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素人おっさん、転生サッカーライフを満喫する【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【ジュニア編】

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第52話:大会の後に

 初秋に開催された“U-12ワールドカップ”から、月日が経つ。

 日本に帰国してからのリベリーロ弘前ひろさきは、順調な成績を収めていた。


 まずは全国少年サッカー大会に出場するための予選。

 10月の地区大会と、11月の県大会。

 この二つの大会は無事に優勝することができた。


 内容も圧倒的な優勝である。

 これは昨年のよりも所属選手が増えて、チームの総合力が上がっていたのが勝因だった。

 その中でも“U-12ワールドカップ”に参加した12人のレギュラー選手は、急成長していた。


 そのためコーチも試合展開によっては、レギュラー選手を控える采配もあった。

 来年を見据えて4、5年生を起用して、全体的なレベルアップを図っていた。


 これでオレとヒョウマ君たち6年生が抜けた来年も、何とかなるであろう。



 そして12月下旬になる。

 小学生年代の最大の大会、“全国少年サッカー大会”が始まっていた。


 オレたちリベリーロ弘前ひろさきは、今年で4年連続の出場となる。

 そのためコーチと選手たちには、余裕があった。

 これは悪い意味での油断ではなく、順調な意味での余裕である。


 何しろ3年前の初出場の時は、緊張ばかりして大変だった。

 だが比べものにならないほど、今年は皆リラックスしていたのだ。


 えっ、オレは3年前から緊張していなかったよね……って?

 そ、そうだったかな……。


 とにかくチームは全国大会でも順調だった!

 

