第56話 ドラマのヒロインのように
ドラマ。
物語仕立ての演劇。
多くは、フィクション。現実じゃない。
その中でも、恋愛ドラマは、ヒロインが“恋”をする。
江糖区。近所の道中。
マンジュさまと万田さんは公園を出た。
公園は、子供の遊び場だ。
親子連れの子供が、ちらほらやった来たので帰路につく。
まんじゅう屋は、すぐ近くだ。
「…」
「…」
万田さんとマンジュさまは肩を並べて歩いていた。
「ここで、考えていた恋愛小説の話題なのであるが…」
「はい」
マンジュさまの考える、恋愛小説“ドラまんじゅう”。
そのヒロインは、万田さんがモデル。
憧れの人は、まんじゅう屋の主人。
「こんな風に、二人きりで歩いている時、言うのである」
「はい」
背の高いマンジュさまを見上げる。
マンジュさまは、言った。
「あなたのことを“愛している”のであ~る」
第56話 ドラマのヒロインのように
江糖区。マンジュまんじゅう屋。
お店の入り口を掃き掃除していたまめ子ときな子が、マンジュさまと万田さんを見つける。
二人して、顔が熱そうだ。
「ホーホケキョ」
訳・どうしたんだろう。
「何かあっただか」
きな子は、様子をうかがう。
店内。お客さまは、数名いる。
「いらっしゃいませ」
営業スマイルをするアンコリン。
接客が得意だ。
「ア、アンコリンちゃん!」
万田さんが、接客をしていたアンコリンに飛びつく。
「こ、告白されたんです。うれしくて…」
「それは、すごいことだわ」
相手は、マンジュさまか、確認する。
うれしそうに、万田さんが何度もうなづく。
うれしくて、うれしくて、しょうがない様子。
「マンジュさまに告白されたのかい。店員さん」
「おめでとう。店員さん」
二名のカップル客が、拍手してくれる。
アンコリンたちも、拍手する。
江糖区。101回目温泉。
足湯。
店番をアンコリンたちにまかせて、足湯に来た。
「ぼくらは、もう恋人同士であ〜る」
「え。もう、恋人同士なんですか」
マンジュさまのひと言で、胸がときめく。
告白をした。もう二人は、恋人同士。
「わ、わたし、何をすればいいのか、わからないです」
「ただ、そばにいる。この一択である」
「は、はい」
恋の初心者。無知。鈍感。
ロボットと言われてきた学生時代を過ごした万田さんは、恋は何をするものなのかわからない。
言ってしまおう。
「…わたし、学生時代にロボットって言われてきたんです」
「え。ロボットであるか?」
マンジュさま、驚いている。
嫌われてしまったかな。
「ロボットは、ロボット。万田さんは、女性である」
無表情は、心を閉ざしているからである。
無関心は、目をそらしていたからである。
無知は、皆んな、最初は何も知らない。当然。
鈍感は、色んなことを経験していない証拠。
頭の中で考えてばかりいないで、心を閉ざさないで、心を外に向けて、色々なことを知るのだ。
「万田さんは、世間と上手く交流できていないのである」
「仕事場で上手く人間関係をきずけません」
「親友がいないのであるか。万田さんは」
マンジュさまが指摘する通り、万田さんは、親友どころか友達がいない。
「それは、寂しいのである」
「はい…」
落ち込んでしまう。
大人なのに、上手く人付き合いが出来ていない。
こんな自分は、マンジュさまに相応しいのだろうか。
「マンジュさまが、友達になってくれれば良いんですけど」
都合のいいことを考える。
「友達、全然OKであ〜る。親友であり、恋人である」
「う、うれしい…です」
「万田さんは、寂しいのであるな。ぼくのような変わり者となら、楽しく過ごせるのであ~る」
「え…」
楽しく過ごせる。良いな。
友達で、親友で、恋人。良いな。
「では、これから、よろしくであ~る」
「はい。よろしくお願いします」
微笑み合う。
万田さんは、なかなか上手く微笑えたと思えた。
人付き合いは苦手だったけど、この人と乗り越えたい




