第64話 黒い現状
あれは、はじめて占ってもらった時。
「大森クルミといいます」
「クルミちゃんか。何を占って欲しいのかな」
まだ、ココさまのこと詳しく知らなくて、雑誌で見てカッコいいなと思って、占ってもらった。
「好きな人がいるんですけど、両想いになれるか占ってください」
言っちゃった。好きな人は、あなた。
両想いになりたいのは、あなた。
ココさまは、言った。
「好きな人と両想いになれる。大丈夫だよ」
よく当たる占い師。
ココさま。それは、本当?
あなたなんだけど。好きな人。両想いになりたい人。
「幸せになれるよ」
ゆっくりと微笑む、あなた。
だましてる気がして、少し、心が痛んだ。
その後、ココさま親衛隊がうるさいのを知った。
痛感した。
親衛隊が、女学生たちが、成人女性が、たくさん同じ人を好きでいる。恋敵だらけだ。
あきらめたくない。
占いを当ててください…。
第64話 黒い現状
木の実区。ココナッツの館。
館内カフェ。
10数名の親衛隊の女学生がずっと居座っている。
館の外にも数人いて、取りかこまれている。
ココさま親衛隊は、無言の圧力である。
「守れないよ。一回、全員と付き合ってみるか」
ココさまは、座席のソファから立ち上がろうとする。
この状況では、誰も守れない。
守りたい女の娘の話が出来ない。
「全員と付き合って良いわけないだろうが!」
「あなたは、クルミちゃんと付き合うのよ!」
バーニさまとアンコリンが、ソファに押さえつける。
「な、何だい。キミたちは」
「黙れ!」
「黙りなさい!」
正気になれと、さとすバーニさま。
本気で、正気を疑うアンコリン。
ココさまは、何を考えているかわからない。
ココナッツ色の長い髪の男の人は、大きくため息をついて、やれやれとソファに寄りかかる。
「落ち着きましょう。皆さん」
「アンコリン。落ち着くワン」
メイプルくんとスア丸が、止めに入る。
「あの、アンコリンちゃん…」
クルミちゃんも遠慮がちに止めに来る。
「この不器用な男を許すな」
「このわからず屋を、クルミちゃんにあげるのよ」
めずらしく、バーニさまとアンコリンが、一緒になって、イラ立ちながら怒っている。
「お前、守りたい女の娘がいるんだろ」
「そうだよ」
「どの娘だ。わかってるなら、警察に…は、言ってるよな」
バーニさまは短い交流だがココさまという男を理解した。
落花生大量プレゼント事件だの、ココさま親衛隊だのが、黒いのだ。真っ黒だ。
この親衛隊の中に、意中の女の娘がいる。
多分、女王アンコリンが導く女の娘のことだろう。
この娘を、親衛隊たちから“守りたい”わけだ。
「守りたい女の娘がいるわけですね」
メイプルくんも、理解して、考える。
意中の娘は、どういう立ち位置なのか。
血気盛んな親衛隊から、抜け出せないのか。
気づいてないのか。
多分、気づいていない。
警察に頼んでも、何も事件を起こしていない状態では手が出せない。まだ、泳がせている状態。
危険だ。
何かが起こった後では取り返しがつかない。
“守る”のが、ココさま一人。
そして、警察。
甘味イケメン精霊としての役目から踏み込むことになる。
食に関係しない事件には、本来踏み込んではいけない。
警察にまかせるしかないのが、現状だ。
「悪いな。占い師ココ。手伝えるのは警察だけだ」
「本当にすみません」
「良いよ。警察に期待してるから」
ココさまは、深くため息をついてしまった。
警察に期待するのが、もっとも信頼出来る状態だ。
「落花生大量プレゼント事件は、どうなんだ」
食に関係する事件ならば、協力できる。
ただ、落花生宅配業者から、頼んでもいないのに落花生が一箱のプレゼントとして送られてくる事件。
「落花生は、好きなんだけどね」
「送り主は、不明なんですね」
「よくわからないよ」
ココさまは、わからないことだらけだ。
「何事もあきらめたら、終わりだ。守りたいんだろ」
「カッコつける男だな。キミは」
「女の娘の騎士になるのが夢だったよ」
バーニさまは、先代甘味女王シュガーリーを守る騎士になりたかった。
しかし、彼女の涙を10年間見てきた。
泣かせた。
「バーニさまは、騎士よ。間違いないわ」
現在女王アンコリンは、話に、わって入る。
頼りになる甘味イケメン精霊代表。
何でもまかせられる、頼りになる人。
「今回の事件は、黒いぞ。アンコリン」
「黒いのなんて、負けないわ」
「黒いの良くないワン」
アンコリンとスア丸、元気で勝負だ。




