第50話 ドラマがはじまる
江糖区。マンジュまんじゅう屋。
バーニさまの親友、まんじゅうの精霊マンジュさまの経営するまんじゅう屋。
ありとあらゆるまんじゅうを置くお店。
お取り寄せも受け付けている。
しかし、お客さんがいない。
店内は、ガランとしている。
「マンジュ。いるか…?」
声をかける。
店内の奥に気配がある。
「…恋がしたいのであ~る!」
大きな声がした。
ちょっと変わったしゃべり方の男の人の声だ。
「おいおい。マンジュか。どうした」
「…バーニ!」
店内の奥から出てきたのは、ボサボサ髪の青年。
瞳は綺麗で、イケメン精霊。
「恋愛小説を書きたいのであ~る」
「は?」
「他の小説では、意味が無いのであ〜る」
「お前は、簡単な絵本を考えるのが趣味だっただけだろう」
「恋愛小説を作るのであ~る。シュガーリーを喜ばせたいのであ~る」
「…シュガーリー?」
甘味イケメン精霊のマンジュさまは、引退したシュガーリーと連絡を取り合っている。
その際、恋愛小説を読みたいと言われたらしい。
「シュガーリーの望みを叶えたいのであ~る」
第50話 ドラマがはじまる
先代シュガーリー。
10年前。糖京の食を守る女王制度により、甘味女王となった砂糖の女性精霊。現在は、引退して、幼なじみの塩の精霊ソルトと暮らしている。
「バーニ。お前も、シュガーリーのことを好きだったはずであ~る。協力するであ~る」
「何でだ。恋愛小説なんて書けるのか?」
「未知の領域であ~る。挑戦あるのみであ~る」
バーニさまとマンジュさまは、言い合っている。
遠くで見ていたら、お客さんが入ってきた。
女性だ。
「好きであ~る。お付き合いして欲しいのであ~る」
「え」
「ぼくは、マンジュという甘味精霊であ~る」
「わ、わたしは、万田葉子です…」
自己紹介をし合う。
万田葉子。26歳。
金髪のボブカットの女性だ。
普段着で立ち寄った、近所の住民のようである。
「オレンジまんじゅうを買いに来ただけなんですが」
「恋愛小説を書きたいから、お付き合いをして欲しいのであ~る」
まんじゅうの精霊マンジュさまは、恋愛小説を書きたいがために、初対面の女性にお付き合いをお願いしていた。
巻き込まれた女性の万田さんは、戸惑っている。
「おいおい。マンジュ。正気か」
「おお。台詞が降ってくるようである」
マンジュさまは、ポケットから、スマートフォンを取り出し、メモ入力をはじめる。
「わたし、男の人に、お付き合いを申し込まれたのはじめてです…」
万田さんは、顔を熱くしている。
ときめいているのだ。
「こんな恋のはじまりって、あるのね」
感心するアンコリン。
「ホーホケキョ」
訳・何か、ドラマみたい。
「続きが気になるだな」
女の娘組は、突然の告白を見て、ワクワクしている。
「責任取れよ。マンジュ」
「恋愛小説は、はじまったばかりであ~る」
メモを終えて、スマートフォンをしまう。
マンジュさまは、万田さんの両肩に手を置く。
「足湯デートをするであ~る」
「は、はい」
万田さんは、緊張して、声が裏返る。
そのまま、手をつないで、出かけてしまう。
「店番を頼むである」
マンジュさまと万田さんの後ろ姿を見送る。
「…駄目だ。アイツ」
頭をかかえるバーニさま。
「アンコリン。アイツは、シュガーリーが好きなんだ。あの女性のことを好きと思っていない」
「そんなのヒドいわ」
「遊びワン?」
「ホーホケキョ」
訳・女の娘を傷つけるの良くない。
「どうするだ」
「話し合いで解決しましょう」
メイプルくんは、一人、冷静に判断する。
シュガーリーを想う甘味イケメン精霊は、無数にいる。
バーニさまも、その一人だ。
心の底で、シュガーリーを想っている。
マンジュさまも、同様。
シュガーリーを好きなのに、他の女性と付き合って、上手く行くはずも無い。
「嘘恋は、良くないわね。止めるわよ」
アンコリンたちは、マンジュさまを止めに行く。




