第47話 神さま、大好き
天界。
「父神さまのように、立派な神さまになります」
ラー神さまは、たくましい父神オシリスを誇りに思っていた。それを、支える母神イシスが好きだった。
「苦しくなった時、神もささえ合う存在が必要である」
父神オシリスは、天界の絶対神として、君臨していた。
ささえ合う存在が必要とは、何だろう。
父神オシリスは、完璧で、完成されている。
それは、母神イシスがいるから。
「出会わなくてはいけないのだ。お前も」
出会うとは?
天界の皆んなは、全員、大切で、かけがえのない存在。
ささえ合う存在。それは、皆んなじゃないですか。
皆んなが、一番大事。皆んなが、大好きになってくれる存在なのではないのですか。
父神オシリスと母神イシスは、見守っている。
指をさす。
その先には、今まで誰もいなかった。
皆んなは、その先にはいないとわかったのだ。
その向こうには、一人の女の娘が待っている。
ゆっくりと、手を伸ばす。
第47話 神さま、大好き
糖京都心。甘味宮殿。
食卓。
午後12時。
昼食時間だ。甘味イケメン精霊たちが、再び、オレンジだらけの食事を取っている。
飲み物は、全て100%オレンジジュース。
食べ物は、オレンジ丸ごと。
在庫にオレンジだらけなのである。賞味期限までに食べきらなくてはいけないのだ。
「アンコリンちゃん。今日こそ、言う」
天使ユズエルは、両手に力を込める。
「もし、今度も泣かすようなヤツだったら、ずっとオレンジ禁止令を出すわ」
「オレンジを禁止にしてやるワン」
「うん。…多分、上手くいかないからそうなる。きっと」
ユズエルは、弱気だ。
自分に、自信が無いのだ。だって、相手は神さまだ。
上手くいくわけなんて無い。
性格も悪いし。取りえも無いし。
でも、告白を絶対にしたい。
我がままな心が、ずっと叫んでいる。
神さまのこと、自分が一番、大好きなんだって。
「…」
黒い長い髪のラー神さまは、思い詰めた表情でオレンジを見つめている。
手に持って、かぶりつこうか迷っている。
「…気持ちを伝えたい」
遠くで見つめる。天使ユズエルは、勇気をふりしぼっている真っ最中だった。
頑張って、心の底から勇気を持ってくる。
神さま。大好き。
大好きな人に、言えるかな。
行ける。
歩み寄る。
「あの…、神さま。ごめんなさい」
ユズエルは、ゆっくりと近づいて、頭を下げた。
「…」
ラー神さまは一瞬、無言になった後、同じく頭を下げた。
「俺が、仕事ばかり考えていて申し訳ありませんでした」
優しい神さまだ。
いつもの、神さま。大好き。
言おうかな。
また、泣くことになるかな。
言う。
「…大好き…」
ひと言だけね。小さい声でね。
期待してないの。
どうせ無理だもん。
だけど、神さま言うんだ。思いがけない言葉を。
「俺も、好きです」
何で?そう思う。そんなわけ無い。
神さまと、接点、全然無いんだ。
その他大勢の天使の一人。
しかも、性格、悪いんだ。
神さまのことなんて、好きになっちゃうんだ。
「ずっと、独りでした」
神さまは、言う。
誰にも、好きと言われたことは無い。
ずっと、孤独だった。
ただ、天界の皆んなが大好きだった。
でも、返ってくるのは、“ありがとう”だった。
“大好き”じゃなかった。
「誰かに、大好きになって欲しいです…うう」
神さまが、泣いた。
神さまが泣いた。
ありがとうは、いらないの?
大好きが、欲しいの?
「神さま、泣かないで」
なでなで。
神さまの頭をなでてあげる。
この前のお返し。
「俺を“好き”になってくれてありがとうございます…」
泣いた後の神さまと手をつなぐ。
男の人の手だなって、思った。
神さまに、“ありがとう”を言うのは、皆んな。
“好き”と言ってくれるのは、一人の女の娘だった。
その後、客室に戻った神さまは、疲れてすぐに眠ってしまったそうだ。
ユズエルは、その神さまの寝顔を見守った。




