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素人おっさん、第二の人生でサッカーライフを満喫する 作者:ハーーナ殿下@青森県弘前市
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第22話:大会1日目

 全国大会の1日目が、いよいよ始まる。

「リベリーロ弘前……ファイト!」
「「「オー!!」」」

 試合前、6年生のキャプテンの掛け声で、オレたちは円陣を組む。
 全員でテンションを上げて、試合に挑む。

 よし……いよいよオレたちの初戦が始まるのだ。

「見ろ。相手のFWの一人、女だぞ……」
「しかも、3年生みたいだぞ……」
「昨年のベスト8はやっぱりマグレか? 作戦通りに、澤村だけ抑えれば楽勝だな……」

 相手のチームから、そんなヒソヒソ話が聞こえてきた。
 オレは地獄耳だから、遠くにいても全部聞こえていた。

 FWの女の子とは、妹の葵のこと。澤村はヒョウマ君のことである。

 初戦の相手は、全国大会の常連チームである。
 だから、まだ2回目の出場の、リベリーロ弘前ひろさきのことを舐めていた。
 特にレギュラー選手な葵のことを、鼻で笑っている。

 小学生のサッカーの試合には、女子も出場可能。
 各地の小学生のサッカーチームにも、女の子はけっこう入会している。

 だが全国大会クラスになると、ほとんど男子しかいない。
 何故なら全国大会の主力の6年生にもなると、筋力や体格で差が出てしまうのだ。

「気にするな、野呂妹。女子でもプロ選手は上手い。オレ様が保障する。試合で見返してやれ」
「大丈夫。ぜんぜん気にしてないから。うちのお兄ちゃんに比べたら、相手も大したことないから」

 ヒョウマ君も地獄耳だったらしい。それに妹の葵も。
 特に葵は肝が据わっていた。

 先ほどのまでの緊張は、どこへやら。今は頼もしい笑みすら浮べている。
 葵は本番に強いタイプなのかもしれない。

「よし、いくぞ!」
「「「はい、キャプテン!」」」

 キャプテンの号令にオレたちは、もう一度気を引き締める。

 ピピっーと、試合開始のホイッスルがなる。
 いよいよ、オレたちの全国大会がスタートするのだ。



 50分後、初戦が終了する。

 結果は4対1……オレたちリベリーロ弘前の勝利であった。

「まずは初勝利だね、ヒョウマ君!」
「そうだな。それにしても相変わらず、ナイスパスだったな、コータ」
「葵も頑張ったよ、お兄ちゃん! ゴールを見てた?」

 得点はヒョウマ君が2点、葵も2点を決めて、終始相手を圧倒していた。
 守りでは1点を入れられてしまったが、アレは仕方がない。サッカーでは防げない攻撃も、時にはある。

 それに今のリベリーロ弘前のフォーメーションは、ヒョウマ君と葵のツートップ。超攻撃型のサッカーを戦術としていた。
 相手に点を取られたら、何度でも取り返す作戦。だから失点はコーチも気にしていない。

「くっ。完敗だ、14番……オレたちの分まで、決勝まで進んでくれ……」
「はい。頑張って優勝を目指します!」

 リベリーロ弘前の14番ことオレは、相手のチームの選手と挨拶する。
 相手は試合開始前、こちらを舐めていた。
 だが試合後は、オレたちに敬意を払って挨拶をしてくれた。

