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悪姫恋聖  作者: ねじるとやみ
第3部 未知の大地
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3.妖魔討伐

丸二日の移動でミアンナの村と妖魔の縄張り付近までやってきた。

薬は切れたものの、ミアンナの看病のおかげで、

テルテの容態は以前より安定している。

すでに日は暮れており、

妖魔がいない森の中に結界を張ってテルテを寝かせていた。


「あたしとリンリで妖魔に夜襲をかける。

ミアンナはすまないが結界の中でテルテを守っていてくれ」


ミアンナを完全には信用していない。

が、これまでの態度と行動で大それた事は出来ないと思った。

最悪の事態を考え、オーガを1体使役し、

結界の護衛と称して、ミアンナ自体の見張りとして残しておく。

リンリはミアンナを信用しているみたいなのでその事は黙っておいた。

ルミルがいる事もテルテに下手に手出し出来ない牽制にはなるな、

とアミアは初めてルミルの存在意義も少し感じていた。


「はい、任せてください。

皆様が戻ってくるまでテルテさんは絶対に守ります」


「お願いね、ミアンナちゃん」


そう言ってリグムとデュエナは敵の縄張りへと移動を開始した。


『大型妖魔が2体いるって言ってたけど私たちで出来るかな?』


『まずは戦力の確認だな。

リンリも大分強くなったし、悪魔がいなければ何とかなるとは思う』


アミアは考えつつ答える。


『そう言ってくれるのは嬉しいけど、

まだ完全に一人で大型妖魔は倒した事無いし、

出来れば二人で協力して戦いたいなあ』


『安全な方法は考えるけど大型2体だと、敵の構成次第としか』


そう念話でやり取りしているうちに妖魔の縄張りに大分近付いた。

元々はミアンナの村の家畜用の小屋があった場所で、

大異変後に家畜がいなくなって放棄された場所だったそうだ。

簡易な柵の名残があり、そこに数匹の見張りの妖魔と、

ボロボロの屋根の無い小屋の周辺に妖魔が寝ているのが分かる。

センサー上の反応を見つつ、闇夜に隠れて目視で敵を確認する。


『大型妖魔は巨人が2体か。

これが群れのボスだな。

あとはオーガが5体にオークが8体。

リザードマンが4体にゴブリンが10体ぐらいか。

中型以下は何とでもなるけど、巨人をどうするかだな』


喋りながらアミアは頭の中で戦い方を考える。


『巨人を1体ずつ誘導して倒してく、っていうのは?』


『うーん。

1体だけに魔法をかけられればそれも出来そうだけど、

他の妖魔が絶対に気付くし、そうするともう1体も起きてしまうな。

魔法がかからなかった時のリスクも大きいし、

罠とか大掛かりなものを気付かれずに作るのも難しそうだ。

やはり二人で1体ずつ相手して、先に倒した方が援護に入る、

というのが妥当な気がする』


リンリに話しながら頭の中を整理する。


『よし。

まずあたしが敵に突っ込んでいって、巨人2体を引き付ける。

その間にリンリは小型妖魔は無視して、

中型妖魔を片っ端から倒して欲しい。

ゴブリンは中型が倒されれば自然と逃げ出すからな。

で、中型妖魔が全部倒せたら、

巨人のところに来て、1体を引き付けてくれ。

リンリのやりたいようにやって、

倒せそうならそのまま倒してくれてもいいし、

時間がかかりそうならあたしがもう1体を倒してから援護に向かう。

どうしても危ない時は奥義を発動させてもいい。

これなら何とかなりそうだと思うけど、

リンリ、出来るか?』


本当は巨人2体を一人で相手したいところだが、

中型が残っている状態での乱戦では、

さすがにアミアも無理だと感じていた。

それに強くなっているリンリに自信を付けさせたい、

という思いもある。


『そうだね。

うん、やるよ。

聖剣の威力もあるし、少しは強くなったとは思うから。

だけど、危なくなったら助けて欲しいかな』


『それはもちろんだ』


『じゃあ大丈夫。

少しだけ準備するね』


リンリはデュエナの盾を背中に取り付け、

両手で聖剣を構える状態に変更する。

今のリンリの戦い方に合っているのがその持ち方なのだろう。


『あたしが先行する。

合図するから、そうしたら中型妖魔の駆逐を始めてくれ』


『了解です!』


リンリの返事を聞いて、アミアは飛び出した。


===========================================================================


(巨人かあ)


大型の相手をする事になるとはリンリも思っていたが、

それが一番嫌な思い出のある敵だとは思わなかった。


(アミアちゃんが言ってるんだから大丈夫だと思うけど、

1対1で私にちゃんと出来るのかな)


ケルベロスと戦う時は自分しかいなかったので必死だった。

が、今は二人で戦っている。

リンリの心は少しだけ揺らいでいた。


(ダメダメ!

