第59話 二人のラブストーリー
江糖区。江の森公園。
オレンジまんじゅう博覧会。当日。
糖京各地から集まったオレンジまんじゅうの展示や屋台が立ち並ぶ中で、人々が大いに押し寄せた。
「皆さま。オレンジまんじゅうをお楽しみください」
太陽神のお言葉で、盛り上がる。
「私は、甘味女王アンコリン。オレンジまんじゅうをたくさん見て楽しんでね!」
可愛く、盛り上げるアンコリン。
オレンジまんじゅう博覧会は、大盛況だ。
「かなりのにぎわいですね」
「アンコリンも女王として、慣れてきているワン」
「スア丸は、本当にアンコリンのことばかりだな」
男、二人と一匹。
楽屋裏で、アンコリンを見守っていた。
「相談があるワン」
めずらしく真面目なスア丸。
「キスって、どうやるワン?」
「相互の同意と勇気…かな」
深く考え込むバーニさま。スア丸も、男だなと思う。
「難しいワン」
「すぐ、キスすればいいじゃないですか」
メイプルくん、雑に考えている。
「な、何で、キスの話してるのよ〜」
楽屋裏に帰ってきたアンコリン。あわてる。
第59話 二人のラブストーリー
「なかなかの盛り上がりであ~る」
「本当ですね」
まんじゅうの精霊マンジュさまと万田さんは、二人で、離れたところから博覧会のにぎわいを見ていた。
「ところで、絵本作りを手伝って欲しいである」
「絵本作りですか?」
マンジュさまの趣味。絵本作り。
落書き帳に、描く。小さな趣味。
今回、作った“ドラまんじゅう”は、上手く完成できそうなのだ。
主人公のモデルは、万田さん。
憧れの男の人は、まんじゅう屋の主人。
それには、起承転結があるのだと言う。
まずは、起。
「出会ったのであ~る」
「まんじゅう屋さんの主人とですか?」
「そうなのである」
次に、承。
「まんじゅう屋で働きはじめたのであ〜る」
「主人公が、ですか?」
「真っ白な着物を着た、看板娘となったのである」
そして、転。
「まんじゅう屋の主人に告白されたのあ~る」
「す、好きって言われたんですね?」
「好きと伝えたのである」
問題が、結。
「最後が、思いつかないのであ~る」
「エンディングは、重要ですよね」
「そうである。告白の後は…」
悩むマンジュさま。答えが出てこない。
恋愛小説風になった絵本“ドラまんじゅう”。
どうやって、エンディングを迎えればいいのか。
そこへ。
「マンジュ。こんなところでどうしたのですか?」
「…ゲストじゃないのか」
シュガーリーとソルトが来た。
「シュガーリー!うれしいであ〜る」
美しい女性シュガーリー、目の保養になる。
「…」
万田さん。黙り込む。
マンジュさまが、とてもうれしそうだ。つまらない。
「…わたし、帰ります」
万田さんは、立ち上がろうとする。
「駄目であ〜る。オレンジまんじゅう博覧会の途中である」
マンジュさまは、腕を強くつかむ。
「痛いです。離してください」
「駄目である。離れたくないであ~る」
抱きしめる。
マンジュさまは、万田さんと離れたくなくて抱きしめる。
心が落ち着く。
好きな女性。柔らかく、生きている鼓動。
「一緒にいて欲しいとわかって欲しいであ~る」
「…はい」
万田さんは、顔が熱くなる。
大きな身体。たくましい男の人の鼓動。
面白い人。マンジュさま。
でも、男の人。
綺麗な顔。優しい人柄を、近くで感じる。
この人を“好き”。
意識する。
シュガーリーとソルトは、そっとこの場を去った。
「二人きりであるな」
二人きり。遠くでにぎわうオレンジまんじゅう博覧会。
「気が早いであるが、良いであるか?」
「何でしょう?」
抱きしめ合ったまま、マンジュさまは言った。
「結婚しようである」
「え」
大人の恋愛。やっぱり結末は、結婚だろう。
「絵本のエンディングにするである」
「ああ、絵本のエンディングですか」
二人は、仲良し。
結婚も、いずれ本当のことになるはずだ。
ラブストーリーは、ゆっくりと続いていく。




