覚醒が解け、ぐったりしていた。


『やったな』


『うん、出来たね』


『ミルミ様の加護がありましたから』


『みなさん、本当にお疲れ様です』


4人で身動き出来ずに称え合う。


「よくやったな。

だが、夜までにあれを何とかせんと」


見守っていただろうドドがやってきて、

声をかける。

同時に先程までではないにしろ、

少しだけ疲労と神力が回復した。

見上げれば巨神はまだ悠然と立っている。


『じゃあ、さっさと片付けようか』


アミアはリグムを立ち上がらせた。

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