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悪姫恋聖  作者: ねじるとやみ
第5部 巨神大戦
61/82

11.開戦

王都に帰ってきた日の翌朝、

アミアは昨晩の会議はうまくいったものの、

いざ寝ようとしても眠れず、睡眠不足だった。


(リグムに乗ればいいんだけど、

もうすぐ会議の時間だしな)


同化する事で体調は整えられるが、

時間的余裕も無いので、諦めて応接室に向かう。

何より問題は自分の気持ちの方だと分かっている。

応接室には既に半分ぐらい人が集まっており、

リンリも先に入っていた。

いつも通りリンリの隣に座る。


「アミアちゃんおはよう」


「おはよう」


リンリに特に変わった様子は無い。

アミアも仕事モードに切り替えているので、

思ったより動揺は無かった。


やがて前日と同じように人が集まった。

席の並びはほぼ前日と同じなのだが、

今回は追加で参加している人がいる。

夜の打ち合わせの結果、2重適合出来る人は、

作戦で重要な役割になるので、

この会議に出てもらう事になったのだ。

候補生からはシルシと双子の3名、

巫女からは4名参加してもらう事になった。


「皆さんおはようございます。

作戦会議を始める前に、追加で参加してもらう方に、

自己紹介をしてもらおうと思います」


クルクの挨拶で、自己紹介が始まり、

巫女はそれぞれ、メグリ・オウコウ、

アミン・サクハ、カレカ・トドウ、

ゼンゼ・ヨイムと名乗った。

メグリとアミン、カレカとゼンゼがペアで、

メグリとアミンはアミアが捕らえられた時、

神装に乗っていた二人だった。


「昨日軽く説明を受けたと思いますが、

彼女達は鎧で2重適合が行えるので、

今回の戦いで重要な存在になります。

なお、私も2重適合で戦います。

他にナナ様、エリエ様、アミア、リンリは、

鎧で覚醒が行える、更に重要な存在です。

その事を覚えておいて下さい」


クルクは主に二つの教団の代表に向けて言った。

情報自体は昨日個別でタンタに伝えて貰っている。

代表者二人はリンリの強さを見ているので、

その意味は理解しているだろう。


「それでは作戦会議を始めます。

今回の戦いでは私クルク・デクスビアが、

大将を引き受けたいと考えております。

異論のある方はおりますでしょうか?」


昨夜の時点で王国側の面々で進め方を話してあり、

その順にクルクは進めていく。

クルクの言葉に対して反論は無い。


「ありがとうございます。

作戦についての話は、アミアが致します。

アミア、皆さまに説明をお願いします」


アミアは覚悟はしていたが、

ここからはアミアの責任になる部分もある。

アミアは気合を入れて話始める。


「はい。

あたしの口調について見苦しい所があると思うが、

そこは我慢して欲しい。

まずは城に集まった戦力を説明する。

王国騎士団は神聖鎧6機、不死鎧4機の計10機。

神聖騎士団は神聖鎧13機。

デュガール教団戦闘部隊は不死鎧13機。

トワの国の巫女は神装30機。

魔術師の魔導機10機。

あとは龍神であるドド、

テルテの機械武者が1機参加する。

合わせてドドを除いて77機の大部隊になる。

王都には他にも機械武者があるが、

王都防衛に残すので、今回の戦いには参加しない」


アミアが説明し、テルテが机の上に、

用意した所属別の簡単な模型を乗せる。


「次に現在の敵の戦力だ。

目的の巨神の他に敵がいた場合、

その排除は必要になる。

魔術師ドゼビムより魔法の道具を借りたので、

上空からだが、敵の様子を見る事が出来た。

ラーラ、出してくれ」


昨晩ラーラと事前に打ち合わせをして、

ドゼビムの水晶を巨神の位置に固定してあり、

それを魔法で全員が見れるように拡大してもらう。


「これは・・・」


大巫女ナナがその状況を見て声を出す。

巨神がちょうど東の国の村の上を通った後だからだ。

村は無残に踏み潰され、

