第51話 文章を書くため
江糖区。101回目温泉。
足湯。
「足湯は、良い気持ちであ〜る」
ボサボサ髪のマンジュさまは、革靴とくつ下を脱いで、足湯になごんでいる。
「本当に、足湯は良いですね」
普段着の万田さんも、靴とくつ下を脱いで、足をつけている。
マンジュさまはイケメン甘味精霊で、万田さんは、ときめいていた。その、手はつないだままだ。
男の人と付き合ったことなど無い。
少女マンガに夢見てきた、不器用な性格。
今まで、上手く、男の人と向かい合えなかった。
でも、理想は高い。
この男の人は、とてもカッコいい。
理想に近い。
お付き合い出来るなんて、うれしい。
突然だったけど、どうして気に入ってくれたのだろう。
顔?性格?
どっちでも、いいか。
これから、この男の人とお付き合い出来るなんて、まるでドラマみたいだ。
第51話 文章を書くため
足湯。
足だけ、つかる温泉。
「見つけたぞ。マンジュ」
バーニさまが、マンジュさまを羽交いじめにする。
「うわ。何である」
「嘘つきになるなよ」
「マンジュさま。悪ふざけはいけないわ」
「足湯ずるいワン」
次々と、マンジュさまに詰め寄るアンコリンたち。
足湯から、引きずり出す。
「な、何をするのである」
「お前の一番好きな女性の名前を言え」
「シュガーリーだけである」
「じゃあ、やめろ」
「バーニも、シュガーリーが一番好きなはずであ~る」
「あら。バーニさまって、先代シュガーリーのことが、変わらず好きなのね」
アンコリン、バーニさまの一途な一面を見つける。
「オレのことは、いいから」
「シュガーリーのこと以外、好きにならないであ~る」
「シュガーリーって、先代甘味女王さまですか?」
万田さんは、甘味イケメン精霊のマンジュさまが、シュガーリーを好きなのを知る。
「わたしとお付き合いっていうのは…」
「恋愛小説を“書くためだけ”である」
「…」
万田さん、下を向く。
甘味イケメン精霊は、全員、先代甘味女王シュガーリーを好きだと言うウワサを聞いたことがある。
このマンジュさまも、シュガーリーが好き。
万田さんのことは、好きじゃない。
「あ、そうなんですね」
勘違いした。それだけだ。
万田さんは、モテたことは無い。
誰にも、好きだって思われたことは無い。
勘違いだ。損した。
涙は、流れない。
怒りもこみ上げない。
ただ、がっかりしてしまった。
「もう、良いです」
この場を去ろう。足湯をやめる。
くつ下と靴を持って…。
裸足で、歩きはじめる。
「待って、万田さん」
アンコリンは、万田さんを呼び止める。
現在の甘味女王が、自分であることを告げる。
甘味イケメン精霊のマンジュさまの失態をあやまる。
女王の権限を使って、甘味精霊のマンジュさまに、何でもやらせると約束する。
「甘味女王アンコリンちゃん?」
万田さんは、がっかりしているままだ。
マンジュさまとお付き合いできると思っていた。
何でもしてくれるなら、やっぱりお付き合いして欲しい。
「わかったわ」
女王アンコリンは、甘味精霊のマンジュさまに、万田さんとの真剣お付き合いを命令する。
「し、真剣お付き合いであるか」
あわてるマンジュさま。
心は、シュガーリーに捧げていると言う。
アンコリンは、許さない。
一度、女性にお付き合いを要求したら、責任問題だ。
「女王アンコリンであるか。ぼくは、あなたを甘味女王とは、認めていないのであ~る」
「黙りなさい。言うこと聞くのよ」
ビシッと、指先を突きつける。
認めていなくても、アンコリンは、現在の甘味女王だ。
甘味イケメン精霊たちに命令する権限を持っている。
「マンジュ。責任を取れ」
「う~む。ぼくは、悪い子になっているであるか」
「極悪よ」
女性の気持ちをもてあそぶなど、言語道断だ。
「わかったのである。しかし、ぼくは、理想が高くて、シュガーリークラスの美女でなくては…」
マンジュさま、万田さんを見つめる。
悲しそうだ。
「そうであるな。まずは、うちのまんじゅう屋の従業員でもしてもらうである」
反省しながら、ちゃっかりしているマンジュさまだった。