 これぞ青少年のスポーツマンシップ。
 勝負が終わった後は、互いの健闘を称え合うのだ。



「よし、午後の2回戦の準備をするぞ。昼休憩のうちに、身体を休めておけ!」
「「「はい、コーチ!」」」

 全国大会のスケジュールは、かなりハードである。
 まず一次予選で、4チーム対抗で総当たり戦のリーグ戦。それが全部で12組もある。

 そのため大会日程も過密気味。
 一日の中に午前と午後に、2回も試合があるのだ。

 1試合は20ハーフの前後半で、合計40分。つまり1日で80分も試合をしないといけない。
 更に今の小学生は8人制サッカーなので、とにかく全員が走り疲れる。

 この後の午後の試合まで、オレたちも体力を回復しておかないといけないのだ。

 おっと。楽しみな、お昼ごはんの時間だ。
 チームが用意してくれた、昼食を皆で輪になって食べる。

「うーん。お昼ごはん、これだけか?」

 でも昼ご飯はかなり少な目で、食いしん坊のオレは悲しい気分になる。
 少ないのには理由がある。
 何故なら午後に2回戦目がある。

 だから昼食はバナナや麺類。またエネルギーチャージ系の飲料ゼリーなど、消化にいいモノが中心である。
 もしも食べ過ぎて試合中に、お腹が痛くなったら大変なのだ。

 せっかくの楽しいご飯の時間が……トホホである。
 よし、ご馳走は宿の夕ご飯までお預けだ。

「ご馳走様でした! じゃあ、葵、試合前になったら、起こしてね」

 昼食を食べた後、オレは横になり仮眠をする。
 本当は昼に寝てしまうと、身体が固くなってしまう。

 だがチームの中盤の担当するオレは、攻守で走りっぱなし。第一試合で大量に体力を消費していたのだ。
 残りHPは20%と言ったところだ。

 だから仮眠して少しでも、体力を回復しておきたい。
 これまでも一日で二回試合ある時も、必ず昼寝を欠かしていなかった。
 だから身体の固さは大丈夫であろう。

「大事な試合前に寝られるとは、相変わらず図太い神経だな、コータ?」
「じゃあ、後で……ヒョウマ君……すやすや」

 オレの昼寝に慣れていたヒョウマ君は、少し呆れた顔。苦笑いしていたような気がする。
 全国大会で昼寝をしている選手は、他にいないかもしれない。

 まあ、いいか……オレはそのまま夢の世界へ落ちていくのであった。



 全国大会1日目の午後。
 予選リーグの第2試合が始まる。

「よし、体力回復!」

 ぐっすり爆睡したオレの体力は、全快に近いまで回復していた。
 よし、全身の調子もいいぞ。

「おい。相手は3年生の女がFWいるのか……?」
「だが、一回戦の得点から、油断はできない……」
「ああ。澤村と合わせて警戒していこう……」

 試合前。2回戦の相手のヒソヒソ話が、また聞こえてきた。
 どうやら今回の相手は、油断をしていないようだ。午前の試合で2得点を取った、葵のことを警戒していた。

 よかった。これで妹も気分よくプレイできるであろう。

「おい、コータと野呂妹……作戦を変えていくぞ」
「えっ、ヒョウマ君? 急に?」
「そうだ。オレ様が中盤に入って、ボールを運んで、パスを出す。FWはお前たち兄妹でツートップだ」

 驚いたことにヒョウマ君が、新しい作戦の提案をしてきた。キックオフの直前である。
 いつもとは違いオレが攻撃のFWになり、相手のマークを混乱させという作戦だ。

「でも、ヒョウマ君が中盤だと、体力的に負担が……」
「オレ様を誰だと思っている? 体力など無限だ」
「そうだね、ヒョウマ君なら大丈夫だね! よし、作戦変更了解!」

