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悪姫恋聖  作者: ねじるとやみ
第5部 巨神大戦
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12.巨神大戦①

平原に砂煙が巻き起こる。

巨神の前に展開する敵軍はこちらの動きを察知し、

左側の機械武者の軍勢と右側の悪魔妖魔の軍勢は、

それぞれ前進を始めた。


左翼はリンリのデュエナを先頭に、

2重適合で鎧を交換したカレカのサンライと、

ゼンゼのニチゴウの神装が続き、

その背後に巫女達の神装の部隊が広がる。


右翼はクルク王女が乗るヴァールとシルシのギルーンが先頭で、

そのすぐ後に指揮官であるタンタのドーク、

そして双子が2重適合して、トリリトがルークスで、

トルルトがアルーニで続いている。

その背後に左から神聖騎士団、王国騎士団、

教団戦闘部隊と広がっていた。


アミアは左翼と右翼の中心の位置で前進し、

戦場の全貌をなるべく捉えようとする。

背後の後方部隊は動かず待機している。


「では、一番槍はわしがやらせてもらうぞ」


ドドは龍神の姿に変化し、

右翼の部隊の上を追い越して飛ぶ。

飛行型の大型妖魔がそれを見て飛び出した。


「燃え尽きよ」


ドドは空中から悪魔、妖魔の集団の中央に向かい、

紅蓮の炎を吐き出す。

その威力は凄まじく、大型妖魔はもちろん、

まともに喰らった悪魔さえ消し炭となった。

空中にいた大型妖魔も地面へと落下していく。

まさしく敵の真ん中に大きな穴が空いた形だ。

そのままドドは焼き尽くした大地に降り、

なんとか生き残った悪魔を掃討しようとする。


「なんだ?」


地上に降りたドドが違和感を感じ叫ぶ。

するとドドの周りに光の網が張り巡らされる。

ドドが動こうともがくが、身動き取れないようだ。


「わしが魔法を破れぬだと?」


その様子を見ていた右翼の部隊に動揺が走る。


『ドドが魔法の網のような物で捕まった。

誰か分かる奴はいるか?』


『あれは失われた魔法の呪縛だと思う。

魔導機で少し時間を貰えれば解除出来るかと』


ラーラから緊急の念話が届く。

水晶で見えているのだろう。


『どれ位近寄れば出来る?』


『100メートル位の距離なら出来る。

後方部隊の移動の許可を』


『後方部隊に敵襲だ。

妖魔だけだが、すぐには動けない』


テルテからも念話が届く。

相手もこちらの配置を理解しているのかもしれない。


『ある程度数は減らせたが、

ドドがいないのは厳しい。

あたしが右翼に入るから、

後方部隊は敵を倒したら警戒しつつ前進を』


『了解です』


妖魔を倒しつつエリエが応える。


『リンリ、中央を少し離れる。

左翼の方を頼んだ』


『分かった、気を付けて』


リンリの言葉を聞きつつ、

アミアは右翼に合流しようと動き出した。


===========================================================================


『右翼の方でトラブルが起きてます。

左翼はなるべく早く敵を撃破し、

右翼の援護に向かえるよう頑張りましょう』


『『了解です』』


リンリはこういう立場は似合わないな、

と思いつつも、任された仕事を頑張ろうと思う。

少しだけ話した巫女の子達もみんないい人で、

その点はリンリも気張らずにいられる。


(こっちにも罠があるかもしれない。

気を付けないと)


リンリはまだ覚醒は使わない方がいいと考え、

素の状態で機械武者の軍勢にぶつかった。

敵は指揮官を後ろの方に置いているようで、

最初に当たるのは一般兵ばかりだ。

乱戦では切れ味のいい武器の方が使い勝手がよく、

リンリは敵から奪った刀で機械武者を切り裂いていく。


(凄いなあ)


横を見ると2重適合したサンライとニチゴウが、

薙刀で敵を薙ぎ払っていた。

2人の息は合い、敵の軍勢は崩れていく。

この調子なら難無く倒せるかも。

という気持ちも、すぐに間違いだと気付く事になる。


『何か飛んできます。

皆さん気を付けて!』


サンライに乗ったカレカが部隊に念話を飛ばす。

リンリも複数の何かが飛んでくるのに気付き、

身構える。


『はっ!』


最前線にいたサンライが飛んできた丸い物体を、

薙刀で一刀両断した。


「パーーンッ!!」


瞬間、破裂音が響き、閃光が走る。

サンライの頭部や胸の装甲は溶け、

薙刀も上半分が消失していた。


『魔法兵器!

