第58話 オレンジまんじゅう博覧会
江糖区。江の森公園。
オレンジまんじゅう博覧会。前日。
多くの準備が行われていた。
下見に来た、まんじゅうの精霊マンジュさまと万田さん。
甘味女王として、アンコリンたちも出席が決定した。
先代シュガーリーとソルトも来ると言う。
「江糖区の区長、衛藤だ」
「まんじゅうの精霊マンジュであ~る」
区長と握手を交わすマンジュさま。
万田さんは、そのすぐ後ろで見守っている。
「アンコリンちゃん」
声をかけられた。ゆず色の髪の天使ユズエルだった。
「ユズエル。元気?」
「うん。元気かも」
アンコリンとユズエルは、手を振る。
「またお会いできて光栄です」
礼儀正しい口調の太陽のラー神さまもいる。
ユズエルは、その腕につかまっている。
仲良しだ。
あれから、天界の仕事は、弟神と大天使たちと上手くバランスを取っているらしい。
「黒かったからな」
「もう、そう言わせないようにしてみせます」
バーニさまの指摘に、ラー神さまは、決意を表明する。
未来は、全て上手く行く。
そうすれば、世界は、永遠に明るくなるだろう。
第58話 オレンジまんじゅう博覧会
「オレンジまんじゅうは、色んな趣向があって個性的なものばかりであ~る」
まんじゅうの精霊マンジュさまは、資料を見ながら、オレンジの多様性に感心していた。
「本当です。すごく綺麗なものばかりです」
資料を一緒にながめている万田さん。
オレンジまんじゅうは、魅力的だ。
「万田さんの方が綺麗である」
「そ、そう言わないでください」
マンジュさまは、照れる万田さんを笑顔で見守る。
その後、公園のベンチに一緒に座ろうと誘う。
「ぼくは、シュガーリーが大好きだったのである」
「は、はい…」
「落ち込まないで欲しいのである。今は、万田さんが、一番大好きなのであ~る」
「そ、そうですか?」
うれしくない。
あのシュガーリーという、美しい女性に勝てる気などしないからだ。
「美しさなのである。ぼくは、美しいものが大好きなのである」
「そう…ですか」
万田さんは、自分が美しいなどと思わない。
がっかりする連続だ。
「万田さ〜ん。ごめんなさいであ~る」
「いえ。良いんですよ…ご自由で、どうぞ」
「ああ、だから。ぼくは、美しいものを題材に絵本を描くのが本来の趣味なのである」
「…絵本ですか?」
「そうであ~る」
恋愛小説を書くのは、本来の自分では無い。
下手でも、絵本を描くのが趣味なのだ。
絵が下手で、文章も下手。
結局、完成させたことが無い。
「恋愛小説を書こうとしていたら、万田さんに出会えたのである。ドラまんじゅうを、今度は、絵本に戻して、完成させたいのであ~る」
「恋愛小説を絵本にするんですか?」
「おかしいであるか」
「おかしいですよ。絵本は、子供が見るものですよ」
「子供用では無くて、趣味用である」
マンジュさまは、大真面目で万田さんの瞳を見つめる。
「シュガーリーに見せたかったものを、万田さんに見せたいと思うようになったのである」
「…はい」
「シュガーリーには、ソルトがいるのである。いつまでも片想いを続けるつもりは無かったのであ~る」
片想いなんて、続けたくない。
両想いになりたい。
マンジュさまだって、自分だけの女性を求めていたのだ。
「わたしは、運良く出会えたと言うことですか?」
男女の出会いなんて、そんなものである。
運命の相手だった二人。
「最初は不安にさせられたが、アイツも男だな」
親友マンジュさまを、見直したバーニさま。
「あの二人。恋人同士になったばかりなのよね」
「出来立ての仲良しだワン」
アンコリンは、スア丸と手をつなぐ。
「私たちも、もっと仲良くしたいわよね」
「もちろんワン。キスをしても良いワン」
「キ、キス…」
「ボクに遠慮しなくていいですよ。どうぞ」
メイプルくん、うながす。
「む、無理よ。恥ずかしいわ〜」
両手で顔を隠す。顔が熱くなってしまった。
アンコリン。純情なので、キスすらしていないのだ。




