第71話 運命の女の娘
木の実区。ココナッツ占いの館。
館内カフェ。
お客さまも、うるさくて黒かった親衛隊もいなくなり、クルミちゃんは、ココさまと二人で並んでカウンター席に座っていた。
「カフェから連れ出されたときは、どうなることかと思ったよ。誘拐されちゃったよ」
警察の捜査が終わり、戻って来たいつもの館内カフェ。
恋人同士になったクルミちゃんとココさま。
誘拐された時の話なんてするべきじゃ無かったかと思って、ココさまは黙り込む。
「ココさまのこと、本当に心配でした」
「そうだね。不安にさせちゃうね」
違う話を考える。
この娘の喜ぶ話は、何だろうか。
「何で、好きになったか教えようか」
ヤシの精霊ココさまは、笑顔だ。
「え」
「運命の女の娘を占ったんだ。自分で」
ココさまは、自分で、運命の女の娘を占った。
その後、占いに来た女の娘が、クルミちゃんだった。
可愛いツインテールのミーハーな女の娘。
テレビジョンの雑誌を見て来た、普通の女の娘。
すごく可愛い。
すでに、好きになってもらっている。
うれしいな。
この娘にしよう。そうしよう。
その後、親衛隊が出来たり、落花生大量プレゼント事件が起きたり、誘拐されたりした。
それでも、大好きだったのは…。
第71話 運命の女の娘
「可愛かったからって言うんじゃなくて、“決めた”からだ」
ココさまは、真面目な顔で言う。
決めた。キミに決めた。
自分自身の意志で、決めた。
「クルミちゃんに決めたんだ」
「わたしに…」
決めてくれた。ココさま。
それは、同じ気持ちなのだろうか。
好き。
一緒にいたい。大好き。
「わたしは、ココさまが好きです…」
「うん。うれしいよ」
ココさまが、微笑んでくれる。
ずっと、一緒にいたい気持ち。大好き。
何でも話せる仲良しにもなりたい。
「もう、他の女の娘を見ないで欲しいです」
「うん。良いよ」
軽く答える。簡単だ。
「決めたんだから。キミだけを好きだよ」
「え」
「ワタシ、気長だから末長くよろしくね」
「は、はい」
何だろう。好きの気持ちを受け止めてもらえているような気分がしてくる。
すごく、好きな気持ちがある。
こういう時、受け止めてもらえるのかな。
「ぎゅって、してもらって良いですか?」
「ん。良いよ」
ココさまは、クルミちゃんを抱き寄せた。
ぎゅ。
恋人になった二人は、そのまま、語り合った。
糖京都心。甘チョコ区。女王住居。
午後6時。食卓。夕食時間。
「今日は、腕によりをかけたぜ。女王さんよ」
本日の料理人精霊クックさまは、自慢げだ。
「目玉焼きハンバーグですよ」
メイプルくんが、木の皿を持ってくる。
「夕食大好き〜」
「ハンバーグうれしいワン〜」
アンコリンとスア丸、涙目である。
糖質制限の午後のおやつは、辛いのである。
いつも、午後のおやつに苦しんでいるアンコリンとスア丸は、糖ニョウ病予備軍である。
子供の頃から、甘〜い誘惑に、負け続けた結果だ。
甘いものばかりを、食べ過ぎていたのだ。
しかし、ハンバーグは、食べられる。
薄味。減塩は、気にしない。
クックさまが、ヘルシーな中に、満足するような、食事を考えて作ってくれるのはありがたい。
「女王アンコリン。苦しんでいるんですね」
メイプルくん、察する。
明日の夕食は、お野菜カレーライスにしてくれるという。
「う、うれしいわ。メイプルくん」
「メイプルくんのこと、鬼と思っていたワン」
「鬼では、無いですよ。心がありますよ」
優しく語りかけるメイプルくん。
女王就任の頃から、アンコリンとスア丸の食事管理の一部をまかされている。
甘〜い食生活を送っていた一人と一匹を厳しくしてきた。
全ては、健康のため。
元気に職務をこなすため。
意地悪をしたいわけでは無いのだ。
メイプルくん。アンコリンに片想い中である。
もちろん、スア丸がいるので、秘めるのみ。
「女王アンコリン。クルミちゃんとココさまは、順調にお付き合いをはじめたそうですよ」
「あ、そうなのね。うれしい」
ハンバーグを前に喜び、クルミちゃんのことでも喜ぶ。
「アンコリンは、クルミちゃんの恋を応援して、お手伝いを上手くしたんだワン」
「そうよね。私、クルミちゃんを応援し続けるわ」
前向き女王アンコリン。運命の恋人同士をつなげたのだ。




