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素人おっさん、第二の人生でサッカーライフを満喫する 作者:ハーーナ殿下@青森県弘前市
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第59話:入団テスト

 ドイツで住んでいる街のサッカースクールに、オレは入団テストを受けにきた。
 まずはクラブハウスにテストの申し込みにいく。

『コータ・ノロといいます。これが申し込み用紙と、ビザと紹介状です』

 クラブ内の事務所にいた受付の人に、申し込みをする。
 書類は父親にも確認してもらったので、大丈夫なはずだ。

 オレは事務所の椅子で待機する。

『珍しいな、日本人か。ん……随分と若いな? 12歳だと?』
『おい、待て……この紹介状の人の名前は……』
『まさか⁉ 事前に連絡があった、あの特別紹介選手か⁉』

 事務所の奥が、何やらザワザワしている。
 持ってきたゲードさんの招待状に、何か不備があったのであろうか?
 とても心配である。

『大丈夫だ、コータ・ノロ。そこのロッカールームで着替えて、練習場に行け。すぐに入団テストが始まる』
『はい、ありがとうございます!』

 よかった、不備はなかったらしい。
 招待状のお蔭で、入団テストは受けることが出来るのだ。

「よし、頑張ろう」

 オレはロッカールームで準備をして、指定された練習場に向かう。
 既に30人位の選手が集合していた。

 各自がボールで練習をしている。
 みんなバラバラの恰好をしているので、全員が受験生なのであろう。
 番号が書かれたビブスを着用している。

 ちなみにオレの番号は偶然にも14番。
 リベリーロ弘前ひろさき時代からの背番号で、縁起がいい。

(それにしても全員が大人っぽいな……)

 受験生を見て驚く。
 みんな身長が大きくて、とても同じ13歳には見えない。

 オレも中学生になって少しは身長が伸びた。さすがは外国の人はガタイが違うな。

(それに上手い人が多いな……)

 オレはアップをして身体を温めながら、周囲の人を観察していく。
 この時代のドイツ式のサッカーのイメージは“無駄を省いた効率的なプレイをする”である。

 こうして見るとテストを受ける人たちも、個人差はあるが基礎が上手い。
 パスやドリブルも堅実な人たちが多い。

(なるほど。イメージできたぞ)

 周囲を確認しながら、試合のイメージトレーニングもしていく。
 自分のプレイと、周りのドイツ人の動きを重ねていく。
 こうすることによって、テストの内容が練習試合になっても大丈夫なのだ。

(それに自分の身体も、いい感じだな)

 一方でオレの身体は、今日も調子は良さそうである。
 ドイツの天然芝の感覚もふかふかで、実に気持ちいい。
 これなら全力が出せそうだ。

『えー、それでは入団テストを始める。ミニゲームを何回かやってもらう。チームの勝敗も参考にする。では、はじめ!』

 試験官から説明がある。
 いよいよ、入団テストがスタートするのだ。

 なるほど。
 ミニゲームで各自の能力や適性を判断するのか。

 ミニゲームは日本でも毎日のように練習して、特異な分野である。
 これは本気を出して頑張らないと。

 オレはビブス番号を確認して、指定された最初のチームメイトと合流する。

『はじめまして! 日本から来て、この街に住んでいるコータ・ノロです! 皆さんよろしくお願いします!』

 チームメイトに元気よく挨拶をする。
 一人ずつ握手をして、交流を深めていく。

 ドイツの人は真面目で、規律と挨拶を重要視すると聞いていた。
 こうした混成のミニゲームでは、最初のイメージが肝心だ。

『よし、ミニゲームはじめ!』

 テスト試験官の合図で、入団テストがはじまる。

(よし、最初から全力でいこう!)

 せっかくゲードさんに紹介してもらったスクールである。
 面目を保つためにも、是非とも合格したい。

 幼少期から小学生6年生までの10年間。
 日本で培って技術の全てを、オレは出し切ることにした。



 入団テストのミニゲームが進んでいく。

(やっぱりヨーロッパの人は、みんな上手いな!)

 ミニゲームをしながら、改めてレベルの高さに驚く。
 日本の小学生年代とは違い、全体的にレベルが高い。

 体感的に2年前のU-15日本代表の練習よりも、レベルが高いのだ。

(でも……中学生になったオレなら!)

 2年前からオレは大きく成長していた。
 オレは更に全力を出し奮闘する。

(試験官は『チームの勝敗も参考にする』って言っていた。その意図を読み取らないと!)