 まずは予選のリーグ戦がスタート。

 これは危なげなく全勝で通過できた。


 地区県大会と同じように、コーチは状況によって控えの選手を起用していく。

 何しろ全国大会の空気を感じただけでも、来年の選手は大きな経験値が得られる。


 チーム作りとは一朝一夕で出来ない。

 こうした経験の積み重ねによる、歴史の強さなのであろう。


 リーグ戦の後は全国大会トーナメントが始まる。

 こちらも順調に勝ち進んでいく。


 オレたちは準々決勝を勝ち進み、準決勝も勝利を勝ち取る。


 そして、決勝戦の残り時間も……



『優勝はリベリーロ弘前ひろさき! なんと全国大会史上、初の3連覇です!』


 オレたちは優勝することができたのだ。

 しかも大会史上初の3連覇という栄誉もついてきた。


 今回の全国大会は、かなり苦戦した場面もあった。

 でも何とか優勝することができたのだ。


 オレは今回、優勝できた勝因を振り返る。

 今年のリベリーロ弘前ひろさきは、この4年間で一番成熟されたチームであった。

 攻守に渡って隙がなく、選手層も厚くなっていた。


 特に攻撃陣は、圧倒的な大会得点数の記録を残している。

 ヒョウマ君と葵、オレの攻撃三人衆は、“魔の三角形トライアングル”として敵チームを恐怖のどん底に陥れた(らしい)。


 また守備陣も検討していた。

 6年の例の2人組とオレが中心になって、最少失点をキープした。

 こちらは“蟻地獄ありじごく”という不気味な名で、各チームに恐れられていた(らしい)。


「あのセルビオ・ガルシアに比べたら、怖いモノはなかったな!」

「ああ、そうだな、たまにアイツのドリブルが、オレは夢に出てくるからな!」


 この守備陣の例の二人は、“U-12ワールドカップ”から戻ってきて、一番成長した選手かもしれない。

 それほどまでにセルビオ君との対決は、彼らの意識を大きく変えていたのであろう。

 頼もしい仲間である。


「よし、整列をしよう」


 決勝戦が終わり、両チームで整列する。

 互いに挨拶をして、観客席にも礼をする。


 その後は例年の通り、閉会式と表彰式だ。


 オレたちは優勝チームとしてメダルを貰い、ヒョウマ君は大会得点王として表彰されていた。

 なんとヒョウマ君は10年ぶりに、大会得点王の記録を更新していた。

 それも大差をつけての更新。今後は破られることはないという噂だ。


 その後は去年と同じ様に、バタバタしたスケジュールだった。


 閉会式の後は、リベリーロ弘前ひろさきは沢山のマスコミの取材を受ける。

 TVやラジオ、サッカー雑誌やネットニュースなど、かなりの数だった。


 個人的には今年も、コーチとキャプテン、大会得点王のヒョウマ君と、女子MVPのあおいの三人がインタビューを受けていた。


 一方でオレには個人的な取材は、今年も無かった。

 これは毎年のことなの諦めていた。


 とほほ……。

 

 前から思っていたけど、かなりオレは地味なのかもしれない。

 これは前々から薄々は思っていたこと。

 3年連続だと改めて実感してしまう。


 でも、こんなことではオレはヘコタレない。

 何故なら今世でサッカーを五体満足でプレイできるだけで、オレは幸せなのだ。

 仲間たちと一緒に、サッカーで汗を流せるだけで幸せだった。


 とにかくコーチたち3人の取材が終わるまで、大人しく待つことにしよう。



 そんな時である。


「野呂コータ君。ちょっといいなか?」

「えっ……?」


 待機していたオレに、話かけてきた大人がいた。


 誰だろう?

 もしかしたら、ついにマスコミの人が取材に来たのかな?

 TVか新聞か。もしくは愛読しているサッカー雑誌かもしれない。


 そう思いながらオレは顔を上げる。

 でも、そこにいたのはマスコミ関係者ではなかった。


「こうして話をするのは、はじめましてかな。私のことは分かるかな?」

「はい、横浜マリナーズU-12の監督さんですよね?」

「そうだよ」


 声をかけてきたのは横浜マリナーズU-12の監督であった。

 4年前から全国大会で、毎年のように対戦していたので、顔は覚えている。


 今年も昨日の準々決勝で戦って、オレたちが勝利した相手だ。


 でも、そんな敵チームの監督さんがいったい、何の用だろうか?

 まさか『お前たちのせいで3年間、優勝を逃した! 謝罪しろ!』と、怒ってくるのかな?


 とりあえず逃げ出せる準備はしておこう。


「そんなに警戒しなくても、大丈夫だよ、野呂コータ君。今日は同僚の仲介で来ただけだから」

「仲介ですか?」

「私のことです。はじめまして、野呂コータ君。私はこういう者です」


 監督さんの後ろから、もう一人の大人が出てくる。

 スーツを着たその人は、名刺を差し出してきた。


「横浜マリナーズ……人事部の方ですか?」


 相手は監督さんと同じ、横浜マリナーズのスタッフの人だった。

 スーツにネクタイで、お堅い感じのする人だ。


 人事部ということは、コーチや監督の配属に関係する人かな?


「実は当クラブでは、リベリーロ弘前ひろさきさんの近年の素晴らしい成績を評価しておりました。創立して間もないのに、全国少年サッカー大会で3連覇という偉業は素晴らしいです!」


 人事部の人はうちのチームのことを、かなり褒め称えてきた。

 これまでのチーム成績のことを絶賛してくる。


 いやー、ライバルチームの人にそんなに褒められると、嬉しくて恥ずかしくなってきます。


(ん? 待てよ、もしや……この人は?)


 オレは直感が働いた。

 離れた場所でマスコミの取材を受けている、我らがコーチに視線を向ける。


(もしや、うちのコーチをヘッドハンティングするつもりなのか?)


