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あんこデラックス  作者: キノぴょ
5章 〈ドラまんじゅう〉
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第55話 嫌いにならないで

 江糖区。近くのまんじゅう公園。

「う…う…」

 誰もいない公園。ベンチの上で、万田さんは泣くのをこらえていた。

 あんなに面白い人。カッコいい人。

 自分なんか好きになってくれないに決まってる。

 すぐ泣く。すぐあきらめる。

「あ」

 気づくと、マンジュさまにもらった白いまんじゅうの着物を着ていた。

 ベンチに座って汚れてしまったかもしれない。

 怒られるんだ。

 怒られて、お別れだ。



「万田さんであるか」

 ゆっくり、マンジュさまが歩み寄る。

「う…」

 万田さんは、服の袖で、涙を拭いた。

 また、汚してしまった。

 怒られる。

「お、怒らないでください。う…」

 泣き声で、言ってしまった。

「誰かに、泣かされたのであるか。けしからんヤツである。犯人は子供であるか?」

 マンジュさまは、万田さんの両肩をつかむ。

 泣かせたのはマンジュさまだ。



 第55話 嫌いにならないで



 江糖区。饅頭邸。

「シュガーリー。万田さんがいないの?」

 アンコリンは、驚いて、立ち上がった。

 今頃、仲良く店番をしていると思ったからだ。

「マンジュが、探しに出ました」

 店番をソルトがしている。

 アンコリンは、マンジュさまが、恋愛小説を書こうとして、一般女性の万田さんとお付き合いをはじめたと教える。

 万田さんは、面白い方が好きで、マンジュさまのことを大好きになった。

「あのマンジュが探しに行ったのか。ならば、今回も上手くいくかもしれないな。アンコリン」

「え。わかるの?」

「あのマンジュって男は、その気になりやすい男だからさ」

 バーニさまは、マンジュさまの親友だ。

「わたくしを忘れていくのですね。バーニは、どうなのですか?」

「…」

 バーニさま、目をそらす。

 まだ心は、シュガーリーに向いているのだ。

「シュガーリー。バーニさまは、まだ想い続けているのよ」

「まあ、わたくしには、ソルトがいるのに」

 先代と現在。二人の女王が、バーニさまを見つめる。

「オ、オレのことは、忘れてくれ」

 いつも頼りになる氷菓の精霊バーニさま。

 自分の恋心は、隠したい様子。

「そんなことより、万田さんは、大丈夫なんですか?」

 メイプルくん、バーニさまの想いは、そんなことなのか。

「大丈夫さ。全ての未来は必ず上手くいくからな」

 バーニさまは、未来を信じている。



 江糖区。近くのまんじゅう公園。

「嫌いにならないで欲しいのであ~る」

 マンジュさまは、万田さんに、頭を下げた。

「万田さんのことが、気になりはじめているのである」

 気になる存在。

 好きのはじまり。

 それを伝えた。ボサボサ髪のマンジュさまは、綺麗な瞳で見つめてくる。

「怒って…ませんか?」

「怒ってなんていないのであ〜る」

「お着物、汚しました…」

 真っ白なまんじゅう柄の着物。

「き、嫌いに…ならないでください」

 悲しくなった。

 嫌われたくない。

「嫌いにならないであるよ」

 マンジュさまは、微笑んだ。

 頑張っている一般女性。

「一緒に微笑ってほしいである」

 一緒に、頑張りたい。

「わたし、笑顔が苦手なんです」

「練習すればいいであ〜る」

 何事もこれから。

 何でも、これから頑張っていけば良い。

 この女性への気持ちは、すでに一つの言葉に近い。


「ぼくは、先代甘味女王シュガーリーが好きである」

 甘味イケメン精霊は、全員、シュガーリーの美しさに夢中だった。マンジュさまも、その一人。

「でも、変われるのである」

 シュガーリーの一番は、幼なじみのソルト。

 想っても、その気持ちは交差しない。

 だから、新しい“恋”を探してもいいのかもしれない。

「万田さんに変わるのであ〜る」

 “恋”という言葉を、この女性に持つ。


「変わる…ですか?」

 万田さんは、迷っていた。

 都合良く考えたら、この人と両想いになれる?

 自分の、持っている感情。

 この名前が、もう少しでわかる気がした。

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