挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
素人おっさん、第二の人生でサッカーライフを満喫する 作者:ハーーナ殿下@青森県弘前市
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

59/68

第58話:中学生サッカー留学編スタート!

 4月になる。オレは中学1年生になった。
 中学生になったからといって、特に変わったことはない。
 相変わらずサッカー漬けの毎日である。

「お父さん、朝練に行ってきます!」
「気をつけるんだぞ、コータ」

 朝6時に家を出て、近所の公園に向かう。
 学校に行く前に、サッカーの朝練をするためだ。

「よっと、今日の調子もまずまずだな」

 一人で練習しながら、自分の感覚を確認していく。
 オレは中学生になって身長も伸びていた。
 朝練をしながら、大きくなった身体の感覚を修正していく。
 こうしなければ成長期の特有のスランプに、陥ってしまう危険性もあった。

 今のところオレの感覚は大丈夫だった。
 成長期の身体と感覚が連動している。

 更に手足が伸びた分だけ、新しいテクニックも出来るようになっていた。

「グーテンモルゲン、コータ!」
「おはようございます……グーテンモルゲン!」

 公園で近所の人と挨拶を交わす。
 毎朝、顔を合わせる近所のおばさんだ。

(やっぱり朝一は、どうしても日本語で言っちゃうな……)

 そういえ中学生になって、大きく変わったことがある。

「ここはドイツなんだから、しっかりしないと」

 そう……オレはヨーロッパのドイツに来ていた。
 1月の宣言の通りに、ヨーロッパ留学していたのだ。



 朝練を終えて、借りている家に帰宅する。

「どうだ、コータ。こっちの学校には慣れたか?」
「今のところ大丈夫かな」

 同居している父親と、ご飯を一緒に食べる。
 ドイツで朝ご飯を作るのは、父親の担当になっていた。

 ドイツ式の朝食をオレはほお張る。
 うん、今日も美味しい。

「そういえば、ママとあおいから、メールが来ていたぞ」
「本当、お父さん? 見せて……あっ、写真付きだね」

 母親と妹は日本の実家に残っていた。

 最初は『葵もお兄ちゃんと一緒にドイツに住む!』って妹も言っていた。
 でも、まだ小学生の葵には、日本に残ってもらうことしたのだ。

「おっ、葵がキャプテンのマークを……」

 送られてきた写真の中に、葵のユニフォーム姿があった。
 リベリーロ弘前ひろさきのキャプテンマークを付けて、練習試合をしている光景だった。

 ドイツに行きたいと言い出した葵に、オレは『ボクのいなくなったチームは、葵にしか任せられない。頼んだよ!』と託してきた。
 新キャプテンに任命して、日本に残るように説得したのだ。

 写真を見た感じだと、新体制は上手くいっているようだ。
 新チームの表情を見ると分かる。
 新キャプテンの葵を中心にして、練習試合でも圧勝していた。

「葵も、お母さんも元気そうだね!」
「そうだな、パパたちを負けてられないな! はっはっは……」

 陽気な父親の笑い声が、家の中を明るくする。
 野呂家は男女で別れて暮らすことになった。
 でも、前向きな父親を中心にして、何とか大丈夫であった。

「じゃあ、学校に行ってくるね!」
「車に気をつけるんだぞ、コータ」

 朝の準備が終わり、学校に向けて出発する。
 かばんとサッカーボールをもって家を出ていく。

「よし。今日も、ドリブルの練習をしていこう!」

 通学路をドリブルしながら登校していく。
 この街はドイツの中でもけっこう田舎である。
 近所の子どもたちも裏路地で、サッカーで遊んでいた。

 それを真似してオレも、ドリブルしながら通学することにしたのだ。
 安全のため車の通らない裏通りを選んでいく。

「それにしても石畳のドリブルは難しいな……」

 この街は歴史がある文化都市である。
 日本とは違い、昔の石畳が街の公道になっていた。
 特に裏路地はデコボコの石畳が多い。

 ここをドリブルしていくのは、かなりの高難度であった。
 ボールがどこに跳ね返っていくか、予測もできないのだ。

「でも、すごく練習になるな!」

 全神経を集中して、ボールの動きを先読みしていく。
 判断力と未来予測を全開にしていく。
 こうすると通学中でも、かなりの練習になるのだ。

 日本にいた時、オレはドリブルでの通学を控えていた。
 でも、この田舎町ではサッカーは普通の光景。

 さすがはサッカー文化が根付いたヨーロッパである。
 これだけでもドイツに来た甲斐ははった。



 熱中してドリブルしている内に、学校に到着した。

『みんな、おはよう!』

 いつものようにドイツ語で、元気よく挨拶をする。

『コータ、おはよう!』
『今日も元気だね、コータ!』

 教室でクラスメイトが挨拶を返してくれる。

 オレが入学したのは現地の学校。
 だからクラスメイトのほとんどがドイツ人である。

(前世で勉強しておいたドイツ語が、こんなところで役立つとは……)

