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悪姫恋聖  作者: ねじるとやみ
第4部 真実
43/82

5.初陣

※が付いてるセリフは東の国の言葉を表しています。

※「なんでワシがこんな辺境の地まで行かねばならんのか」


旅立ってから数度目になる愚痴を男はこぼす。

豪華な東の国特有の服から見える筋肉は、

中年の男の顔に似つかず逞しい。

男は2機の機械武者に担がれた屋根付きの駕籠に乗り、

絶対防衛ラインの外の荒野をネオンテの町へ向かって走っていた。


※「クロマ様直々のご指名です。

サザ様のお力で一気に取り戻して欲しいと」


駕籠と並走する機械武者の中から、副官が宥めようとする。


※「コマルの馬鹿が油断するからこんな事になったのだ。

騎士団の残党を取り逃すとは愚かにも程があるわ」


※「しかし、裏切った巫女も加わったと聞きます。

油断は出来ません」


※「ワシの部隊は騎士団の残りや巫女など恐れんわ。

まあ、少しは骨のある相手がいるといいがな」


そう言ってサザと呼ばれた男は大笑いする。

周りには数十機もの機械武者が付いてきていた。


===========================================================================


「60機?」


テルテの驚いた声が応接室に響く。

町の緊急の鐘を聞いて、アミア達3人+1匹とエリエ、

ディルイと6人の候補生、

そして町長と偵察から帰った男と防衛部隊の隊長が集まっている。


「はい、丘の上で確認しましたが、全部で60機です。

あのペースでそのまま進めば30分後位には町に到着するかと」


偵察から帰った男が言う。

前回町を襲ったのが30機なので、

倍の数であり、殆どの者が驚いていた。


「急いで対策を立てる必要がある。

しかし、町にはそういった事が出来る者が残っておらん。

すまんがアミアさん、お願い出来ますでしょうか」


町長に振られ、アミアは困惑する。

しかし、そういった策が立てられそうなのは、

アミア以外だとエリエのみで、

エリエの案にはまだ反対する者が多いだろう。


「分かった。

まずは敵の詳細な戦力と、

町で戦える機械武者の数を教えてくれ」


「敵の戦力ですが、見た感じ重鎧が33、軽鎧が27で、

重鎧の1機は他の武者が運んでいた豪華な武者で、

おそらく指揮官用の特別機かと」


「町の機械武者は12機で、重鎧5、軽鎧7です。

テルテさんが直していた鎧はどうですか?」


「ああ、まだ動かないから戦闘は無理だな。

だから、うちも今回は見張りや連絡役になる」


機械武者の隊長の男に聞かれてテルテが答える。

あとは候補生の6機と自分達の2機、エリエの1機で、

合わせても21機、単純な戦力比だと1/3だ。


「町の北側は森があって視認性は低いが、

進軍自体はし辛い、でいいんだな。

あと、機械武者の一般兵用は魔法耐性が無いと」


アミアは地図を広げながら確認する。


「以前にアミア様が戦った機械武者で、

魔法耐性があるのは紫の機体、忍型しのびがただけです。

近年製造された機械武者は、

魔法耐性やレーダー機能が追加されましたが、

一般的に普及している機械武者の殆どにはありません。

敵の部隊が60機だとそのうち10機か、それより少し多い、

ぐらいだと思います」


エリエの言う事は完全には信じられないが、

今はある程度事実として進めないと対策は立てられない。

魔法に弱い、というのは大きなアドバンテージだ。


「少しだけ考えさせてくれ」


アミアは迫りくる時間の中、最善策を模索する。

敵が来る前に3機で討って出る、