その反動で周りの土地も大きく破壊されていた。

そして、驚くべきはその周囲だ。

巨神からはある程度距離を取っているが、

巨神の右前辺りに東の国の物と思われる機械武者の軍勢、

左前には悪魔と大型妖魔の群れ。

その数は以前アミア達を待ち伏せていた物より多い。

さすがに集まった者達はその状況に恐怖する。


「巨神は朝に4歩、夜に4歩、

12時間おきに決まった歩数進んでいる。

見えている軍隊もそれに合わせて進んでいる」


この情報はラーラが移動中に確認してくれた事だ。

テルテとラーラが敵の情報をまとめてくれていたので、

アミアはこのタイミングで情報を出す事が出来た。


「これをあたいらで全部倒すのか?」


邪教団の隊長ビンサが無理と感じて声に出す。


「無理に全滅させる必要は無いが、

巨神を無力化させる際に、

邪魔されると作戦は失敗になる。

だから、出来れば全滅させたいと思っている」


アミアは悪魔は一旦逃げても邪魔してくるだろうし、

妖魔も命令されているなら逃げ出さない可能性が高い。

結局全滅させる必要があると思っていた。


「先に巨神を倒す為の手順を説明しておく。

巨神を倒すには3つのプロセスが必要になる。

一つ目は巨神を傷付け、修復状態にする事。

これは巨神の足の関節部を集中攻撃すれば、

自重でバランスを崩し、数時間の修復状態に出来る。

これにはまず龍神ドドの圧倒的な攻撃力が欠かせない。

後は攻撃力の高い覚醒した鎧、2重適合の鎧が加われば、

可能だという事だ」


アミアはドドに聞いた、

過去に海底に沈めた際のやり方を説明する。


「二つ目は巨神を魔法で空中に固定する事。

これはどの系統の魔法でも出来るが、

魔術師は三つ目で必要になるので、

神聖鎧、不死鎧、神装の力を合わせて行う。

神力が残っている鎧が40機あれば可能なので、

その数を残すように戦闘を行う必要がある」


機械武者と魔導機を除くと66機で、

更に2重適合以上出来る機体を除いて54機。

2割以上損害が出た場合、危険という計算だ。


「三つ目は巨神をテレポートで海底に送る事。

今回魔導機の力でテレポートと更に封印が出来るそうだ。

ただし魔導機が揃っている事、

魔術師の魔力がほぼ残っている事が必要なので、

それを守れるかどうかが重要になってくる。

一つ目の修復状態と二つ目の空中への固定は、

あの巨大な物体を途中で抵抗されずに、

テレポートさせる為に必要な順序だそうだ」


詳しい理由は知らないが、

ラーラもこのやり方で出来るだろうと言っている。


「で、3つのプロセスを踏まえて、

巨神の周りの敵を倒す事を考える必要がある。

最初に戦闘に参加出来ない機体を取り除く。

魔導機はテレポートに必須で、

戦闘には参加出来ない。

と同時に、伏兵や奇襲の時に魔導機を守る必要がある。

この役目は単騎でも強力な機体である、

ナナさんのクオンとエリエのアイシンにお願いしたい。

ただ、2機だけだと完全にカバー出来ないので、

追加で2機、2重適合出来る神装を守りに加える。

これはメグリさん、アミンさんでいいですか?」


「はい、その二人なら十分に役目を果たせるでしょう」


ナナが答え、該当の二人も頷く。

正直覚醒が使える二人を護衛に置くのはどうかと思ったが、

代わりが効かない重要な部分で、

自分達が敵ならここを狙うだろうと、

重点に置く事にしたのだ。


「また、後方からの敵に備えて、

テルテのシウンには背後を見張って貰い、

ラーラには水晶で伏兵の動きを警戒して貰いたい」


アミアは言いながら周りから同意を得る。


「次に左翼、機械武者の軍勢と戦う部隊を決める。

巫女の神装は二つ目の魔法の工程をお願いするが、

神力を温存しても戦闘では活躍出来ると思う。

なので、相手を理解していて、

比較的容易に倒せるだろう、

右側の機械武者の部隊と戦って欲しい。

ただ、新型機は強力な機体もいると思うので、

リンリのデュエナを加え、

2重適合が使えるカレカさん、

ゼンゼさんの3人に主力として戦ってもらう」


