第77話 おねえさんに言いなさい
夜眠る時に、おねえさんは考えた。
キミトくん。キミと、両想いだったことだ。
これは、うれしいことだったよ。
おねえさんは、好きな人が空気に思えるタイプで、近くにいてくれるだけで、満足だぞ。
けして、高望みは、しない。
“好き”という気持ちの確認だけでOKだ。
女王アンコリンちゃんも、同じみたいだけど、同居しても、ドキドキじゃなくて、“安心”するんだ。
これから、ずっと一緒に住んでくれるとうれしい。
内気で、弱気な年下の男の子。
キミを、有能なメイドボーイにすることも、おねえさんの仕事なのだ。
優しいキミが好きだから、笑顔が見たいから、厳しくはしないよ。
明るく、楽しい、専属メイド暮らしをしよう。
第77話 おねえさんに言いなさい
糖京都心。甘チョコ区。女王住居。
早朝。メイド集合事務室。
「チュンチュチュン」
訳・今日より、本格的にお手伝いをはじめます。
メイドリーダーのスズメちゅちゅんが、女王住居の間取りが書かれたボードを指差す。
女王住居は、地上2階。地下1階。
女王の私室がメインとなる、住居である。
一応、1階に、応接間と執務室もある。
女王の居間。食卓。保健室。男性客室、キミトくんとヒヨコメイド部屋、シボルさまの部屋、スア丸の寝室が1階。
女性客室、女性メイド部屋、女王寝室が2階にある。
お風呂は、男湯と女湯にわかれている。
地下は、ほぼ倉庫だ。
基本、清掃業者と共同して2階をちゅちゅんと玉緒さん。
1階を、キミトくんとヒヨコメイドたちが担当する。
地下1階は、完全に業者が担当する。
「久しぶりのメイド仕事だな。キミトくん」
「はい。玉緒おねえさん」
恋人同士になった玉緒さんとキミトくんは、目線を合わせて微笑み合う。
「チュンチュチュン」
訳・ひとまず、朝食の準備を手伝いましょう。
清掃業者が、多く入っているためメイド仕事は、かなりラクとなっている。
朝から、レタス大農園直送のトラックが止まっている。
荷下ろしを、専属運転手シボルさまが、手伝っていた。
「チュンチュチュン」
訳・シボルさま。申し訳ありません。手伝います。
「ああ、大丈夫です。毎日やっていますから」
女王専用車の運転手シボルさまは、いつでも、車が出せるように待機している。
女王住居でも、暮らしているため、手伝いに慣れている。
「手伝います。シボルさま」
キミトくんが、レタスの入った箱を、台所へと運ぶ。
「これは、力仕事だね。キミトくん」
「はい」
キミトくんの進む先のトビラを開けてあげる玉緒さん。
今日の朝食は、恒例のレタスコッペパン。
コッペパンの精霊コッペさまが、朝食を担当している。
「レタス運びを、ありがとうですパン」
コッペさまが手慣れた手つきで、レタスを取り出す。
それをちぎって、コッペパンにはさむ。
これを、女王、婚約者、専属メイド、シボルさま、業者の方々の分と、大量に用意する。
「レタスコッペパンは、とても美味しいです」
シボルさまは、毎日、楽しみにしていると言う。
シュガーリー時代では、新人だったシボルさま。
食事は、コンビニのものだった。
「ぼく、あの…」
キミトくんの様子がおかしい。
どうしたのか。
「レタス…苦手なんですけど」
「え。そうなのかい?」
「しおれたヤツのイメージがあるんです」
「新鮮なら、大丈夫なのかな」
「…」
黙り込んでしまったキミトくん。
苦手な様子。
「何故、おねえさんに教えてくれなかったんだい」
「玉緒おねえさん…」
「わたしが、無理やり食べさせてあげよう」
キミトくんの両肩に手を置く、玉緒さん。
しょうがない男の子だ。
食べ物の好き嫌いなど、気にするな。
口に放りこみ、噛んで、食べるだけだ。
こんな単純なことは無いぞ。
「おはよう。玉緒さん。謝罪って、何?」
パジャマ姿のアンコリン。
玉緒さんは、頭を下げる。
「女王アンコリンちゃん。事前に朝食をキミトくんに与えてしまったことを謝罪していいかな」
「え」
玉緒さんは、レタス嫌いのキミトくんに、レタスを食べさせていた。
「に、苦い。…でも、新鮮」
キミトくんは、自分の口をふさぎながら、頑張ってレタスを克服するため、食べていた。




