第80話 おねえさんと本格的デート
シュガーリーが倒れてから、トーフの態度が変だった。
女王住居の専属メイドたちは、悪の女性秘書トーフに毒霧スプレーをくらってしまった。
異臭のみの、無害な毒霧だった。
しかし、一応の検査で、味覚に障害が出来ていた。
甘いものを感じ取れなくなる症状だ。
悪の魔力が、引き起こしていた。
「甘いものの味覚がおかしくなるなんて、甘い楽しみが無くなるってことじゃないですか」
キミトくんは、玉緒さんの心配をしてくれた。
「玉緒おねえさんが、心配です」
「キミトくんだって、同じ症状じゃないか」
心配なのは、お互いさまだった。
ちゅちゅんも、ヒヨコメイドたちも味覚がおかしくなっていた。
ヒヨコメイドは、お見舞いで、イチゴをもらったけど、甘くなく、酸っぱいだけだったそうだ。
「ヒヨコたちまで…、許せません」
「忘れろ。男の子」
「無理です。憎いです」
「人を憎んだら、駄目だぞ。笑いなさい」
苦しい時こそ、笑うのだと教える。
この年下の男の子は、真面目すぎる。
世の中の仕組みが、悪いと思うかもしれない。
悪いのは、ずるい人間だけ。
優しい人間は得をすると、教えるのだ。
大人レベルが、低い年下の男の子。
玉緒さんは、そこが、好きになったのかもしれない。
後、味覚障害が治って、退院した。
第80話 おねえさんと本格的デート
糖京都心。甘チョコ区。
近くのコンビニ。
「お付き合いして、初のデートかな」
「えええ。コンビニで、デートですか?」
玉緒さんは、キミトくんと腕を組んでいる。
グイグイ行く、おねえさんだ。
キミトくんも、耳まで熱くなってしまう。
目的は、女王アンコリンとスア丸の午後のおやつである、小さなプリンを2個買うことだ。
「ぼく、玉緒おねえさんと、本格的なデートをしたいです」
「意欲的だな。男の子」
キミトくんは、遊園地デートに夢を持っているらしい。
後は、公園とか、図書館とか、映画館とか静かな場所。
メイド業が、本業だから、夢のままでも良くて。
メイドボーイとして、玉緒さんのお手伝いが出来るだけでも、楽しくて。
本当にやるなら、お取り寄せとかで、あんこの和菓子を注文して、二人で食べたい。
「あんこが好きなのは、わかるが、女王の糖質制限の手前、難しいぞ。男の子」
「ああ、そうですよね。あんこ好きなんですけど」
入院中、味覚障害になっていたが、治った。
基本的に、甘いものが大好きだ。
しかし、糖ニョウ病がある。
皆んな気をつけなくちゃいけない。
「甘いものを一緒に食べる以外、いったい、ぼくと玉緒さんには、何が出来ますか」
「ふふふ。そうだな。男の子。教えてほしいか」
玉緒さんは、コンビニで小さなプリンを2個買い、外に出たところで、メイド服をひるがえす。
「安全な場所で」
「安全な場所ですか」
キミトくんは、息を飲む。
「おねえさんとキスだ」
「え」
呆気にとられるキミトくん。
玉緒さんは、「ふふふ」と不敵な笑みを浮かべながら、メイド服をひらひらさせている。
玉緒さんと、キス?
この美しくも、優しい、おねえさんと?
キミトくんは、言葉を失った。
そんなことをしても良いのだろうか。
出会って、数ヶ月。
新人メイドボーイとメイドサブリーダー。
この関係で、キスを考えるなんて。
つい先日、告白されて、恋人同士になったばかり。
すぐに、キスをする。
キスをして、いいのか。
キミトくんは、迷っていた。
「迷っているのか。男の子」
「は!」
見抜かれた。
さすがは、玉緒さん。おねえさんだ。
「…」
何ということだ。玉緒さんが、目を閉じて待っている。
どうする。
行かなきゃ、男じゃない。
キスがしたい。
ちゅ。
玉緒さんとキミトくんは、はじめてキスをした。
糖京都心。甘チョコ区。女王住居。
玄関。
玉緒さんとキミトくん、恋人同士の二人は、成長して帰ってきた。
「プリンよ〜」
「食べたいワン〜」
プリンに気を取られたアンコリンとスア丸は気づかない。




