12.巨神大戦①
平原に砂煙が巻き起こる。
巨神の前に展開する敵軍はこちらの動きを察知し、
左側の機械武者の軍勢と右側の悪魔妖魔の軍勢は、
それぞれ前進を始めた。
左翼はリンリのデュエナを先頭に、
2重適合で鎧を交換したカレカのサンライと、
ゼンゼのニチゴウの神装が続き、
その背後に巫女達の神装の部隊が広がる。
右翼はクルク王女が乗るヴァールとシルシのギルーンが先頭で、
そのすぐ後に指揮官であるタンタのドーク、
そして双子が2重適合して、トリリトがルークスで、
トルルトがアルーニで続いている。
その背後に左から神聖騎士団、王国騎士団、
教団戦闘部隊と広がっていた。
アミアは左翼と右翼の中心の位置で前進し、
戦場の全貌をなるべく捉えようとする。
背後の後方部隊は動かず待機している。
「では、一番槍はわしがやらせてもらうぞ」
ドドは龍神の姿に変化し、
右翼の部隊の上を追い越して飛ぶ。
飛行型の大型妖魔がそれを見て飛び出した。
「燃え尽きよ」
ドドは空中から悪魔、妖魔の集団の中央に向かい、
紅蓮の炎を吐き出す。
その威力は凄まじく、大型妖魔はもちろん、
まともに喰らった悪魔さえ消し炭となった。
空中にいた大型妖魔も地面へと落下していく。
まさしく敵の真ん中に大きな穴が空いた形だ。
そのままドドは焼き尽くした大地に降り、
なんとか生き残った悪魔を掃討しようとする。
「なんだ?」
地上に降りたドドが違和感を感じ叫ぶ。
するとドドの周りに光の網が張り巡らされる。
ドドが動こうともがくが、身動き取れないようだ。
「わしが魔法を破れぬだと?」
その様子を見ていた右翼の部隊に動揺が走る。
『ドドが魔法の網のような物で捕まった。
誰か分かる奴はいるか?』
『あれは失われた魔法の呪縛だと思う。
魔導機で少し時間を貰えれば解除出来るかと』
ラーラから緊急の念話が届く。
水晶で見えているのだろう。
『どれ位近寄れば出来る?』
『100メートル位の距離なら出来る。
後方部隊の移動の許可を』
『後方部隊に敵襲だ。
妖魔だけだが、すぐには動けない』
テルテからも念話が届く。
相手もこちらの配置を理解しているのかもしれない。
『ある程度数は減らせたが、
ドドがいないのは厳しい。
あたしが右翼に入るから、
後方部隊は敵を倒したら警戒しつつ前進を』
『了解です』
妖魔を倒しつつエリエが応える。
『リンリ、中央を少し離れる。
左翼の方を頼んだ』
『分かった、気を付けて』
リンリの言葉を聞きつつ、
アミアは右翼に合流しようと動き出した。
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『右翼の方でトラブルが起きてます。
左翼はなるべく早く敵を撃破し、
右翼の援護に向かえるよう頑張りましょう』
『『了解です』』
リンリはこういう立場は似合わないな、
と思いつつも、任された仕事を頑張ろうと思う。
少しだけ話した巫女の子達もみんないい人で、
その点はリンリも気張らずにいられる。
(こっちにも罠があるかもしれない。
気を付けないと)
リンリはまだ覚醒は使わない方がいいと考え、
素の状態で機械武者の軍勢にぶつかった。
敵は指揮官を後ろの方に置いているようで、
最初に当たるのは一般兵ばかりだ。
乱戦では切れ味のいい武器の方が使い勝手がよく、
リンリは敵から奪った刀で機械武者を切り裂いていく。
(凄いなあ)
横を見ると2重適合したサンライとニチゴウが、
薙刀で敵を薙ぎ払っていた。
2人の息は合い、敵の軍勢は崩れていく。
この調子なら難無く倒せるかも。
という気持ちも、すぐに間違いだと気付く事になる。
『何か飛んできます。
皆さん気を付けて!』
サンライに乗ったカレカが部隊に念話を飛ばす。
リンリも複数の何かが飛んでくるのに気付き、
身構える。
『はっ!』
最前線にいたサンライが飛んできた丸い物体を、
薙刀で一刀両断した。
「パーーンッ!!」
瞬間、破裂音が響き、閃光が走る。
サンライの頭部や胸の装甲は溶け、
薙刀も上半分が消失していた。
『魔法兵器!