本来デュエナは超越者が現れた時の為に、

力を温存しておきたいと思った。

だが、4人の強力な神装は魔術師の護衛に付けたので、

残りの巫女だけでは不安もあり、

左側の部隊を任せる事になった。

邪教団や聖教団との共闘よりはリンリが戦い易い、

という意図も無い訳ではない。


「最後に右翼の部隊を決める。

巨神の左側は悪魔や大型妖魔など、

危険な敵が多い。

特に悪魔は2重適合前の鎧で戦うのは難しい。

ただ、大型妖魔とは各教団も戦ってきたし、

王国騎士団も戦い慣れてきている。

ドドには一つ目の行程で力を発揮してもらうが、

悪魔の相手は体力を温存しつつ出来るそうだ。

なので強力な悪魔の相手はなるべくドドに振り、

2重適合出来るクルク王女、シルシ、

トリリトとトルルトは、

そこから漏れた悪魔の相手をする。

王国騎士団と聖騎士団、教団戦闘部隊は、

神力をなるべく温存しつつ、

各自協力して大型妖魔の各個撃破をお願いする。

あたしのリグムは中間地点で全体を見回し、

強力な敵が出た場所に援護に回る。

いかがだろうか?」


テルテが机の上に決まった部隊毎に模型を並べ、

更に敵を表す模型を置いて、

おおよその位置関係を表した。

恐らく犠牲が出る作戦だろう。

ただ、巨神を倒す為の力を残し、

かつ敵を排除する為には、

全員が協力して戦う他に無い。


「途中で作戦が失敗した場合、

撤退となるのでしょうか?」


神聖騎士団の代表であるキマキが発言する。


「途中で失敗しても、

出来る限りその場で代案か、

次の策を考えるつもりだ。

それでもどうしようもないと判断した場合、

撤退命令が王女から出るだろう」


アミアは建前を述べる。

実際、撤退はありえない。

失敗は王国の敗北であり、

東西関係無く、滅亡の第一歩になるだろう。

ここまで戦力が揃う事が、

今後あるか分からないのだから。


「さて、ここまでは全て、

現在把握している敵の戦力と、

多少の伏兵を考えての作戦になっている。

“超越者”が敵として現れた時の対応は含まれていない。

超越者は龍神ドドに匹敵する、

悪魔より格段に強い存在だ。

もし現れた場合、絶対に戦おうとしない事、

防御に専念して繭を守るように逃げる事。

神聖鎧は秘奥義で身を守り、

不死鎧は魔法で身を隠すなど、

この時は力を惜しまないで欲しい。

超越者については正直対策出来ていない。

ドドに抑え込んでもらう事は可能だが、

そうすると巨神戦で力が使えなくなる可能性が高いそうだ。

だから、出現した場合、覚醒を使える者、

あたしとリンリ、エリエ、ナナ様が力を合わせ、

撃破を試みようと思う。

正直可能性は低いが、

ドドが言うには不可能ではないそうだ」


昨日の晩の会議で、一番問題になった点だった。

現在の作戦で予備の戦力としているのは、

アミアのリグムのみで、

それも全体を見つつ、遊ばせる訳ではない。

そこに超越者が加わり、

覚醒出来る4人を取られると、

他のどこかが危険になる可能性が高い。

ドドがいる右翼が一番手堅いが、

左翼は巫女次第、

魔導機の護衛が特に危なくなる。

超越者がいるなら黒幕だろうし、

そうそう戦いには出てこないだろう、

とは言われているが、

超越者だからこそ動きが読めない。

ミルミは傍観者を決め込むと言っていて、

前回の待ち伏せの時のように戦う事は無いだろう。


「全員が全員、

巨神を倒すのに欠かせない戦力だ。

自分の身を守り、仲間の身も守る。

特に力のある者は周りに気を配り、

手薄になったところをフォローして欲しい。

とりあえず現状決まった作戦は以上だ。

何か意見等あれば、遠慮なく言ってくれ」


その後、少しだけ足りない知識を補ったり、

不安な点や指揮系統を話し合った。

左翼の指揮官はリンリが行い、

右翼はタンタが指揮官、後衛はエリエが指揮官で、

総指揮がアミア、大将がクルクとなる。

左翼のリンリは気になるが、

巫女自体が統率取れているので、

アミアが少しフォローすれば大丈夫だろう。