というのもありだが、強敵が3機以上いた場合、

殆どの敵がすり抜けて町へ辿り着いてしまう。

それでは町と候補生を捨てて逃げるのと変わらない。


また、この戦いは候補生に戦闘を体験させる、

いい機会とも考えられる。

いきなり大型の妖魔とかと戦うよりは、

複数の機械武者と戦う方が生存率は高く、

訓練の延長での戦闘にもなる。


町の被害を気にしなければ町に鎧を配置し、

各個撃破させるのが一番楽なのだが、

今の状況ではそれを良しとしないだろう。

アミアの勘では絶対に敵は戦力を分けて攻めてくる。

敵の方が数が多いのだ、それをしない理由は無い。

敵を町へ近付けず、

どこから来るか分からない大量の敵を警戒し、

候補生達を生き残らせる。

それには・・・。


数分後、アミアの中で作戦が纏まった。


「一応案は考えた。

問題がありそうな点は指摘してくれ。

特にエリエ、機械武者に一番詳しいのがあんただ。

見落としているところが無いか良く聞いて欲しい」


「分かりました」


そして、アミアが大まかな対応策を述べ、

それに対して周りでいくつか案を出し合い、

15分ぐらいで対応策は決定した。


「最終確認だ。

デュエナとアイシンの2体が町の東側、

正面から来ると予想する敵の本体に対して討って出る。

町の東側の壁に5体の機械武者を配置し、

2体が討ち漏らした敵を協力して倒す。

この5体は特に腕の立つので頼む」


アミアの声に機械武者の隊長が頷く。


「次に裏門の西側だが、リグムは主に西側付近に待機して、

巡回しながら敵の別動隊を見つける。

西の裏門前にはアルーニとルークスの2体、

それに機械武者2体で守りを固める」


アミアは双子の方を見て、双子は頷く。


「残りは南と北側。

敵が攻めて来そうな南側は、

オルトスとヴァールで見張ってもらう。

敵を発見したら手を出さず連絡するように。

最後が森のある北側で、ガルンとベリンに守ってもらう。

森の移動はセンサーが反応するので、

見つけたらすぐに報告してくれ」


アミアの言葉に自分の鎧を呼ばれた少女が頷く。

ただ、ベリンの搭乗者のニギニは怯えた顔を隠さない。


「町長とテルテは町の中で待機してくれ。

テルテは念話で連絡が取れるから、

敵の増援で手が足りなくなった時に、

町の中の5体の機械武者を援軍に出す連絡役をしてもらう。

門を開けずに町から外に出られるように、

壁の各所に機械武者が登れる段を作っておいてくれ」


完璧な作戦では無いが、今いる戦力を無駄なく配置し、

かつ、出来るだけ全員の生存率を高められただろう。


「それじゃあ各自配置についてくれ」


「「はい」」


各自、自分の機体へ走っていく中、

アミアはエリエを呼び止めた。


「本当はあたしが主力と戦いたいんだが、

候補生達を守るにはエリエに頼るしかなかった。

すまないが、リンリを守ってやって欲しい」


「いえ、東の国の問題はわたくしの問題でもあります。

それに元々アミア様もリンリ様も助けるつもりでした。

わたくしも全力で対応いたします」


「もし、無事にリンリを守ってくれたら、

あたしはエリエの事を信用しよう」


「ふふ、アミア様は本当にお優しいんですね」


エリエに言われてアミアは少し照れてしまう。

しかし、今出来る事を全力でするしかアミアには出来ない。


「頼んだぞ」


アミアはリグムへと走り出した。


===========================================================================


「デュエナ起動」


リンリはデュエナを起動させ、正門へと移動を始める。


(アミアちゃんは本当に大変だな。

私ももう少し真面目に勉強しておくんだったなあ)


