6.ネオンテ防衛戦
※が付いてるセリフは東の国の言葉を表しています。
有利かと思っていたリンリ達だったが、
それは途中から逆転していた。
魔法が効かない敵が5機ほどいて、
リンリが隊長機と思われる重鎧1機と忍型1機、
エリエが重鎧2機と忍型1機と組み合い、
さらにその周りに援護する数機の武者が残っていた。
敵はバラバラになって町へ抜けて行こうとはせず、
この場で2機を確実に始末しようとしている。
『エリエちゃん大丈夫?』
『ええ、何とか』
2機の距離も少し離れ、お互いに援護は出来ない。
アミアも敵と接触しており、
町の防衛もあるので援軍を呼ぶわけにも行かない。
「キンッ」
盾で忍型の飛び道具を弾くと、
逆方向から隊長機の刀が振り下ろされる。
それをギリギリで避けて、反撃をしたいのだが、
別の敵が割って入り、攻撃は当てられない。
エリエから聞いたこの刀という武器は、
特に切断に優れており、
達人が使えばどんな物でも斬り落とせるという。
実際攻撃を避け損ねたデュエナの肩は綺麗に切断されていた。
盾を失いたくないので、
盾で受けるのはいざという時だけにしたい。
エリエのアイシンも徐々に敵の数は減らせているが、
肝心の魔法が効かない機械武者は腕が立つようで、
敵に致命打は与えられていない。
なのでアイシンの武器も薙刀から刀に切り替え、
確実にダメージを与えようとしているみたいだ。
デュエナの奥義を使えば確実に倒せるだろうが、
敵の伏兵はまだいるので、
ここで使い切るのはマズイ気がした。
『邪魔な敵を消します。
リンリさん、魔法防御を』
『分かった』
エリエに言われて、リンリは魔法防御力向上の魔法をかける。
エリエもこの状態から抜け出そうと考えていたのだろう。
『浄化の雷光!』
アイシンを中心に稲妻が広がっていく。
デュエナにも衝撃が来るが、
魔法のおかげでダメージは最小限に食い止められた。
そして、敵は怯み、隙が出来る。
『そこ!』
リンリは邪魔だった忍型に槍を突き刺す。
これでリンリ側で残ったのは隊長機だけになった。
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(早く終わらないかな)
ニギニは周りの情報を念話で聞きつつ、
自分の所には敵が出ずに終わる事を待っていた。
『ちぇっ、ここはハズレだったかあ』
ムイルはニギニに念話で愚痴ってくる。
『みんな一生懸命戦ってるんだし、
そんな事言っちゃ駄目だよ』
『だからこそ役に立ちたいじゃん。
ようやく鎧に乗って戦えるようになったんだからさ』
ニギニはそんな考え方の出来るムイルが羨ましい。
2つも年下なのに鎧の操縦はムイルの方が巧く、
魔法だってムイルの方が素早く唱えられる。
だからニギニは人一倍隠れて練習したのだが、
それでも他のみんなに付いて行くのがやっとだった。
こんな自分だから戦う事が避けられるなら、
それに越した事は無い。
『おい、なんか聞こえないか?』
ムイルに言われて耳を澄ますと、
確かになんかザワザワした音が森の方から聞こえる。
センサーにまだ反応は無いが、
ニギニは嫌な予感がして、
探索の魔法を森の先へとかけた。
『森から敵です!
凄いスピードでこっちに来てます!』
そう念話で伝えてる間にもセンサーに敵が捉えられる。
『10体はいる!
おい、倒しに行っていいのか?』
『駄目だ、そこで敵を迎撃しろ。
テルテ、町の中の鎧を全部西へ回せ!』
『了解した』
アミアはすぐに念話で反応し、
テルテもそれに応えた。
『リンリ、こっちはまだ時間がかかる、
そっちは援護に行けそうか?』
『私もエリエちゃんもまだ本命が残ってる。
すぐには行けないよ』
『分かった。
ニギニ。
とにかくムイルと離れるな!