 作戦の変更が決定した。
 ヒョウマ君はいつもFWがメイン。だがサッカーの才能あるオールラウンダーな選手だ。
 中盤の司令塔も難なくこなしてくれるであろう。

 それにオレも前は、FWも兼用していた。突然の作戦変更も大丈夫であろう。

「じゃあ、キャプテンにも、こっそり伝えてくるね、ヒョウマ君」

 ちなみにリベリーロ弘前の試合中の戦術変更は、コーチからオレたち選手に一任されていた。
 子どもたちの思考を柔軟に育てていく、チーム方針なのだ。

 よし、作戦変更もチームメイトに上手く伝わった。
 さて、頑張っていくか。

 こうして予選の2回戦が始まるのであった。




 50分後。

 ピ、ピピー。

 心配の笛の音で、第二試合が終了する。
 結果は3対1でリベリーロ弘前の勝利である。
 これで予選は2連勝だ。

 試合ではヒョウマ君の作戦が、見事に上手くいった。
 相手はこちらのポジション変更に、常時にわたって混乱していたのだ。

 ちなみに得点はオレが3点だった。
 葵は自分で決められるタイミングで、なんとオレに全部パスをしてきたのだ。

「えへへ……さすがはお兄ちゃん! 今のところチーム得点王だね!」

 もしかしたら葵は兄のオレに、花を持たせようとしていたのか?
 でも、これはサッカー選手として公私混同だ。 
 後で葵を叱っておかないと、いけない。

「コータ、お前の妹はパスセンスもあるな。大したものだ」
「えっ、ヒョウマ君?」
「本当に変なサッカー兄妹だな」

 試合内容にヒョウマ君も苦笑いしていた。
 でも葵のパスの判断は悪くなかったらしい。それなら葵のことは怒らないでおこう。

 FWの葵にパスの選択肢が出てきたら、今後の戦術の幅が広がっていく可能性もある。
 大会中にオレたちチームは進化していたのだ。
 オレとヒョウマ君、葵の攻撃の三角形トライアングルで、対戦相手を翻ろうできるであろう。

「よし、宿に戻るぞ! 忘れ物をするな!」
「「「はい、コーチ!」」」

 全国大会の一日目の全試合は終わった。
 後は明日の午前と午後に、また2つ試合。
 更にその後のトーナメントまで激戦は続いていくのだ。



 オレたちリベリーロ弘前は宿に戻った。
 鹿児島県の会場の近くにある旅館。
 昨年もお世話になったので、戻ってくると落ち着く感じがする。

「夕飯を食ったら、風呂に入れ。今日の疲れを、明日に残すなよ!」
「「「はい、コーチ!」」」

 メンバー全員とコーチだけで夕食を食べる。
 親たちは鹿児島の別のホテルに宿泊となる。

 親と子供たちが別行動。
 これも選手コースの子どもたちに、大人としての自立を促す、チームの決まりなのだ。

 夕食後は皆で大浴場に入る。
 チームメイトで背中を洗い合ったり、シャンプーで髪の毛を立てて遊ぶ。
 その後は潜水ゲームを、湯船の中で遊んだりする。

 オレも童心に帰った気分で、本当に楽しい。誰よりもお風呂で騒いだ。

 でも、あんまり騒いでいたら、鬼の形相でコーチがやってきた。
 すごく怒られてしまったので、皆でお風呂から出ることにした。

 反省だ。

 その後は消灯の夜9時まで、子供たちは自由時間である。
 各自がストレッチをしたり、本を読んだりTVを観たりして、けっこう自由にできる。

 でもゲームや漫画は、遠征に持ってくるのは禁止。試合は遊びではないのだ。



「ふう。さて、次は明日の午前は、予選第3試合か……」

 そんな自由時間の旅館ロビー。
 オレは今日一日の試合結果を見ていく。
 2連勝中のリベリーロ弘前は、本戦トーナメントに進出が確定していた。

 だから先ほどチームメイトたちも、お風呂で騒いでいたのだ。
 緊張感が抜けて、少しだけ気が楽なのであろう。

 結果として、明日の午前の試合は消化試合になる。
 先ほどの食事前のミーティング。コーチの話では消化試合では、主力選手には無理はさせないらしい。

 まだ全員が小学生なので、精神や身体も完成していない。将来のために無理はさせないのだ。

「そして午後から、いよいよ本戦のトーナメントか……」

 明日の午前でベスト16が出そろう。
 そして午後から、その16チームでトーナメント戦が始まるのだ。

 一回でも負けたら即時敗退の、厳しいトーナメント戦。
 一瞬でも気は抜けない。

「そして最後まで勝ち進んだら、相手は横浜マリナーズU-12か……」

 他の予選結果を見る。
 今年も横浜マリナーズU-12は別格の強さ、勝ち進んでいた。
 ここまで圧倒的な攻撃力と守備力により、無失点で勝ち残っていた。

 必ず彼らは決勝戦まで、勝ち進んでいくであろう。
 そしてオレたちも決勝戦まで、負けるつもりはない。

「今年こそは絶対に勝つ……」

 旅館のロビーから夜空が見える。
 オレは冬の鹿児島の夜空に、勝利を誓うのであった。
ツギクルバナー
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