 オレの脳裏にそんな予測が浮かんだ。

 人事部の人の態度から、これは間違いないであろう。


 何しろリベリーロ弘前ひろさきのコーチは、近年で好成績を収めている。


 3年前に初出場した全国大会で、いきなりベスト8。

 翌年には初優勝して、それ以降は3連覇の偉業を達成している。


 更に今年の秋の“U-12ワールドカップ”では、チームを優勝に導いていた。


 風の噂ではコーチはサッカー業界で、“東北の智将”と呼ばれているらしい。

 少年サッカーの専門誌にも、ドヤ顔でコーチのインタビューが載っていた。


 こうして客観的に見たら、かなり優秀なコーチなのであろう。


 たとえ三十路で彼女がいなくて、足が臭くても、コーチの仕事には差し支えない。


(コーチが横浜マリナーズに、スカウトされちゃうのか……コーチは、どうするんだろう?)


 Jクラブの名門である横浜マリナーズは、待遇もかなりいいであろう。

 給料も大幅にアップして、将来的にはサッカー業界でも出世していくはずだ。


 もしも順調にいけば、横浜マリナーズのトップチームの監督になることも有り得る。

 更に日本代表の監督になるのも夢じゃないかもしれない。


 コーチの今後のことを考えたら、移籍もありなのかもしれない。


(でも、本音を言うなら、少し寂しいな……)


 オレはあと3ヶ月で、このチームを卒業してしまう。

 でもコーチが同じ街にいてくれるなら、いつでも遊びに行ける。

 

 中学校で成長した自分の姿を、コーチに見せに行きたかった。


「えーと、野呂コータ君に少し聞きたいのですが?」

「えっ? はい?」


 そんな妄想をしていたら、人事部の人が質問してきた。

 いったい何だろう?


「野呂コータ君は小学校を卒業した後の進路は、もう決まっているんですか?」

「えっ、ボクですか? ボクは近所の中学校に行く予定です」


 人事部の人が、いきなりオレのプライベートことを聞いてきた。

 コーチの印象を悪くしないために、正直に答えておく。


 オレはあと4ヶ月で中学生になる。

 進路は前世で通っていた、地元の近所の中学校に行く予定である。

 というか、田舎ではそれ以外の選択肢は無い。


「ではサッカークラブや部活は、もう決めているのかな?」

「サッカーですか? いえ、別に決めていません」


 今のリベリーロ弘前ひろさきは小学生のジュニアチームしかない。

 だから小学校を卒業と同時に、チームも卒業となる。


 今までの先輩たちは、地元の中学校のサッカー部や、他のジュニアユースのあるクラブに入会していた。


 あっ、でも最近の先輩たちは、県内のサッカーが強い名門の中学校に入った人もいた。

 何でも去年と一昨年は、リベリーロ弘前ひろさきは全国制覇をしている。

 その時のレギュラーだったたちは、県内でも有数の選手になっていたのだ。


 そういえば先輩たちは、みんな元気にしているかな。

 名門中学校のサッカー部は、練習が地獄のようだと聞いたことがある。


「ほほう、まだサッカー進路は決めていないのですね?」

「あ、はい」


 人事部の人の目が光った。

 何か失礼なことを言ったのかな?


 でもオレはサッカーの進路は、本当に決めていない。

 今回の全国少年サッカー大会に集中したくて、終わってから決めようと思っていたのだ。


「それなら我が横浜マリナーズのクラブに是非!」


「えっ……?」


「横浜に全寮制完備で、提携している中学校もあります。もちろん引っ越し費用と学費と、サッカー費用は3年間、こちらで負担します。つまり野呂コータ君の両親には、一切の負担がありません!」


 まさかの展開だった。


 人事部の人の狙いはコーチではなかった。

 狙いは、このオレだったのだ。


 Jリーグの名門チーム“横浜マリナーズ”のジュニアユースに、オレはスカウトされてしまったのだ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 国際大会の優勝時にも突っ込まれていましたが、幾らファンタジーなサッカー創作だとしても 現実社会をベースにした価値観の話を作られている時点で、読者側も大体の価値観を頭の中に用意しながら話…
[気になる点] 全国大会三連覇して、キャプテンにインタビューないって、マジおかしい。 現実的じゃない。 興醒めしますね
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