みんな攻撃せず避けて!!』


見ていたゼンゼが叫び、

リンリも反応してそれを避ける。

周りでは破裂音が響き、

そこにいた敵もろとも破壊されていく。


『これを止めないとまともに戦闘出来ない。

私が行ってきます』


リンリの反応は早かった。

巫女の神装に大きく被害が出た時点で負けだ。

任された以上自分で何とかしないといけない。

デュエナは覚醒し、大空へと飛び出す。


(あそこか!)


玉を射出している4機の機械武者を見つけた。

同型機は他に無く、それさえ止めれば終わる筈。

リンリは目に見えぬような速さで降下、

4機を瞬時に破壊したのだった。


『魔法兵器は破壊しました。

破損した人は後退して、

大丈夫な人は進軍して下さい』


『ありがとうございます』


リンリの素早い行動に巫女達の安堵が伝わった。


※「その刀、貴方がトワの国を乱した張本人ですね」


デュエナの前に意匠が豪華な機械武者が現れた。

指揮官が乗る新型機だろう。


※「私は大将の一人、タカム・オイレンと申します。

世界の平和の為、貴方を討たせてもらいます」


※「なんで悪魔と手を組んでるんですか?」


リンリは疑問に思っていた事を、

東の国の言葉で聞いてみる。


※「彼らはこの国に潜んでいる膿を出し、

正しい国に導いてくれると約束して下さいました。

そして私こそ、この国を率いるのに相応しいと」


悪魔か黒幕の甘言に踊らされているのだろう。

もう会話する意味は無い。


※「行きます」


そう言ってデュエナを動かそうと思った時、

既に敵の姿は無かった。


(後ろ?)


そしてデュエナの腹に深々と傷跡が出来ている。

機械武者は背後に移動していた。


※「神速を極めた私に敵はおりません」


覚醒したデュエナにとって大した傷では無いが、

それでもその状態のデュエナを切り裂くのは、

凄まじい技量だった。


(落ち着いて)