リンリは移動しながら考える。

町の防衛戦などの経験はあり、

教団での講習もあったのだが、

どうしてもリンリは頭に入らず、

ただ指示された場所を守ったりする事しか出来なかった。

もちろん町や人を守りたいとは思ったけど、

どうするのが効率的か、町の被害が少なくなるか、

など同時に考えながら行動するなんて無理だと思ったのだ。


『リンリ様、今回はよろしくお願いいたします』


いつの間にかアイシンが横に並んでおり、

エリエが念話で話しかけてきた。


『様付けはちょっと嫌かなあ。

もう仲良しなんだし、呼び捨てでもいいよ』


『ではリンリさん、で』


『うん、エリエちゃん』


2日間でエリエとは大分打ち解けたとリンリは感じている。

自分よりは真面目だけど、たまに抜けてるところもあり、

エリエとは仲良くなれそうだった。


「開門します」


町民が正門を開け、デュエナとアイシンが町の外に出る。

まだ敵の反応はセンサー内に入っていない。

門の横の機械武者は敵味方の判別が出来るように、

両肩を白く塗り、さらに味方である事が分かる、

発信機が取り付けられ、センサー上も味方で表示される。

ここの騎士団で使っていた物だと聞いていた。


外には街道があり、その左右にまばらに草が生えている。

妖魔の反応も無く、午後を周って外はいい天気だった。

デュエナは聖槍と盾を装備し、聖剣は背中に付ける。

アイシンは薙刀を装備していた。


『もし、大巫女様が攻めてきたら、

エリエちゃんは敵に寝返るの?』


エリエとの個人的な念話でリンリは質問した。

自分は教団を裏切り、何があろうと戻る事は無いだろう。

しかしエリエが同じかどうかが気になったのだ。


『わたくしは予言に従います。

大巫女様の予言で、リンリさん達に付いて行くのが、

わたくしの今の道です。

もし大巫女様が敵として現れたなら、

それもまた大巫女様の意志、

全力で戦う事になるでしょう』


エリエの答えはリンリの想いとは違うが、

確固たるものだと思えた。

彼女がそこまで信じられる何かがあるのだろう。


『リンリさん、敵です。

気を引き締めましょう』


『こっちの配置は完了した。

予定の場所まで敵が近付いたら攻撃を開始してくれ』


『了解です』


アミアからも念話があり、リンリは全体の念話で回答する。

余計な事は忘れて、今は戦いに集中しよう。

せっかくいろんな子と知り合えたんだ、

それを失いたくはない。


『行くよ』


『はい』


予定の場所まで敵の主力が入ったので、

デュエナとアイシンは敵へと走りだした。



『敵の数30、全体の半分です』


『分かった、二人で町まで近付けないようにしてくれ』


『了解です』


接近した事で主力と思われる部隊の全体像が見える。

横に6機ずつ並んだ隊列で、5列あり、全部で30機だ。

機械武者の重鎧と軽鎧をバランスよく配置しているようで、

最初の1列は槍を持った軽鎧でまとまっている。


『エリエちゃんは右側を』


『はい』


まずは魔法の射程まで近付く。

魔法で一般兵の機械武者をどれだけ行動不能に出来るかが、

最初の勝負どころだ。


『雷撃』


左3体の軽鎧に雷撃の魔法を当てる。

3体の動きは止まり、倒れた。

中の兵士は死んだか、気絶してすぐには動けない筈だ。


『邪念滅消!』


エリエも魔法を唱えると、3体の相手が倒れていく。

気絶か束縛系の魔法だろう。

続く重鎧6体も同じ魔法で倒せたが、

魔法に気付いた敵は横に展開し、

纏めて魔法を食らわないように対処する。

ここからが本番だ。


『閃光を使います』


『はい、タイミング合わせます』


『閃光!』


デュエナ自身を光らせ、周りの敵の目晦ましをする。

アイシンは速度上昇の魔法を使い、

近くの敵から次々と薙刀で斬り払う。

デュエナもそれに続き、敵へと突っ込んでいく。

まずはうまく行ったとリンリは感じていた。


===========================================================================


『初陣だ。

緊迫感は持った方がいいが、緊張は解いておけ。

あと、町を守ろうという気持ちは持たなくていい。

