13.巨神大戦②
『左翼に超越者です、
巫女は逃げて!!』
リンリの緊急の念話を聞き、
アミアは周りの悪魔の相手をしながら、
頭をフル回転させる。
(どうすればいい?
どうすれば最低限の被害で生き残れる?)
このままでは左翼が全滅する可能性もある。
しかし自分はすぐには抜けれらない。
『エリエ、ナナ、援護に回れるか?』
『後方にも悪魔が出ました、
すぐには無理です!』
狙ったタイミングなのだろう、後衛部隊は頼れない。
とにかくリンリに自分と後衛が行くまで、
耐えてもらわないと。
そして左翼の状況を考えた時、
アミアの中に悪寒が走る。
『みんな飛べ!!』
アミアは左翼部隊に対して叫んだ。
ミルミが以前の戦闘で見せてくれた斬撃。
左翼を掃討するのに同じ事をしてくる可能性があると。
そして、それはその後の空気を震わせる衝撃で、
ほぼ確信へと繋がる。
『リンリ、大丈夫か!』
アミアは問いかけるが返答が無い。
そして、気を取られたリグムに対して、
悪魔達が反撃を仕掛けてくる。
何とかして致命的な攻撃は避けたが、
相手の勢いを増したのを感じる。
『・・・アミア、行って』
そんな悪魔を背後から叩き斬り、
シルシのギルーンが現れる。
『アミア、左翼をお願いします』
『しかし、右翼もこのままでは』
『左翼が全滅したなら敗北です。
私とシルシで何とかします』
『うん、大丈夫だから・・・』
クルクもヴァールに乗って近くの悪魔を排除する。
2人が無理している事は手に取るように分かる。
しかし、アミアは向かわずにはいられなかった。
『すぐ片付けて戻ってくる』
前方の悪魔を吹き飛ばし、
そのまま左翼へと全速力で飛び去る。
『頑張りましょう!』
『・・・うん』
ヴァールとギルーンは共に悪魔達へと突っ込むのだった。
(これは・・・)
アミアの眼下には惨状が広がっていた。
アミアの叫びで半数以上の神装は回避出来たようだが、
生き残った神装は超越者の玩具にされていた。
既に戦意は失われ、逃げ惑う機体を、
蠅でも叩くように潰していく。
(リンリは?)
センサーに反応は無く、見える範囲に機体は無い。
既に消滅させられたのか。
余計な事を考えないように、アミアは感情を閉ざす。
「そこまでだ」
攻撃されていた神装を庇い、
リグムは超越者の攻撃を避ける。
「活きのいいのが残ってるな。
少し、遊んでくれよ」
黒い鎧姿の超越者から針のような一撃が飛んでくる。
何とかリグムは避けるが、続いて上から衝撃波が来て、
リグムの左1/5が溶けて無くなる。
(防戦ではダメだ)
アミアが時間を稼げば巫女達が生き残る確率が増える。
アミアは矢をイメージした。
そして己を射る。
「なるほど」
自らを限界の速度で超越者に突撃したが、
それは相手に避けらる。
(まだだ)
そして上空からリグムが作った魔法の矢が、
急降下で降り注ぐ。
超越者は雨でも防ぐように、
手を上げてそれを防ぎきる。
突撃から反転したリグムは光の刃を伸ばし、
それを大きく振るった。
が、超越者は矢を防ぎながら跳躍し、それも躱す。
(一人だと辛いな)
ただ、アミアはどこかで一人で無い事を感じていた。
『はああああっ!!』
跳躍した超越者の真下の地面から光の柱が立ち昇る。
それは光の剣を掲げたデュエナだった。
気付いた超越者もそれを避けきれず、
身体の半分が消えて無くなる。
「少し遊びが過ぎたかな」
超越者が距離を取って身体を修復する。
『リンリ、無事だったか』
『うん、ギリギリのところをカレカさんが助けてくれて。
それでも結構危なくて、気を失ってたんだ。
生きてる巫女達はカレカさんとゼンゼさんが、
少しずつ救出してる』
2重適合出来る巫女達も生きていたようで、
少しだけ希望が持てる。
『二人で出来るか分からないが、
出来るだけあいつの相手をしよう』
『うん』
そう言いながらも、
アミアは二人なら負ける気がしなかった。
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(早く何とかしないと巫女が)
エリエは寄ってくる悪魔をアイシンを覚醒させて倒すが、
その数は多く、減っているとは思えない。
魔導機を1機でも失ったら負け、
という制約があるので打って出る事も出来ず、
もどかしい。
『エリエ、あなたは左翼へ行って』
そんな中、同じくクオンを覚醒させている、
大巫女のナナが言う。
『ここはあたし達が何とかします』
『みんなの事を頼む』
巫女のメグリとアミンもそれに続く。
『この数を3人では厳しいのでは』
『わたくしも本気を出します』
ナナはエリエを心配させない為か、
秘めたる力である光の鏡を作り出す。
鏡は扇状に光を放射し、照らされた悪魔達を浄化した。
『今です、行きなさい、エリエ』
『分かりました。
みんなを助けてきます』
エリエは振り返らずに飛び出す。
(ミルミ様、みんなに加護を)
エリエは祈りながら左翼へと向かった。
左翼ではアミアとリンリが超越者と戦っていた。
しかし、リグムもデュエナも満身創痍だ。
「小細工が過ぎるな。
先に絶望を感じろ」
超越者が手を上げると、
リグムとデュエナの少し後方の地面が吹き飛んだ。
そして窪んだ地面の下に十数機の神装が現れる。
「やめろ」
リグムが突進するが、
その前に衝撃波が神装の方へ飛ぶ。
(守らないと!)