みんな攻撃せず避けて!!』
見ていたゼンゼが叫び、
リンリも反応してそれを避ける。
周りでは破裂音が響き、
そこにいた敵もろとも破壊されていく。
『これを止めないとまともに戦闘出来ない。
私が行ってきます』
リンリの反応は早かった。
巫女の神装に大きく被害が出た時点で負けだ。
任された以上自分で何とかしないといけない。
デュエナは覚醒し、大空へと飛び出す。
(あそこか!)
玉を射出している4機の機械武者を見つけた。
同型機は他に無く、それさえ止めれば終わる筈。
リンリは目に見えぬような速さで降下、
4機を瞬時に破壊したのだった。
『魔法兵器は破壊しました。
破損した人は後退して、
大丈夫な人は進軍して下さい』
『ありがとうございます』
リンリの素早い行動に巫女達の安堵が伝わった。
※「その刀、貴方がトワの国を乱した張本人ですね」
デュエナの前に意匠が豪華な機械武者が現れた。
指揮官が乗る新型機だろう。
※「私は大将の一人、タカム・オイレンと申します。
世界の平和の為、貴方を討たせてもらいます」
※「なんで悪魔と手を組んでるんですか?」
リンリは疑問に思っていた事を、
東の国の言葉で聞いてみる。
※「彼らはこの国に潜んでいる膿を出し、
正しい国に導いてくれると約束して下さいました。
そして私こそ、この国を率いるのに相応しいと」
悪魔か黒幕の甘言に踊らされているのだろう。
もう会話する意味は無い。
※「行きます」
そう言ってデュエナを動かそうと思った時、
既に敵の姿は無かった。
(後ろ?)
そしてデュエナの腹に深々と傷跡が出来ている。
機械武者は背後に移動していた。
※「神速を極めた私に敵はおりません」
覚醒したデュエナにとって大した傷では無いが、
それでもその状態のデュエナを切り裂くのは、
凄まじい技量だった。
(落ち着いて)
リンリは目を閉じ、神経を研ぎ澄ます。
『そこ!!』
風がそよぐような感触を感じ、
その方向に刀を振り下ろす。
目を開けると敵の機械武者が縦に割れていた。
※「なんで・・・」
それが敵の指揮官の最後の言葉だった。
指揮官を失った機械武者の部隊は乱れていく。
『指揮官を討ち取りました。
一気に片付けましょう』
リンリの言葉に巫女達の士気も上がった。
新型機だろうが、1対1では神装には敵わない。
そして巫女達の二人一組の連携は素晴らしかった。
カレカのサンライも修復が終わり再び参戦している。
リンリも力を温存する為、覚醒を解いて、
優勢な戦いに加わるのだった。
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『機械武者の指揮官を倒しました。
左翼側はもう少しで片付きそうです』
『了解した、
右翼は押されてるので終わったら援護を頼む』
アミアはケルベロスを斬り倒しながらリンリに返す。
ドドを封じられた右翼側は劣勢を強いられていた。
2重適合のクルク、シルシ、トリリト、トルルトは、
悪魔を抑えるのに忙しい。
クルクは大将という立場と、
王女というしがらみに縛られ、
4人で一番能力は上だが無茶が出来ずにいる。
トリリトとトルルトは防衛戦が多かったので、
来た悪魔を潰す、という動作になってしまい、
徐々に押されてしまう。
そんな中、ギルーンで大きな刀を振るうシルシは、
まさに一騎当千の活躍をしていた。
『シルシ、あんまり無理をするなよ』
『・・・うん、大丈夫』
アミアは悪魔を抑える為に覚醒しようか迷ったが、
シルシのおかげでまだ能力を温存出来ている。
だからこそシルシが無理をして倒れてしまったら、
ここが崩れると心配していた。
『アミアさん、神聖騎士団は押され気味です、
このままだと敵が後方部隊に流れてしまいます』
『こっちも限界だ、助けが欲しい』
神聖騎士団のキマキと、
教団戦闘部隊のビンサから念話が来る。
やはりここまで大量の大型妖魔と戦った事が無く、