 自分らしいプレイをするように、集中する。
 テストのミニゲームは、何度もチームがシャッフルされていく。

 守備的なメンバーが足りない時は、献身的に守備に回る。

 また攻撃のメンバーが足りない時は、積極的に攻撃に参加する。

 ゴールキーパーが誰もいない時は、オレも挑戦する。
 小学生の時に遊びでトレーニングしたのが、ここで役立ってくれた。

『22番、もっと上がって! 18番はもっと右に!』

 ミニゲーム中、オレは声を出して積極的に指示をしていく。
 どうせやるんだったら、自軍に勝って欲しい。

 身体は大きいけど、ここにいる全員は13歳以下の同年代である。
 遠慮する必要はない。

 これまで培ってきたコーチングン能力で、どんどんドイツ語で指示を出していく。

『あのチビ……命令ばかりしやがって……』
『だが、誰よりも合理的だ』
『そうだな。わかった、14番……いや、コータの指示に従え!』
『14番……コータにボールを集めろ!』

 最初はチームメイトたちも混乱していた。
 だが、どうやらオレの意思は伝わったようである。
 指示に従って上手く動いてくれた。

 国籍は違えども、サッカーのルールは同じ。
 意志を込めたボールに、チームメイトたちも応えてくれる。

 こうして海外でプレイすると、本当に実感する。
 やっぱりサッカーは世界共通の言語であり、最高に楽しいスポーツなのだ。



『よし、テスト終了だ。全員、集合しろ!』

 試験官の笛が鳴る。

 いつの間にか、かなり時間が経っていた。
 ミニゲーム形式の入団テストは終了したのである。

 楽しい時間だったので、あっという間だった。
 個人的な感想では、もっとみんなとミニゲームをやっていたかった。

 ドイツに来てからの初めてのミニゲーム。
 やっぱりサッカーは皆でプレイするのが楽しかったのだ。

『では、合格者を発表する。番号3……』

 試験官は合格者の番号を読み上げ始める。
 日本とは違い、この場でいきなり発表するのか。

 緊張してきた。
 もしも不合格だったらどうしよう。

 まあ、その時は、その時だ。
 この街の別のサッカースクールに、入団の申し込みにいけばいいか。

 でも、このクラブはかなり設備が整っている。
 ゲードさんの面目もあるので、出来ればここに合格したい。

『番号14!』

 おお。オレの番号が呼ばれた。
 ということは合格したのか。
 このスクールコースに入団することができるのかな?

『以上だ。落ちた者は解散だ。合格者はクラブハウスに来るように』

 合格発表が終わる。
 どうやら二次テストはないようだ。
 つまりオレは正式に合格できたのだ。

 落ちた人は暗い顔で去っていく中、オレはクラブハウスに向かう。

 ん?
 今回の合格者は4人だけ?

 30数人いて、4人しか受からなかったのか。
 スクールコースにしては、随分と厳しい入団テストだったな。

 やはりヨーロッパは競争も激しいのかもしれない。
 また、このクラブの13歳以下のスクールが、ハイレベルなのかもしれない。



 クラブハウスの事務所で、試験官から説明を受ける。

『えーと、とりあえず、入団テスト合格おめでとう。今後のスケジュールや契約書は、ここに用意してある。コータ・ノロ、ドイツ語は?』
『はい、一応は読めます』
『そうか。その歳で、たいしたものだな。もし分からないことは聞いてくれ』

 合格した4人のうち、日本人はオレだけだった。
 あとの3人はドイツ人で、心配はされていない。

 オレのドイツ語の文章読解力は、けっこうある方だ。
 前世のサラリーマン時代の仕事で、ドイツ語の契約書は嫌というほど勉強させられた。
 騙されることはないであろう。

「ふむふむ……」

 オレはスケジュールと契約書を、すみずみまで読んでいく。

 でもワクワクしながら読んでいた。
 何しろ、いよいよドイツでのサッカー修行の日々が始まるのだ。
 心がおどってきた。

 先ほどのミニゲームでも手応えがあった。
 これなら何とかやって行けるであろう。

『ちなみにコータ・ノロの保護者は?』
『はい、父親がこの街に住んでいます』
『それなら保護者からのサインが欲しいな』

 そうかスクールに入るのには、父親のサインが必要なのか。
 ビザや条件に関しては、ゲードさんと父親に一任していたから、知らなかった。

『では、4人とも大丈夫かな?』

 オレたちは契約書にサインをする。
 内容的にも変なところはなかった。

『これで君たちは、当クラブの一員となる。3部リーグの2軍とはいえ、今日からプロ選手。プロとして、そのことだけは自覚してくれ!』
『『『はい!』』』

 最後に試験官から激励の言葉があった。
 合格した3人は気を引き締めて返事をしている。

 もちろんオレも気合の声で返事をする。
 むかしから返事と声の大きさだけは、誰にも負けたことがないのだ。

(ん……?)

 そん時、オレは何かに気がつく。
 今、試験官が何か変なことを、言っていたような気がするぞ?

『あのー、“3部リーグの2軍”とか“プロ”とか……どういうことでしょうか?』

 こっそり試験官に聞いてみる。
 何か重大なことを、オレは見落としていたような気がしていたのだ。

『ん? この紹介状もあるように、コータ・ノロ。キミは合格したんだ。おめでとう』

 ゲードさんの招待状の中身を確認する。

「あれ……?」

 中身を確認して絶句する。
 オレが紹介されて合格したのは、13歳以下のスクールコースの入団テストではなかったのだ。

『ようこそF.S.Vの2軍へ!』

 世界中の一流選手プレイヤーが集まる、ドイツのプロサッカーリーグ。
 その3部リーグに所属する名門クラブ“F.S.V”の2軍。

 本物の大人のプロのサッカークラブに合格してしまったのだ。
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