挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
素人おっさん、第二の人生でサッカーライフを満喫する 作者:ハーーナ殿下@青森県弘前市
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

45/68

第44話:強襲、無敵王子

“無敵王子”セルビオ・ガルシア。

 サッカーの才能に恵まれて、幼いころにスペイン超名門クラブ“レアロ・マドリード”にスカウトされる。
 その後はスペイン代表の各世代と、クラブで順調に成績を出していく。

 10代の後半で異例のトップチームでプロデビュー。
 その後はヨーロッパリーグとワールドカップで偉業を達成していくスーパースターの一人だ。



「“無敵王子”セルビオ・ガルシア……だと」

 そんな若き姿の降臨に、オレは思わずその将来の二つ名を口走ってしまう。
 なぜ彼がこんな場所にいるのか理解できずにいた。

(そうかセルビオ・ガルシアは前世で31歳だ。だからオレと同い年なのか……)

 混乱し過ぎて、そんな単純なデータも忘れていた。
 あまりにも異次元の存在の選手だったから、同い年だと意識していなかった。
 それほどまでに前世でのセルビオ・ガルシアは、超スーパースターだったのだ。

「おい、お前、オレたちのボールを返せよ!」
「ああ、言葉が通じなくても、意味分かるだろ? ボール、カムバック!」

 そんな未来の超スーパースター様に向かって、無礼なことを言っている二人がいる。
 いったい誰だ?

 それは練習ボールを奪われた、リベリーロ弘前ひろさきの二人。オレのチームメイトの6年生たちだった。

 “カムバック”という間違った英語で、返却を要求している。
 未来のスーパースターに向かって、何と強気な態度。

 この時代のセルビオ・ガルシアは、まだ世界的には無名な12歳。チームメイトが知らないのも、仕方がないことなのだ。

『ヘーイ、カモン!』

 それに対してセルビオ・ガルシアは、英語と指のジェスチャーで返事をする。
 “ボールを返して欲しかったら、実力で奪いに来い”
 小学生にも通じる挑発だ。

「なんだと⁉ 上等だ!」
「ねえ、ダメだよ……」
「止めるな、コータ! アレはオレの大事なボールだ!」

 オレの制止も聞かずに、チームメイトはダッシュする。
 あのボールは彼が祖母に買ってもらった大事な記念ボール。
 セルビオ・ガルシアの足元にある、そのボールを奪いにいく。本気のスライディングを仕掛ける。

「くっ⁉」

 だが、彼のボール奪取は失敗に終わる。
 セルビオ・ガルシアの華麗なボール運びに、まったくついていけないのだ。
 その後、何度も突進しても、回避されてしまう。

『ヘーイ、トゥー』

 セルビオ・ガルシアが再び英語とジェスチャーをしてくる。
 ボールを返して欲しかったら、2人がかりでかかってこいと。不敵な笑みを浮べている。

「2人がかりだと⁉ 上等だ!」
「ねえ、ダメだって……」
「止めるな、コータ!」

 オレが止める間もなく、もう一人もダッシュしていく。
 この二人はチーム内でも熱血漢な性格。
 同年代に挑発されて、居ても立っても居られないのだ。

「くっ⁉」
「そんな⁉ クソッ⁉」

 今度は二人がかり。
 でもセルビオ・ガルシアに触れることも出来ない。いいように遊ばれていく。

(そんな……あの二人はリベリーロ弘前ひろさきの守備の要なのに……)

 目の前で起こっている光景に、オレは絶句する。
 この二人はかなり上手い。チームでも5年生の時から、レギュラー選手であった。
 去年の全国少年サッカー大会でも大活躍して、連覇の要となっていた。

 はっきりと言って守備力だけなら、日本の同年代の中でも屈指であろう。

 そんな二人がボールを奪うどころか、相手の身体に触れることすら出来ない。
 圧倒的にテクニックが違いすぎるのだ。

『おや、もう終わりか?』

 1対2の勝負はついていた。
 セルビオ・ガルシアの圧倒的なテクニックに振り回されて、二人は倒れ込んでいた。
 熱くなった二人が、息切れしてしまったのである。

『誰かオレと、もっと遊ぼうよ?』

 セルビオ・ガルシアは暇そうに笑っていた。
 その表情から悪意はないのであろう。本当に遊びたいのであろう。

 オレは前世の仕事の関係上、スペイン語も日常会話ならマスターしていた。だからセルビオ・ガルシアの言葉が理解できていた。

 彼はスペイン語で、周囲の者たちに挑発している。
 だが誰も名乗りを上げない。
 先ほどの1対2の圧倒的な光景に、他国の少年たちも絶句していたのだ。

(どうする……)

 大事なチームメイトのボールが奪われたのだ。
 取り返すのが人情である。

(でも、ここで騒ぎを大きくするはマズイ。それに相手はセルビオ・ガルシア……あの“無敵王子”だ……)

 オレが最初から動けずにいたのは、後者が理由であった
 スーパースターの“無敵王子”を目の前にして、足が動かなかったのだ。

 仲間と助けなきゃいけない。
 でも、その華麗なテクニックに、不覚にも見とれてしまったのである。

 仲間を助けずに、足がすくんでいたのだ。
 本当に悔しい……。

「でも、今のボクはリベリーロ弘前ひろさきのキャプテンだ!」

 震える自分の足を、拳で思いっきり殴りつける。
 自分のほっぺたにビンタをかます。
仲間を助けるために、不甲斐ない身体に闘志を宿す。

 よし、これで足は動く。
 絶対に勝てるはずはない。

 けど、セルビオ・ガルシアから、仲間のボールを取り返すんだ。

 オレは闘志を燃やして、挑むことを決意する。

「おい、待て」

 その時である。
 動き出そうとしたオレの肩を、誰かの手が止めてくる。

「コータ、お前はキャプテンだ。ここはオレ様がいく」
「ヒョウマ君……」

 窮地に駆け付けたのはリベリーロ弘前ひろさきの9番。
 オレたちのチームのエース

 “皇帝カイザー”澤村ヒョウマが駆け付けてくれたのだ。
ツギクルバナー
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