建物は壊れても直せるが、お前達の替えは無いからな』


アミアは訓練生達に念話で伝える。

本当は町の人も気に掛けなくていいと言いたいところだが、

この町で暮らしてきた彼女達には余計な言葉だろう。


『『了解です』』


一通り返事を聞くが、

トリリトとニギニは緊張しているように聞こえる。

初陣の死亡率は他の戦闘より高い。

ただ、臆病な方が倒されやすいかというと、

そうでも無く、自信があったり、

調子に乗ったりするとそこを狙われる。

アミアが気になるのは特にムイルだった。

重装甲なのを過剰に信用すると致命打を受ける。


『ニギニ』


『はい』


『ムイルが単独行動しないようによく見張ってくれ』


『え、は、はい』


『さすがに俺だって最初からそんな危ない事しないよ』


ムイルが非難の声を上げるが無視する。

これで多少は抑えられただろう。


『全員ペアである事を忘れるな。

特に今回は無理して敵を追ったり、

トドメを刺す必要は無い。

お互い離れず、必ず二人で1体を仕留めるようにしろ』


『『はい』』


時間があれば、そのペアのちょうどいい距離、

攻撃のリズム感が分かったのだが、

今回は最低限の部分しか見れていない。

ただ、鎧は2体一緒なら大抵の事は防げる。

町に被害が出ても全員生き残ってくれれば、

アミアとしては勝利だと思った。


『主力を半分まで減らしました。

逃した武者も町の方で対応出来てます』


『よし!』


リンリからの報告はいい感じだ。

で、そろそろ敵が動くだろう。

リグムは町の南西辺りへ移動する。

すると、センサーに敵を確認した。


『南西に敵の部隊を発見した。

数は、20。

ユーカとシルシは付いてこい。

双子は町の南西の位置で抜けてきた敵を倒せ。

ムイルとニギニは現状維持。

あと、テルテ』


『なんだ?』


テルテは念話を受信出来る魔法の道具で反応する。


『まだ10体ほど残りがいる。

多分北か西から来る。

すまないが北西の位置で見張ってくれ』


『了解した』


そしてリグムを先頭に、

後ろからオルトスとヴァールが付いてくる。

双子の赤青の鎧もきちんと南西で待機していた。


『初陣ですわ。

シルシ、頑張りましょう』


『・・・うん』


おそらく二人の気合は入っている。


『まずは魔法で倒すか足止めしろ。

そこを抜けてきた敵は、ユーカが隙を作り、

シルシがトドメを刺せ』


『『了解』』


敵影が見えると、軽鎧主体の機動力重視の部隊と分かる。

隊列というより、スピード優先で、

先頭の数体が前の紫色の鎧と同型、

エリエが言う忍型に見えた。


『動きが速い奴は魔法が効かない。

あたしがそいつらは出来るだけ倒すから、

他の奴らを狙え』


『はい!』


そう言いながらアミアは獣化の魔法を唱え、

武器をハルバードから円形の刃の剣に持ち変える。

そして先頭の1機とぶつかる。

相手は素早く短剣を振り下ろすが、

それを左手の剣で弾き、すかさず右手の剣で攻撃する。

刃は軽鎧に刺さり、敵は動かなくなった。

まずは1体。


横では槍を持った軽鎧に対して、

シルシが精神衝撃の魔法をかけ、倒していた。

また、1体の忍型に対して、

ユーカが地面を変動させ、動きを封じている。

あの二人なら大丈夫そうだ。


アミアは2体目の忍型に組み合うが、

その横を1体の忍型が抜け出していく。

ユーカ達も他の敵の対処をしていて、

食い止められそうにない。


『双子の方に1機速いのが行った。

魔法は効かないから、何とか倒してくれ』


『任せて!』


『分かりました』


アミアは双子を気にしつつ、

組んでいた忍型を斬り払い、

横にいた槍を持つ武者を魔法で倒す。


双子は盾で忍型の鎧の攻撃を防御、

交互に攻撃を繰り出すが、素早い為に当たらない。

が、姉のアルーニが爆発の魔法で隙を作り、

妹のルークスが何とか槍で敵を仕留めた。

この二人も敵が数体行ったとしても大丈夫そうだ。


あとは残りの敵がどこから出てくるか。

アミアは不安を感じつつ戦っていた。

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