リンリは目を閉じ、神経を研ぎ澄ます。


『そこ!!』


風がそよぐような感触を感じ、

その方向に刀を振り下ろす。

目を開けると敵の機械武者が縦に割れていた。


※「なんで・・・」


それが敵の指揮官の最後の言葉だった。

指揮官を失った機械武者の部隊は乱れていく。


『指揮官を討ち取りました。

一気に片付けましょう』


リンリの言葉に巫女達の士気も上がった。

新型機だろうが、1対1では神装には敵わない。

そして巫女達の二人一組の連携は素晴らしかった。

カレカのサンライも修復が終わり再び参戦している。

リンリも力を温存する為、覚醒を解いて、

優勢な戦いに加わるのだった。


===========================================================================


『機械武者の指揮官を倒しました。

左翼側はもう少しで片付きそうです』


『了解した、

右翼は押されてるので終わったら援護を頼む』


アミアはケルベロスを斬り倒しながらリンリに返す。

ドドを封じられた右翼側は劣勢を強いられていた。

2重適合のクルク、シルシ、トリリト、トルルトは、

悪魔を抑えるのに忙しい。

クルクは大将という立場と、

王女というしがらみに縛られ、

4人で一番能力は上だが無茶が出来ずにいる。

トリリトとトルルトは防衛戦が多かったので、

来た悪魔を潰す、という動作になってしまい、

徐々に押されてしまう。

そんな中、ギルーンで大きな刀を振るうシルシは、

まさに一騎当千の活躍をしていた。


『シルシ、あんまり無理をするなよ』


『・・・うん、大丈夫』


アミアは悪魔を抑える為に覚醒しようか迷ったが、

シルシのおかげでまだ能力を温存出来ている。

だからこそシルシが無理をして倒れてしまったら、

ここが崩れると心配していた。


『アミアさん、神聖騎士団は押され気味です、

このままだと敵が後方部隊に流れてしまいます』


『こっちも限界だ、助けが欲しい』


神聖騎士団のキマキと、

教団戦闘部隊のビンサから念話が来る。

やはりここまで大量の大型妖魔と戦った事が無く、

敵の勢いに飲まれているのだろう。


『ユーカとニギニは神聖騎士団に、

タンタとムイルは教団戦闘部隊に援護に入ってくれ。

両部隊は王国騎士団の声をよく聞いて動くように。

中央の妖魔はあたしが何とかする』


『『了解です』』


正直アミアも厳しいが、どちらかの部隊が崩壊したら、

巨神攻略が出来なくなる。

候補生達は大型妖魔に対しての実戦経験が他より上であり、

そのフォローも任せられるだろう。


『寄ってきた妖魔は排除出来ました。

無理の無い速度でドドさんの方へ移動します』


『頼んだ』


エリエからも念話が来る。

ドドさえ解放出来れば右翼も持ち直せる。

ここが踏ん張りどころだ。

アミアのハルバードは妖魔を切り裂き続けた。



『アミアさん、こちらに悪魔が出ました。

誰か回せませんか?』


ユーカから念話が届く。


『あたしが行く。

代わりに騎士団を連れて中央付近の妖魔を頼む』


『分かりましたわ』


こうなったら躊躇は出来ない。

アミアはリグムを覚醒し、

近くの敵を倒してからユーカ達の方へ急行する。

数体の悪魔が現れており、

既に神聖鎧が2体壊されていた。


『はっ!』


ギリギリの遠距離から魔法で悪魔を怯ませる。

そして近付いて1体ずつ対処していく。


『ありがとうございます』


神聖騎士団の騎士達は礼を言いながら離れていく。


『アミア、前方も厳しいです。

片付いたらお願い出来ますか』


『了解した』


クルクから念話が飛び、アミアは周りの妖魔を倒してから、

そちらへ向かう。


『アミアちゃん、こっちは終わりそう、

すぐに向かうね』


『頼むぞ』


リンリの声が聞こえ、少しだけ何とかなりそうな気になる。

前方ではシルシのギルーンが狙われるように囲まれ、

次から次へと妖魔と悪魔が襲いかかっていた。

クルクのヴァールも他の悪魔が邪魔をしてそちらに向かえず、

双子も後方の部隊に悪魔が行くのを抑えるので手一杯だ。


『一旦離れろ』


シルシのギルーンの所にリグムで降り立ち、

一部を薙ぎ倒して道を作ってやる。


『・・・うん』


ギルーンが離れるのを横目に、

アミアは悪魔と妖魔を次から次へと倒していく。

さすがに覚醒した鎧は2重適合とは大きく違うので、

敵も怯んでいる。

アミアはなるべく悪魔を狙って攻撃を行い、

その数を減らす事に専念した。


===========================================================================


『これで最後です』


カレカが残っていた最後の新型の機械武者を倒す。

数は多かったものの、手強かったのは指揮官機と、

魔法兵器を使う敵だけで、後は力押しで倒せた。

巫女自体の能力も高かったので、

魔法兵器で中破した神装が2体いただけで、

他に大きなダメージは無かった。


『それじゃあ右翼に向かいましょう。

え?生存者?』


リンリはデュエナのセンサーに反応が出たので振り返る。

見ると、先ほどリンリが倒した指揮官機から、

人が出てくるのが分かる。


(確か縦に真っ二つにしたよね)


そしてリンリの中で何かが閃いた。


『左翼に超越者です、

巫女は逃げて!!』


そう、リンリが念話で叫んだ瞬間、

2体の神装が真っ二つに切断されていた。


『え?どうして?』


それを見ていたゼンゼが呟く。


『裏切り者だ!

トクハとコロムが攻撃した』


巫女の誰かの声だ。


『違う、私じゃありません』


『私も違います、攻撃したのはミズルです』


近くにいた巫女達が混乱して叫んでいる。

攻撃されたのは巫女の神装だが、

それが誰にされたのか、

誰が言っている事が正しいのか分からない状態だ。


「それじゃあ、反撃を始めましょうか」


出てきた男が静かに言う。

男の影が装甲となり、全身を包み、

その姿が鎧と同じ大きさになった。

禍々しくも美しい姿だ。


『みんな飛べ!!』


アミアからの悲痛の叫びの念話を聞きながら、

リンリは超越者と思われる男の手が動くのを見ていた。

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