守りを固めて、隙があれば1体ずつ仕留めろ。
なるべく早くそっちへ向かう』
『わ、分かりました』
ニギニは何とか応える。
アミアの言葉で自分達が危険な状態なのが分かった。
『ムイルちゃん、離れちゃ駄目だからね』
『分かったよ、ここで倒せばいいんだろ』
この状況でもムイルの強気は変わらない。
段々と音が近付いてくる。
その音は刀で大木を薙ぎ払い、
突進で踏み潰して進んでくる音だった。
木々が倒され、現れたのは10体の強そうな重鎧。
特に1体は豪華な武者で、ニギニにも指揮官だと分かる。
※「2体だけか。
やれ!」
指揮官に言われて5体の機械武者がニギニ達の方へと突進してくる。
『踏ん張るぞ!』
ムイルのガルンはハンマーを構え、敵を待つ。
ニギニもベリンの盾を構え、ランスで迎え撃つ準備をする。
『おりゃあああ』
接触直前、ガルンはハンマーを振り回し、
重鎧達はそれを避ける為に散開した。
ベリンもランスのリーチで、
突っ込んできた1機の重鎧に打ち込んだが、
その攻撃は分かり易く、避けられてしまう。
と、ガルンの背後から1体の重鎧が刀を振り下ろそうとしていた。
『危ない!』
ニギニはとにかく必死で、
何とかベリンの体当たりを重鎧に食らわせた。
『ありがとっ!』
気付いたガルンがハンマーでよろけた重鎧を粉砕した。
「ガンッ!」
直後、ガルンの右肩アーマーが吹き飛んだ。
他の1体の重鎧は隙を見てガルンに打ち込んでいたのだ。
そしてもう1体ガルンに攻撃しようとしているのが、
ニギニに見える。
『左!』
何とか言葉を出して、ムイルもそれに気付く。
ハンマーで刀を反らし、なんとかなったが、
4機の敵は2機を取り囲んでいる。
どう見ても時間の問題だった。
『わたしがパートナーじゃなければ良かったのにね』
『急になんだよ』
ニギニは死を覚悟してか愚痴をこぼしていた。
『せめてムイルちゃんだけでも生き残って欲しかった』
『まだ諦めんじゃないよ。
ほら』
「行くぞ!!」
町の方から声がし、
複数の機械武者が町の石壁の上から飛び降りてきた。
援軍が間に合ったのだ。
これを警戒し、2機を囲んでいた包囲網が解かれる。
※「ようやくか。
ワシらも行くぞ!」
※「おおー!!」
しかし、見物していた敵の指揮官達も動き出す。
敵は残り9体。
しかしニギニ達は援軍を含めても7体で、
援軍は一般の重鎧と軽鎧だ。
不利には変わらない。
『ボーっとするな!』
ガルンがベリンを攻撃してきた重鎧の刀を弾く。
ニギニはハッとして、そこにランスで追撃するが、
攻撃は避けられてしまう。
『みんなを守るんだろ』
『うん』
ムイルに励まされてニギニは少しだけ勇気が出る。
何とかベリンが相手を引き付け、ガルンが1体を倒した。
しかし、周りでは次々と仲間の機械武者が倒されていく。
※「うーん、歯応えがないな。
少しは楽しませてみろ」
ガルンとベリンの目の前に指揮官の重鎧が立っていた。
その手には他の物とは違う、
4,5メートルはある巨大な刀が握られている。
ニギニは蛇に睨まれた蛙のように立ちすくんでしまう。
『このーーーー!』
ムイルは勇気を振り絞ってガルンを走らせる。
しかし、その動きは直線的過ぎる。
『危ない!』
ニギニには叫ぶ事しか出来なかった。
しかし、その叫びはムイルの集中力を引き上げ、
指揮官機の怒涛の攻撃に気付く事が出来た。
咄嗟にハンマーで防御姿勢を取るガルンだが、
指揮官機の攻撃の勢いは凄まじく、
両断こそされなかったが、町の壁まで吹き飛ばされてしまった。
壁に叩きつけられたガルンはそのまま動かない。
『うそ・・・』
そしてその脅威はベリンへと向く。
終わりだ。
そうニギニが思った時、横から女性の声がした。
「ニギニ、逃げて!!!!」
軽鎧が横から指揮官機に体当たりをした。
しかし、指揮官機は不動で、
左手で軽鎧を受け止める。
※「鬱陶しい」
ニギニが叫ぶ暇も無く、
その軽鎧は両断された。
「ディルイさん・・・」
無残に殺された女性の名を呼ぶ。
自分のせいだ。
自分が弱いから。
何も出来ないから。
でも、でも。
「うぁあああ!」
ニギニは何も考えられなくなった。
ただ近くにいた敵に突撃する。
驚いた重鎧の1体は気付いた時には串刺しになっていた。
そして、周りに恐怖は伝播し、敵は及び腰になる。
1体を除いては。
※「うるさいな。
狂戦士など求めてないんだが」
そして、一閃、ベリンの盾は左手ごと吹き飛び、