私がしっかりしなくちゃアミアちゃんがまた危ない目に合っちゃう。

もう逃げてた私とは違うんだ。

悪魔とも戦ったし、大型妖魔も倒せた。

逆にアミアちゃんを驚かせるぐらい活躍しないと)


リンリは自分の中で気合を入れる。


『リンリ、巨人は引き寄せた。

中型の駆逐を始めてくれ』


『了解、すぐに行きます』


返事をしつつデュエナを全速力で走らせる。

ケルベロス戦以降大きな傷も無く、デュエナの状態は万全だ。

昔は手間取る事もあった中型妖魔も、

今は子供の相手をするぐらいに楽に対応出来る。


(まずはオークから!)


ツッコんでくるゴブリンは無視し、体当たりで掻き分けつつ、

後ろにいるオークを狙う。

剣を横に一振り!

2体のオークの身体を捕らえ、オークの頭が2個宙に浮く。

横にいたオークが木製のこん棒をこちらに振り下ろすが、

デュエナは剣の柄をこん棒に当て、

オークの体制を崩し、すぐに剣を身体に突き刺す。

敵はデュエナの動きに押され、攻めあぐねるようになった。

こうなればこちらのもので、

リンリは作業のように中型妖魔を処分していった。


最後に逃げ出したオーガに止めを刺し、

十数体いた中型妖魔の殆どはデュエナによって倒されていた。

戦いに巻き込まれて死んだゴブリンを除きゴブリンは逃げ出している。


『アミアちゃん、終わりました!』


『よし、今デュエナに近い方の青い巨人を頼む。

あたしは赤い巨人をなるべく早く始末する』


『はい!』


リグムを囲んでいた2体の巨人の方に移動し、

まずは背後から青い巨人の背中に1撃を加える。


「グァアア!」


青い巨人の背中から緑の血が噴き出る。

それなりにダメージは与えられたみたいだ。

巨人が振り返りこちらを睨む。

前に戦った巨人と違い単眼ではなく二つ目がある。

口には長いひげが生え、頭には2本の角が生えていた。

違う種類の巨人なのかもしれない。

手には石で出来た剣のようなものが握られている。

あれに当たればデュエナもただでは済まないだろう。


(よく考えて、っていうのは駄目か。

力を抜いて、思うままに)


リンリはデュエナの中で深呼吸する。

(実際に呼吸はしていないが、頭の中でそう動いている)

巨人とにらみ合うようにデュエナは対峙した。

リーチは敵の方が長い。

カウンターを食らえばただでは済まない。

だったら相手の動きを見てこちらが反撃すれば。


そんな事を思っているうちに巨人の剣が振り下ろされる。


(速い!

でも避けられる!)


デュエナは最低限の横の動きで剣を避ける。

巨人の剣は地面にめり込み、

振り下ろした巨人の手目掛けて剣を振り下ろした。

剣は巨人の腕を切り裂き、緑の血を吹き上がらせる。

怒りに任せて巨人が左手でデュエナに殴りかかる。

気配を感じたデュエナは後方にジャンプして、

剣を巨人から抜きつつ拳を空振りさせた。


(このまま!)


空振りした巨人はバランスを崩し、左手を地面に付く。

デュエナからは巨人のうなじが丸見えになり、

巨人はすぐには体勢を戻せそうにない。


(トドメ!!)


デュエナは駆け出して剣を巨人の首筋に振り下ろす。

全力の斬撃は巨人の首を骨ごと断ち切った。


『出来たじゃないか!』


その時アミアから声がかかり、

リンリはようやく我を取り戻す。


『あ、はい。

私、倒せたんですね』


あっという間の出来事でリンリは少し実感がなかった。


『ああ、あたしは赤い方にダメージ与えておいたから、

楽に片付いたけど、巨人と戦い始めてからなら、

リンリの方が早く倒したと思うぞ』


リグムの方を見ると、同じように赤い巨人の頭は無くなっていた。


『私夢中で。

でも、前みたいに怖くは無かったです』


『そうか。

やっぱり強くなったよ、リンリは』


『そうかな?

嬉しいです!』


そう言いつつ、リンリの心の中はどこかモヤモヤしていた。

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