エリエは後先考えず、降下し、
神装達の前でアイシンの手を広げた。
防御魔法を展開するが、
それを凌ぐ威力がアイシンを襲う。
アイシンの前面は溶けて無くなった。
『エリエ!』
『大丈夫、早く逃げて』
『駄目だ、この中に裏切り者がいる。
このままじゃこちらの手を読まれる』
カレカが訴える。
なるほど、ならば、
とエリエは考えた。
『アミア、リンリ、しばらくお願い』
『任せとけ』
『頑張るよ』
リグムとデュエナは再び超越者へと向かっていく。
アイシンは宙に浮かぶと、
光の弓矢を構え、巫女達の神装へと矢を放った。
突然の事で更に混乱する巫女達。
だが、その攻撃によるダメージは無かった。
『裏切り者はトクハとミズルです』
エリエの目にはこちらの動きを察知し、
矢を放つ前に動いた2機が見えていた。
『どうして・・・』
ゼンゼが疑問を口にする。
即座にカレカがトクハの神装を、
ゼンゼがミズルの神装を捕らえる。
『我ら巫女は超越者様に従うもの。
私とトクハは選ばれたのです』
『勝てる訳ないじゃないですか。
エリエだって分かってるんでしょ?』
ミズルとトクハがそれぞれ答えた。
『カレカ、ゼンゼ、後は頼みます』
『『了解しました』』
そして2体の神装は破壊された。
『お待たせしました。
さっさと片付けましょう』
『手強いぞ』
『エリエちゃんがいれば、
百人力だよ』
3体の覚醒した鎧が超越者を囲む。
「3人ともボロボロじゃないか。
そろそろ諦めたらどうだ?
どっちにしたって、もうすぐ仲間達が死ぬんだぞ」
「その前にあなたを倒します。
わたくしには与えられた勅命があります」
エリエは心にミルミを抱き、超越者へと突進した。
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『このままじゃ数に押される。
神聖騎士団とも力を合わせ、攻撃を凌ぎきりる。
いいな?』
『分かった。
やるぞ、お前ら』
『『おー!』』
タンタの言葉に邪教団の隊長ビンサと、
部隊の者が応える。
『分かりました』
ニギニも了解の意を伝える。
右翼で教団戦闘部隊と共に戦っていたニギニだが、
その大型妖魔の量に圧倒され、
近くにいる敵を倒すのに精一杯だった。
だから、聖教団側と一緒になり、
ユーカやムイルと合流出来る事で少し安心していた。
『みなさん、神聖鎧2、不死鎧2の組み合わせで、
1体の妖魔に当たって下さい』
早速ユーカが指示を飛ばし、
近くにいた者同士での組み合わせの情報を送ってくる。
『ニギニ、行こうぜ』
『はい』
ムイルと他に各教団から一人ずつの組み合わせになり、
ニギニは目前のヒュドラに突撃する。
ムイルはガルンのハンマーでヒュドラを怯ませ、
その間にベリンと他の2体で首を落としていく。
各教団の人もこの戦いで徐々に慣れたようで、
敵の攻撃を避け、的確に攻撃出来るようになっていた。
ユーカの指示が良かったのか、
徐々に周りの妖魔が減っていく。
そんな中ニギニは、
前方で悪魔と戦っているトリリト達のいる地面に、
何か違和感を覚えた。
影のようなものが移動したように感じたのだ。
『ユーカ、双子が戦ってる辺りの地面に違和感が。
何か分かりますか?』
『気になりますね。
タンタさん、ここは任せても大丈夫ですか?』
『ああ、大分落ち着いてきた。
向こうに何かあるとマズイ、行ってくれ』
『はい』
ユーカのオルトスが離れていく。
そしてニギニは他の妖魔と戦っていると、
右側で戦っている鎧の下に同じような違和感を覚えた。
(伝えなきゃ)
『ちょっと離れます』
ニギニは他の3人に告げてベリンを右側へ走らせる。
『地面に気を付けて!』
とにかく近付いて、
そこにいた鎧の搭乗者に念話で伝える。
『え?』
言っているうちに地面が波打つ。
(どうしよう)
伝えはしたが、ニギニはどうすればいいか分からない。
『離れろ!!』
そんなベリンの横を猛スピードで鎧が追い抜いていく。
ムイルのガルンだ。
ガルンはスピードを緩めず波打つ地面の上に移動し、
ハンマーでそこにいた数体の鎧をその外へ吹き飛ばす。
『ムイル!』
ニギニが叫んだ瞬間、地面が大きく口を開けた。
ガルンは飛び上がろうとするが、
舌のようなものに絡まれ、
そのまま下へと引きずり込まれる。
そして無慈悲にその口は閉じられた。
残ったのはガルンの上半分だけだった。
『どうして!!』
ニギニは叫びながら槍を地面に突き刺す。
同様に他の鎧も地面を攻撃すると、
その妖魔は姿を現し、溶けていった。
『俺は適合者じゃないだろ。
ニギニが俺の分も頑張ってくれれば、
その方がいい・・・』
ムイルが最後の力で喋る。
『そんな。
わたしなんて何にも出来ないよ!』
しかしムイルはもう答えてくれない。
『ニギニ、気持ちを切り替えろ!!』
タンタから檄が飛ぶ。
『はい!』
ニギニは泣くのは後だと心に決め、
再び妖魔へと突撃を始めた。




