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悪姫恋聖  作者: ねじるとやみ
第5部 巨神大戦
63/82

13.巨神大戦②

『左翼に超越者です、

巫女は逃げて!!』


リンリの緊急の念話を聞き、

アミアは周りの悪魔の相手をしながら、

頭をフル回転させる。


(どうすればいい?

どうすれば最低限の被害で生き残れる?)


このままでは左翼が全滅する可能性もある。

しかし自分はすぐには抜けれらない。


『エリエ、ナナ、援護に回れるか?』


『後方にも悪魔が出ました、

すぐには無理です!』


狙ったタイミングなのだろう、後衛部隊は頼れない。

とにかくリンリに自分と後衛が行くまで、

耐えてもらわないと。

そして左翼の状況を考えた時、

アミアの中に悪寒が走る。


『みんな飛べ!!』


アミアは左翼部隊に対して叫んだ。

ミルミが以前の戦闘で見せてくれた斬撃。

左翼を掃討するのに同じ事をしてくる可能性があると。

そして、それはその後の空気を震わせる衝撃で、

ほぼ確信へと繋がる。


『リンリ、大丈夫か!』


アミアは問いかけるが返答が無い。

そして、気を取られたリグムに対して、

悪魔達が反撃を仕掛けてくる。

何とかして致命的な攻撃は避けたが、

相手の勢いを増したのを感じる。


『・・・アミア、行って』


そんな悪魔を背後から叩き斬り、

シルシのギルーンが現れる。


『アミア、左翼をお願いします』


『しかし、右翼もこのままでは』


『左翼が全滅したなら敗北です。

私とシルシで何とかします』


『うん、大丈夫だから・・・』


クルクもヴァールに乗って近くの悪魔を排除する。

2人が無理している事は手に取るように分かる。

しかし、アミアは向かわずにはいられなかった。


『すぐ片付けて戻ってくる』


前方の悪魔を吹き飛ばし、

そのまま左翼へと全速力で飛び去る。


『頑張りましょう!』


『・・・うん』


ヴァールとギルーンは共に悪魔達へと突っ込むのだった。



(これは・・・)


アミアの眼下には惨状が広がっていた。

アミアの叫びで半数以上の神装は回避出来たようだが、

生き残った神装は超越者の玩具にされていた。

既に戦意は失われ、逃げ惑う機体を、

蠅でも叩くように潰していく。


(リンリは?)


センサーに反応は無く、見える範囲に機体は無い。

既に消滅させられたのか。

余計な事を考えないように、アミアは感情を閉ざす。


「そこまでだ」


攻撃されていた神装を庇い、

リグムは超越者の攻撃を避ける。


「活きのいいのが残ってるな。

少し、遊んでくれよ」


黒い鎧姿の超越者から針のような一撃が飛んでくる。

何とかリグムは避けるが、続いて上から衝撃波が来て、

リグムの左1/5が溶けて無くなる。


(防戦ではダメだ)


アミアが時間を稼げば巫女達が生き残る確率が増える。

アミアは矢をイメージした。

そして己を射る。


「なるほど」


自らを限界の速度で超越者に突撃したが、

それは相手に避けらる。


(まだだ)


そして上空からリグムが作った魔法の矢が、

急降下で降り注ぐ。

超越者は雨でも防ぐように、

手を上げてそれを防ぎきる。

突撃から反転したリグムは光の刃を伸ばし、

それを大きく振るった。

が、超越者は矢を防ぎながら跳躍し、それも躱す。


(一人だと辛いな)


ただ、アミアはどこかで一人で無い事を感じていた。


『はああああっ!!』


跳躍した超越者の真下の地面から光の柱が立ち昇る。

それは光の剣を掲げたデュエナだった。

気付いた超越者もそれを避けきれず、

身体の半分が消えて無くなる。


「少し遊びが過ぎたかな」


超越者が距離を取って身体を修復する。


『リンリ、無事だったか』


『うん、ギリギリのところをカレカさんが助けてくれて。

それでも結構危なくて、気を失ってたんだ。

生きてる巫女達はカレカさんとゼンゼさんが、

少しずつ救出してる』


2重適合出来る巫女達も生きていたようで、

少しだけ希望が持てる。


『二人で出来るか分からないが、

出来るだけあいつの相手をしよう』


『うん』


そう言いながらも、

アミアは二人なら負ける気がしなかった。


===========================================================================


(早く何とかしないと巫女が)


エリエは寄ってくる悪魔をアイシンを覚醒させて倒すが、

その数は多く、減っているとは思えない。

魔導機を1機でも失ったら負け、

という制約があるので打って出る事も出来ず、

もどかしい。


『エリエ、あなたは左翼へ行って』


そんな中、同じくクオンを覚醒させている、

大巫女のナナが言う。


『ここはあたし達が何とかします』


『みんなの事を頼む』


巫女のメグリとアミンもそれに続く。


『この数を3人では厳しいのでは』


『わたくしも本気を出します』


ナナはエリエを心配させない為か、

秘めたる力である光の鏡を作り出す。

鏡は扇状に光を放射し、照らされた悪魔達を浄化した。


『今です、行きなさい、エリエ』


『分かりました。

みんなを助けてきます』


エリエは振り返らずに飛び出す。


(ミルミ様、みんなに加護を)


エリエは祈りながら左翼へと向かった。



左翼ではアミアとリンリが超越者と戦っていた。

しかし、リグムもデュエナも満身創痍だ。


「小細工が過ぎるな。

先に絶望を感じろ」


超越者が手を上げると、

リグムとデュエナの少し後方の地面が吹き飛んだ。

そして窪んだ地面の下に十数機の神装が現れる。


「やめろ」


リグムが突進するが、

その前に衝撃波が神装の方へ飛ぶ。


(守らないと!)


