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素人おっさん、転生サッカーライフを満喫する【書籍化】  作者: ハーーナ殿下
【ジュニア編】

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第44話:強襲、無敵王子

“無敵王子”セルビオ・ガルシア。


 サッカーの才能に恵まれて、幼いころにスペイン超名門クラブ“レアロ・マドリード”にスカウトされる。

 その後はスペイン代表の各世代と、クラブで順調に成績を出していく。


 10代の後半で異例のトップチームでプロデビュー。

 その後はヨーロッパリーグとワールドカップで偉業を達成していくスーパースターの一人だ。



「“無敵王子”セルビオ・ガルシア……だと」


 そんな若き姿の降臨に、オレは思わずその将来の二つ名を口走ってしまう。

 なぜ彼がこんな場所にいるのか理解できずにいた。


(そうかセルビオ・ガルシアは前世で31歳だ。だからオレと同い年なのか……)


 混乱し過ぎて、そんな単純なデータも忘れていた。

 あまりにも異次元の存在の選手だったから、同い年だと意識していなかった。

 それほどまでに前世でのセルビオ・ガルシアは、超スーパースターだったのだ。


「おい、お前、オレたちのボールを返せよ!」

「ああ、言葉が通じなくても、意味分かるだろ? ボール、カムバック!」


 そんな未来の超スーパースター様に向かって、無礼なことを言っている二人がいる。

 いったい誰だ?


 それは練習ボールを奪われた、リベリーロ弘前ひろさきの二人。オレのチームメイトの6年生たちだった。


 “カムバック”という間違った英語で、返却を要求している。

 未来のスーパースターに向かって、何と強気な態度。


 この時代のセルビオ・ガルシアは、まだ世界的には無名な12歳。チームメイトが知らないのも、仕方がないことなのだ。


『ヘーイ、カモン!』


 それに対してセルビオ・ガルシアは、英語と指のジェスチャーで返事をする。

 “ボールを返して欲しかったら、実力で奪いに来い”

 小学生にも通じる挑発だ。


「なんだと⁉ 上等だ!」

「ねえ、ダメだよ……」

「止めるな、コータ! アレはオレの大事なボールだ!」


 オレの制止も聞かずに、チームメイトはダッシュする。

 あのボールは彼が祖母に買ってもらった大事な記念ボール。

 セルビオ・ガルシアの足元にある、そのボールを奪いにいく。本気のスライディングを仕掛ける。


「くっ⁉」


 だが、彼のボール奪取は失敗に終わる。

 セルビオ・ガルシアの華麗なボール運びに、まったくついていけないのだ。

 その後、何度も突進しても、回避されてしまう。


『ヘーイ、トゥー』


 セルビオ・ガルシアが再び英語とジェスチャーをしてくる。

 ボールを返して欲しかったら、2人がかりでかかってこいと。不敵な笑みを浮べている。


「2人がかりだと⁉ 上等だ!」

「ねえ、ダメだって……」

「止めるな、コータ!」


 オレが止める間もなく、もう一人もダッシュしていく。

 この二人はチーム内でも熱血漢な性格。

 同年代に挑発されて、居ても立っても居られないのだ。


「くっ⁉」

「そんな⁉ クソッ⁉」


 今度は二人がかり。

 でもセルビオ・ガルシアに触れることも出来ない。いいように遊ばれていく。


(そんな……あの二人はリベリーロ弘前ひろさきの守備の要なのに……)


 目の前で起こっている光景に、オレは絶句する。

 この二人はかなり上手い。チームでも5年生の時から、レギュラー選手であった。

 去年の全国少年サッカー大会でも大活躍して、連覇の要となっていた。


 はっきりと言って守備力だけなら、日本の同年代の中でも屈指であろう。


 そんな二人がボールを奪うどころか、相手の身体に触れることすら出来ない。

 圧倒的にテクニックが違いすぎるのだ。


『おや、もう終わりか?』


 1対2の勝負はついていた。

 セルビオ・ガルシアの圧倒的なテクニックに振り回されて、二人は倒れ込んでいた。

 熱くなった二人が、息切れしてしまったのである。


『誰かオレと、もっと遊ぼうよ?』


 セルビオ・ガルシアは暇そうに笑っていた。

 その表情から悪意はないのであろう。本当に遊びたいのであろう。

 

 オレは前世の仕事の関係上、スペイン語も日常会話ならマスターしていた。だからセルビオ・ガルシアの言葉が理解できていた。

 

 彼はスペイン語で、周囲の者たちに挑発している。

 だが誰も名乗りを上げない。

 先ほどの1対2の圧倒的な光景に、他国の少年たちも絶句していたのだ。


(どうする……)


 大事なチームメイトのボールが奪われたのだ。

 取り返すのが人情である。


(でも、ここで騒ぎを大きくするはマズイ。それに相手はセルビオ・ガルシア……あの“無敵王子”だ……)


 オレが最初から動けずにいたのは、後者が理由であった

 スーパースターの“無敵王子”を目の前にして、足が動かなかったのだ。


 仲間と助けなきゃいけない。

 でも、その華麗なテクニックに、不覚にも見とれてしまったのである。


 仲間を助けずに、足がすくんでいたのだ。

 本当に悔しい……。


「でも、今のボクはリベリーロ弘前ひろさきのキャプテンだ!」


 震える自分の足を、拳で思いっきり殴りつける。

 自分のほっぺたにビンタをかます。

仲間を助けるために、不甲斐ない身体に闘志を宿す。


 よし、これで足は動く。

 絶対に勝てるはずはない。


 けど、セルビオ・ガルシアから、仲間のボールを取り返すんだ。


 オレは闘志を燃やして、挑むことを決意する。


「おい、待て」


 その時である。

 動き出そうとしたオレの肩を、誰かの手が止めてくる。


「コータ、お前はキャプテンだ。ここはオレ様がいく」

「ヒョウマ君……」


 窮地に駆け付けたのはリベリーロ弘前ひろさきの9番。

 オレたちのチームのエース


 “皇帝カイザー”澤村ヒョウマが駆け付けてくれたのだ。


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