念話でのやり取りは全機体、ドドも含めて可能で、

超越者が出たなどの緊急の報告は全体に、

それ以外の報告は仲間の部隊と指揮官に流し、

そこから総指揮官のアミア、

クルクに重要な情報が流れるようになっている。

それとは別にアミア、リンリ、テルテ、エリエの4人は、

4人の中でのみの連絡を行い、

気付いた情報を互いに把握出来るよう考えていた。


「戦闘の予定地点は、東の国との国境付近の平地、

明日の昼に戦闘になる予定だ。

今日の昼前に出発するので、

それまでに準備をしておいて欲しい。

代表者はそれぞれメンバーに周知し、

その時点で問題点などが出たら、

あたしかリンリ、テルテ、

エリエの誰かに伝えてくれ。

それでは王女、最後にお言葉を」


「みなさん、戦いは激しいものになると思います。

それでも力を合わせれば成功すると信じております。

この作戦が成功すればバラバラだった人々が、

今一度協力し合う世界の切っ掛けになります。

こうして違う考えだった人々が、

ここに集まっている事自体が奇跡なのです。

その事を胸に頑張りましょう」


クルクの言葉で会議は終わる。

それぞれの格納庫へ出発の準備へと向かった。



『今回は城に残らせてもらうぞ。

まあ、戦いの様子は魔法で見てるがな』


出発の前、

アミアがいつもの4人で最終確認をしていると、

ミルミが姿を出して宣言した。


『ミルミ様、寂しくないでしょうか?

わたくしは残っては駄目ですかね?』


エリエが冗談か分からない事を言う。


『お主は重要な立場じゃろうに。

ふざけてないで行ってこい。

まあ、うまく行ったら褒めてやる』


『本当ですか。

一晩添い寝してもらってもいいですか?』


『調子に乗るでない。

まあアミアもリンリもテルテも頑張ってこい』


珍しくミルミが応援してくれた。


『ああ、頑張ってみるよ』


『ミルミちゃんありがとうね』


『生きて帰れるよう努力するよ』


3人が応えるとミルミはルミルに戻り、

消えていった。


「ミルミ様のご期待に副えるように頑張りましょう!」


エリエの気合が入ったのはいい事だな、

とアミアは思う。

また、ミルミが城に残る事で、

悪魔等が城に奇襲した場合、

撃破してくれる可能性が気休め程度だが出てきた。

今回の作戦でほぼ全戦力を使う事への躊躇いが、

少しだけ軽減された気分だった。



巨神へ向けての進軍が始まった。

移動は鎧で、そこそこの速度で行う。

ドドもこの人数は乗せられないので、

体力温存の為と鎧サイズに変わった。

王国騎士団が先頭を行き、

次に神聖騎士団、魔術師達、

教団戦闘部隊、巫女達が一番後方だ。


休憩は夜に中間地点で一度行った。

アミアはそこでシルシ達2重適合を始めたばかりの、

候補生の訓練を行う。

付け焼刃ではあるが、

悪魔相手ならシルシも双子達も大丈夫だろう、

というところまでは何とかなった。


そして、翌日の昼、太陽が高く昇る平原で、

互いの軍勢は睨み合った。

巨神は大きな影を作り、

その巨大さは山のようで、見る者を圧倒する。

本当にあんなものを動かせるのかとアミアは感じた。

朝に大きな振動を伴って移動しており、

巨神は夜まで動かないだろう。

ラーラの水晶と各鎧のセンサーで見ても、

現状、目前の敵以外の伏兵はいない。


『左翼、準備出来ました』


『右翼も大丈夫だ』


左翼のリンリ、右翼のクルクから念話が届く。


『後方部隊、守りは万全です』


『背後に敵影は無い』


エリエとテルテからも念話が届き、

準備が完了した事が分かる。


『クルク王女、開戦の合図を』


『みなさん、ここが正念場です。

この戦いに人類の未来がかかっています。

決して命を粗末にせず、全力で戦いましょう。

左翼、右翼、戦闘開始!』


「「おおーーーー!!!!」」


巨神大戦の幕が上がった。

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