第52話 着物美人
少女マンガの登場人物は、幸せになれます。
まず、好きな人に出会えます。
大好きになれます。
でも、わたしの恋は、はじまっていません。
少女マンガの登場人物になりたいです。
大好きになれる人に会わせてください。
この人ですか?
出会いました。カッコいい方です。
嘘をつかれました。
新手のロマンス詐欺です。
他に好きな女性がいるそうです。
何ですか。この男の人。
まんじゅうの精霊マンジュさまといいます。
先代シュガーリー好きで有名な、甘味イケメン精霊の一人らしいです。最低です。
でも、カッコいいです。
少しだけ、好きになっています。
第52話 着物美人
江糖区。マンジュまんじゅう屋。
「着物があるのであ~る」
ボサボサ髪のマンジュさまは、タンスの中を探している。
「着物ですか?」
「そうである。シュガーリーに渡そうとして、サイズが大きかったヤツであ~る」
「わたし、サイズ大きく見えますか…」
「あったである」
砂糖色の綺麗な着物。白すぎて、白無垢に見える。
柄がまんじゅうになっていて、“饅頭”と、漢字の刺繍が入っている。
「これを着ていいから、まんじゅう屋の売り上げに貢献するである」
「は、はい」
砂糖色の着物を着た万田さんが、店番をはじめると、一人の…というより団体の客が押し寄せた。
皆んな、女王アンコリンとか、氷菓の精霊バーニさまとかにオススメされたと言う。
特に、太陽神のラー神さまが好むというオレンジまんじゅうを買っていくお客さまが多かった。
「お客さま。たくさん来ますね」
「予想以上の売り上げであるな。万田さん」
「はい」
名前を呼ばれて、ときめいた。
見つめ合う。
「バーニたちのおかげである」
マンジュさまの笑顔だ。
「はい」
万田さんも、不器用に笑顔になれた。
二人は、協力して、お客さまにまんじゅうを売った。
30名ほどといったところか。
「売り上げは伸びたのである。オレンジまんじゅうは、大量に30箱注文していたのであ〜る」
「ちょうどですか」
「完売である」
喜びで、手を取り合う二人。
見つめ…合えない。
マンジュさまが、視線をそらす。
スマートフォンを取り出して、恋愛小説のメモを打つ。
「万田さんを主人公にして、恋愛小説を書くことにするのである」
「え、えええ」
「タイトルは、“ドラまんじゅう”。まんじゅう屋で働く女性が主人公のラブロマンスであ〜る」
タイトルが、明らかにダサい。
しかし、マンジュさまは、大真面目に創作メモを作る。
「そ、それ。相手役は、誰なんですか?」
「バーニのような熱血漢である」
颯爽と現われるバーニさま似の熱血漢と恋に落ちる。
ラブ・まんじゅう・ロマンスだと言う。
それは、困る。
バーニさまには悪いが、あの手の熱血漢は好みでは無い。
「あの…」
「何であるか。万田さん」
「相手役は、まんじゅう屋の主人をしている方にしてもらえませんか?」
「まんじゅう屋の主人は、ぼくである」
万田さんは、マンジュさまとの恋愛小説をお願いする。
「ぼくとの、恋愛小説であるか?」
「は、はい」
「ぼくと万田さん…」
「はい」
出来る限りの笑みを浮かべる。万田さん。
「そ、それは、恥ずかしいである…」
自分を投影して、恋愛小説など書くのは、照れる。
「マンジュさまと万田さん、良い感じね」
「僕たちのように、ラブラブになると良いワン」
お店の外で、腰に両手を当てるアンコリンとスア丸。
「マンジュのヤツ。結構、良い男になってきたな」
「このまま、上手くいくと良いですね」
バーニさまとメイプルくんは、うなづき合う。
「ホーホケキョ」
訳・意外と上手く行きそう。
「行方が気になるだぞ」
まめ子ときな子も、うなづいている。
大人同士の恋は、静かに進んで行く。
嘘恋無しの関係は、意外と順調に行くのかもしれない。