敵の勢いに飲まれているのだろう。
『ユーカとニギニは神聖騎士団に、
タンタとムイルは教団戦闘部隊に援護に入ってくれ。
両部隊は王国騎士団の声をよく聞いて動くように。
中央の妖魔はあたしが何とかする』
『『了解です』』
正直アミアも厳しいが、どちらかの部隊が崩壊したら、
巨神攻略が出来なくなる。
候補生達は大型妖魔に対しての実戦経験が他より上であり、
そのフォローも任せられるだろう。
『寄ってきた妖魔は排除出来ました。
無理の無い速度でドドさんの方へ移動します』
『頼んだ』
エリエからも念話が来る。
ドドさえ解放出来れば右翼も持ち直せる。
ここが踏ん張りどころだ。
アミアのハルバードは妖魔を切り裂き続けた。
『アミアさん、こちらに悪魔が出ました。
誰か回せませんか?』
ユーカから念話が届く。
『あたしが行く。
代わりに騎士団を連れて中央付近の妖魔を頼む』
『分かりましたわ』
こうなったら躊躇は出来ない。
アミアはリグムを覚醒し、
近くの敵を倒してからユーカ達の方へ急行する。
数体の悪魔が現れており、
既に神聖鎧が2体壊されていた。
『はっ!』
ギリギリの遠距離から魔法で悪魔を怯ませる。
そして近付いて1体ずつ対処していく。
『ありがとうございます』
神聖騎士団の騎士達は礼を言いながら離れていく。
『アミア、前方も厳しいです。
片付いたらお願い出来ますか』
『了解した』
クルクから念話が飛び、アミアは周りの妖魔を倒してから、
そちらへ向かう。
『アミアちゃん、こっちは終わりそう、
すぐに向かうね』
『頼むぞ』
リンリの声が聞こえ、少しだけ何とかなりそうな気になる。
前方ではシルシのギルーンが狙われるように囲まれ、
次から次へと妖魔と悪魔が襲いかかっていた。
クルクのヴァールも他の悪魔が邪魔をしてそちらに向かえず、
双子も後方の部隊に悪魔が行くのを抑えるので手一杯だ。
『一旦離れろ』
シルシのギルーンの所にリグムで降り立ち、
一部を薙ぎ倒して道を作ってやる。
『・・・うん』
ギルーンが離れるのを横目に、
アミアは悪魔と妖魔を次から次へと倒していく。
さすがに覚醒した鎧は2重適合とは大きく違うので、
敵も怯んでいる。
アミアはなるべく悪魔を狙って攻撃を行い、
その数を減らす事に専念した。
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『これで最後です』
カレカが残っていた最後の新型の機械武者を倒す。
数は多かったものの、手強かったのは指揮官機と、
魔法兵器を使う敵だけで、後は力押しで倒せた。
巫女自体の能力も高かったので、
魔法兵器で中破した神装が2体いただけで、
他に大きなダメージは無かった。
『それじゃあ右翼に向かいましょう。
え?生存者?』
リンリはデュエナのセンサーに反応が出たので振り返る。
見ると、先ほどリンリが倒した指揮官機から、
人が出てくるのが分かる。
(確か縦に真っ二つにしたよね)
そしてリンリの中で何かが閃いた。
『左翼に超越者です、
巫女は逃げて!!』
そう、リンリが念話で叫んだ瞬間、
2体の神装が真っ二つに切断されていた。
『え?どうして?』
それを見ていたゼンゼが呟く。
『裏切り者だ!
トクハとコロムが攻撃した』
巫女の誰かの声だ。
『違う、私じゃありません』
『私も違います、攻撃したのはミズルです』
近くにいた巫女達が混乱して叫んでいる。
攻撃されたのは巫女の神装だが、
それが誰にされたのか、
誰が言っている事が正しいのか分からない状態だ。
「それじゃあ、反撃を始めましょうか」
出てきた男が静かに言う。
男の影が装甲となり、全身を包み、
その姿が鎧と同じ大きさになった。
禍々しくも美しい姿だ。
『みんな飛べ!!』
アミアからの悲痛の叫びの念話を聞きながら、
リンリは超越者と思われる男の手が動くのを見ていた。