エリエは後先考えず、降下し、

神装達の前でアイシンの手を広げた。

防御魔法を展開するが、

それを凌ぐ威力がアイシンを襲う。

アイシンの前面は溶けて無くなった。


『エリエ!』


『大丈夫、早く逃げて』


『駄目だ、この中に裏切り者がいる。

このままじゃこちらの手を読まれる』


カレカが訴える。

なるほど、ならば、

とエリエは考えた。


『アミア、リンリ、しばらくお願い』


『任せとけ』


『頑張るよ』


リグムとデュエナは再び超越者へと向かっていく。

アイシンは宙に浮かぶと、

光の弓矢を構え、巫女達の神装へと矢を放った。

突然の事で更に混乱する巫女達。

だが、その攻撃によるダメージは無かった。


『裏切り者はトクハとミズルです』


エリエの目にはこちらの動きを察知し、

矢を放つ前に動いた2機が見えていた。


『どうして・・・』


ゼンゼが疑問を口にする。

即座にカレカがトクハの神装を、

ゼンゼがミズルの神装を捕らえる。


『我ら巫女は超越者様に従うもの。

私とトクハは選ばれたのです』


『勝てる訳ないじゃないですか。

エリエだって分かってるんでしょ?』


ミズルとトクハがそれぞれ答えた。


『カレカ、ゼンゼ、後は頼みます』


『『了解しました』』


そして2体の神装は破壊された。


『お待たせしました。

さっさと片付けましょう』


『手強いぞ』


『エリエちゃんがいれば、

百人力だよ』


3体の覚醒した鎧が超越者を囲む。


「3人ともボロボロじゃないか。

そろそろ諦めたらどうだ?

どっちにしたって、もうすぐ仲間達が死ぬんだぞ」


「その前にあなたを倒します。

わたくしには与えられた勅命があります」


エリエは心にミルミを抱き、超越者へと突進した。


===========================================================================


『このままじゃ数に押される。

神聖騎士団とも力を合わせ、攻撃を凌ぎきりる。

いいな?』


『分かった。

やるぞ、お前ら』


『『おー!』』


タンタの言葉に邪教団の隊長ビンサと、

部隊の者が応える。


『分かりました』


ニギニも了解の意を伝える。

右翼で教団戦闘部隊と共に戦っていたニギニだが、

その大型妖魔の量に圧倒され、

近くにいる敵を倒すのに精一杯だった。

だから、聖教団側と一緒になり、

ユーカやムイルと合流出来る事で少し安心していた。


『みなさん、神聖鎧2、不死鎧2の組み合わせで、

1体の妖魔に当たって下さい』


早速ユーカが指示を飛ばし、

近くにいた者同士での組み合わせの情報を送ってくる。


『ニギニ、行こうぜ』


『はい』


ムイルと他に各教団から一人ずつの組み合わせになり、

ニギニは目前のヒュドラに突撃する。

ムイルはガルンのハンマーでヒュドラを怯ませ、

その間にベリンと他の2体で首を落としていく。

各教団の人もこの戦いで徐々に慣れたようで、

敵の攻撃を避け、的確に攻撃出来るようになっていた。


ユーカの指示が良かったのか、

徐々に周りの妖魔が減っていく。

そんな中ニギニは、

前方で悪魔と戦っているトリリト達のいる地面に、

何か違和感を覚えた。

影のようなものが移動したように感じたのだ。


『ユーカ、双子が戦ってる辺りの地面に違和感が。

何か分かりますか?』


『気になりますね。

タンタさん、ここは任せても大丈夫ですか?』


『ああ、大分落ち着いてきた。

向こうに何かあるとマズイ、行ってくれ』


『はい』


ユーカのオルトスが離れていく。

そしてニギニは他の妖魔と戦っていると、

右側で戦っている鎧の下に同じような違和感を覚えた。


(伝えなきゃ)


『ちょっと離れます』


ニギニは他の3人に告げてベリンを右側へ走らせる。


『地面に気を付けて!』


とにかく近付いて、

そこにいた鎧の搭乗者に念話で伝える。


『え?』


言っているうちに地面が波打つ。


(どうしよう)


伝えはしたが、ニギニはどうすればいいか分からない。


『離れろ!!』


そんなベリンの横を猛スピードで鎧が追い抜いていく。

ムイルのガルンだ。

ガルンはスピードを緩めず波打つ地面の上に移動し、

ハンマーでそこにいた数体の鎧をその外へ吹き飛ばす。


『ムイル!』


ニギニが叫んだ瞬間、地面が大きく口を開けた。

ガルンは飛び上がろうとするが、

舌のようなものに絡まれ、

そのまま下へと引きずり込まれる。

そして無慈悲にその口は閉じられた。

残ったのはガルンの上半分だけだった。


『どうして!!』


ニギニは叫びながら槍を地面に突き刺す。

同様に他の鎧も地面を攻撃すると、

その妖魔は姿を現し、溶けていった。


『俺は適合者じゃないだろ。

ニギニが俺の分も頑張ってくれれば、

その方がいい・・・』


ムイルが最後の力で喋る。


『そんな。

わたしなんて何にも出来ないよ!』


しかしムイルはもう答えてくれない。


『ニギニ、気持ちを切り替えろ!!』


タンタから檄が飛ぶ。


『はい!』


ニギニは泣くのは後だと心に決め、

再び妖魔へと突撃を始めた。

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