 オレはドイツ語を日常会話程度なら習得していた。

 前世のサラリーマン時代に、仕事上でドイツ語が必須な職場だった。
 だから前世ではドイツサッカーを見ながら、必死に習得していたのだ。

 1月にドイツ留学が決まった時から、言葉の復習もしていた。
 だから日本人学校じゃなくても、オレは大丈夫なのだ。

『ねえ、コータは日本でもサッカーをやっていたの?』
『いつもサッカーボールを蹴っているけど、どのくらい上手いの?』

 授業前にクラスメイトと交流する。
 さすがはサッカーが盛んな国である。
 サッカーボールを持っていると、交流ができやすい。

『日本では小さい頃から、サッカーはやっていたよ。上手さは……ぼちぼちかな?』

 クラスメイトにごまかして説明しておく。
 本当は『小学生の時に日本チャンピョンになったよ!』と自慢したい。

 でも、いきなり大口を叩いても、後で失敗したら恥ずかしい。
 ここはサッカー大国のドイツ。
 サッカーに関しては謙虚にしていくつもりだ。

『そういえば、コータはサッカークラブを決めたのか?』
『うちのチームに入ろうぜ!』
『いや、うちのチームの方が強いぜ!』

 クラスの男子から、各サッカークラブに誘われる。
 さすがはドイツである。
 こんな小さな街でも、何個もサッカークラブがあって盛んなのだ。

『うーん、ボクは紹介してもらうクラブがあるから、そこの入団テストを受けようと思うんだ』

 クラスメイトの誘いを丁寧に断る。

 そう……オレはドイツ来る前に、とある人に紹介状を書いてもらっていたのだ。

(あのゲードさんに感謝だな……)

 事前に紹介状を書いてもらったのは、ゲードさんというお爺さんである。

 ゲードさんと出会ったのは、オレが小学生4年の全国大会の時。
 閉会式の後に出会った、あの陽気なサングラスの外国のお爺ちゃんである。

 そう、オレのファンだった人だ。
 ゲードさんとは翌年のU-15アジア大会の時、トイレ前でも話をしていた。
 その時にメールアドレスを交換して、密かに連絡を取り合っていたのだ。

(ダメもと聞いてみたけど……運が良かった)

 オレには他に外国人の知り合いがいなかった。
 だからダメもとで、ゲードさんに連絡してみたのだ。

 1月にドイツ行きが決まった時に、メールで『こんにちはゲードさん。家族の都合で4月からドイツの〇〇という街に留学することになりました。お勧めのサッカースクールはありますか?』と連絡していた。

 その返事として、この街のサッカースクールをお勧めされた。
 しかも、オレが入団テストを受けられるように、ゲードさんは手配してくれて、郵送で推薦状まで用意してくれたのだ。

 不思議なご縁とはいえ、あの人には本当に感謝している。

『よし、では授業をはじめるわよ』

 おっと、いけない。
 先生が教室に入ってきた。
 1時間目の事業の準備をしないと。

 ドイツの学校や授業の制度は日本とは少し違う。
 厳密に言えばオレは中学生1年生ではない。
 ドイツ式の中等教育というカテゴリーになる。

 オレも最初は混乱してけど、今では大丈夫であった。
 何しろ前世ではオレは一応、通信制の大学を卒業をしていた学力はある。

 だからドイツでは会話や教育に悩む必要はなく、サッカーに集中できるのだ。



『じゃあ、みんな。またね!』
『コータ、またね!』
『入団テスト、頑張れよ、コータ!』

 本日の授業が全部終わる。
 クラスメイトに挨拶して、オレはダッシュで教室を飛び出る。

 今日はこれからサッカースクールの入団テストがある。
 ゲードさんに紹介されたチームだ。

 オレは地図を見ながら、指定された場所までドリブルで向かう。
 これなら身体も温まってちょうどいい。

「おっ、ここかな? 随分と立派だな……」

 指定された場所に到着した。
 着いたのは街外れのサッカーパーク。集合場所は近代的なクラブハウスであった。

「このクラブの紋章エンブレムは、もしや?」

 クラブハウスのエンブレムを見て気がつく。
 ゲードさんから紹介されたのは、プロクラブのスクールコースだったのだ。

(この街クラブは、たしかドイツ3部リーグだったな……)

 紹介されたスクールのトップチームは、ドイツのブンデスリーガーの3部に所属していた。

 普通は“3部”といえは日本のJ3をイメージしてしまう。
 だがサッカー大国であるドイツは、3部でも凄いのだ。

 何しろ3部リーグでも、スタジアムは1万人以上の観客で埋まってしまう。
 日本のJ1よりも高い集客力を誇っているのだ。

(それだけドイツのサッカーは人気があって、レベルが高いということか……)

 クラブのエンブレムを見つめて、オレは気合いを入れ直す。
 これから入団テストを受けるのは、13歳以下のスクールコース。

 ヨーロッパのサッカークラブは教育機関アカデミーとして、子どもから高校生くらいまでの教育組織がある。
 年齢によって入るカテゴリーが分かれており、育成に力を入れていた。

 育成に力を入れているので、ヨーロッパはレベルが高いと言われている。

「今日からボクはゼロからの出発か……」

 改めて自分の立っている場所を確認する。 

 オレの今までの日本での実績は関係ない。
 全国少年サッカー大会で3連覇したことなんて、なんの知名度にもならない。

 これから挑むのは実力だけがテストされる、戦いの場なのだ。

「面白い……頑張っていかないと!」

 そんなゼロからの出発に、逆に燃え上る。
 オレは気合いの声を共に、13歳以下の入団テストに挑むのであった。
ツギクルバナー
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