ベリンは地面に倒れ、その動きは止められた。
『うぅ』
ニギニはただその強大な敵を見上げるしかなかった。
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『リンリさん、すみません』
『何?』
お互い敵との接戦の中、エリエは念話で声をかけた。
アミアとの約束でリンリを守ろうと思っていた。
ただ、自分の中の巫女の力が告げる。
エリエの力を求めている者がいる、と。
『北の方が危ないみたいです。
わたくしの全速力なら間に合います。
ここをお任せしてもいいでしょうか?』
無茶を言っているのは分かっている。
まだ手強い敵が3機も残っている。
デュエナ1機では厳しいだろう。
『いいよ。
エリエちゃんなら、出来るんだよね?』
エリエは予想外に早い返答に驚く。
『はい。
終わったら戻ってきますので』
『大丈夫だよ。
そっちは任せたから』
『ありがとうございます』
エリエはリンリという少女が『強い』と感じた。
そして、今は自分が出来る事をしないと、と。
『アイシン、覚醒。
少しだけ力を貸して』
エリエは祈るように言う。
そしてエリエの心の中が溢れていく。
まだ鍛錬が足りていないのは分かっている。
でも、出来る事はやらないといけない。
アイシンの装甲の紅色が増していく。
装甲が広がり、背中には大きな翼のようなものが生える。
全身が輝き、その膨大な神力をリンリは感じた。
『綺麗・・・』
『それじゃあ行ってきます』
エリエは力を振り絞って、1撃、
残りの1体の重鎧に光を突き刺してから空へと舞った。
身体が引き千切られるように痛む。
まだ覚醒には早過ぎた。
でも、なんとか意識を保ち、敵を見つける。
指揮官機がベリンへと迫っていた。
『やらせない』
なりふり構わない急降下で地面へと降りる。
その衝撃で指揮官機も、周りにいた重鎧も、
ニギニのベリンも吹き飛んだ。
※「出たな、巫女め。
裏切り者の首、頂くぞ」
指揮官機は素早く立ち上がり、
大きな刀を構える。
※「使命を忘れた愚か者達。
せめて巫女の手で葬りましょう」
いつの間にかアイシンには大きな弓が握られていた。
そして光の矢をつがえる。
※「はぁっ!」
矢が放たれる前に指揮官機が刀を振り下ろす。
しかし、そこにある筈のアイシンの姿は無かった。
アイシンは指揮官機の背後にいて、矢を放つ。
指揮官機に避けられる筈も無く、
矢が刺さると、光に包まれ、その鎧は消滅していく。
残ったのは大きな刀だけだった。
『ここまでですか・・・』
アイシンが跪き、その姿が元に戻る。
恐る恐る敵の鎧が近付くが、
エリエはもう動けなかった。
『間に合ったか?』
アミアの念話が聞こえる。
そこにはハルバードを構えたリグムが立っていた。
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※「私の名前はギンマ・ソガン。
あなたの名を聞いてもよろしいでしょうか?」
最後に残った隊長機は覚悟を決めたのか、
動きを止め突然名を名乗った。
エリエが去った後、
デュエナは残りの1体を槍を投げて何とか仕留め、
聖剣で対峙しているところだった。
※「私はリンリ・ケレッヅです。
すみませんが倒させてもらいます」
リンリは東の国の言葉で名を名乗った。
※「そうか。
ではリンリ殿、真剣勝負です」
隊長機は刀を上段に構える。
リンリは手強い敵だと思った。
でも、もっと強い敵と戦ってきた。
今は一人だけど、倒せないとは思えなかった。
奥義を使う必要性も感じない。
先に相手が動く。
機械武者の動きは速い。
特に刀の1撃は目で追えない。
でも、そのタイミングはこれまでの戦いで何となく分かった。
必死に避けるのではなく、
相手の動きに合わせて流れるように。
そして聖剣を横に振る。
隊長機は上下に分断された。
『リンリ、大丈夫か?』
ちょうどいいタイミングでアミアから念話が来る。
『うん、今終わったところ。
そっちは?』
『北側が片付いて、
南西側もユーカから全員残ったって念話が来た』
『エリエちゃんは大丈夫?』
『ああ、無理をしたみたいで気を失ってるが、
生命反応は正常だ』
『そう、よかった。
みんな頑張ったね』
『そうだな、お疲れ様』
アミアの優しい声に、リンリは心地よさを感じていた。
敵の機械武者は全機行動不能、または逃亡し、
ネオンテの町は何とか守られたのだった。




