第45話 芽生えた感情
糖京都心。甘味宮殿。
応接間。
「うえーん。うえーん」
ユズエルは、肩を揺らして泣いている。
全ては、神さまが悪い。
天界のトップ。
父神オシリスと母神イシスの息子ラー神さま。
天界の仕事を一気に請け負い。いそがしい。
天界は、ブラック企業だ。
一人のトップが、仕事ばかりしている。
そのトップ。
太陽のラー神さまは、すぐに、天使ユズエルのもとに駆け寄った。
「貴方は良い子です。何も悪くないです」
なでなで。
ラー神さまは、ユズエルの頭を優しくなでてくれる。
「ひっく…ひっく…」
「怖く無いです。大丈夫です」
なでなで。
「俺が助けますから。泣きやんでください」
最後に、ユズエルを優しく抱き寄せた。
神さま自身も、無意識のうちに、だ。
好きになってもらっている。
そのつながりが、感情を呼び起こす。
恋がはじまった。
第45話 芽生えた感情
「俺は…」
言えない。ためらう。
これが、切なさなのか。
気づくと、独りで呆然としていた。
客室に閉じ込められた。ラー神さまは、天界に返してもらえない。
それでも良い。
一つ、感情が手に入った。
人間が、“好き”と呼ぶ感情を手にした。
応接間。
仕事バカのラー神さまを、客室に追いやって、皆んなで、ユズエルをなぐさめた。
「大丈夫?」
「元気出すワン」
「ホーホケキョ」
訳・とんでもないヤツだったね。
「泣くほど悲しいだな」
「う、うん…」
泣いてしまったユズエル。
不思議と今は、落ち着いている。安心している。
抱きしめてもらったからだ。
オレンジの洗剤の香りが残っている。
大好き。
憧れの神さま。想像以上に、“男の人”だった。
大きくて、がっしりした男の人。
異性。
ドキドキする。仕事をする方だから、たくましいのだ。
どうしよう。
会いたい。
大広間。
「泣かせたんですか?ユズエルさんを」
オレンジシャツのメイプルくんは、驚いている。
太陽のラー神さまが、誰も好きじゃないと言ってたから、天使ユズエルの気持ちに応えると楽観視していたのである。
「ヒドいのよ。お仕事の話ばっかりして。ラー神さまのお仕事って、何なのかしら」
「アンコリンと同じワン?」
「女王アンコリンのお仕事は、書類へのサインですよ。ラー神さまのお仕事は、天界の運営です」
メイプルくんは、簡単に説明する。
天界の運営。
天界に住む天使の毎日を、上手く運ぶ仕事。
苦情や、困ったことをサポートしたりもする。
「わからないわ…」
「ゲームの運営なら聞いたことあるワン」
「ああ、良いです。いそがしい仕事。それだけです」
メイプルくんは、アンコリンとスア丸に上手く説明することをあきらめる。。
バーニさまが、女王シュガーリーを想うように。メイプルくんは、女王アンコリンを想っている。本当に、この女王は真面目なだけの自分に仕事を増やしてくれる。
「何とか、こらしめることは出来ないかしら」
「確かに、ムカつくワン」
相手は、天界の神さまだ。こらしめるまでは、やり過ぎだろうと止めるメイプルくん。
しかし、アンコリンとスア丸は、許せない。
女の娘。天使ユズエルを泣かせたのだ。
それ相応の罰を与えるべきだ。
「やり過ぎですよ?」
でも、あなたの、我が道を行くところ良いと思いますよ。
「髪の毛を全部、そる」
「やり過ぎですよ!」
前言撤回。我が道を行きすぎてはいけません。
「太陽のラー神さまは、甘味女王より上位の方なんですからやり過ぎては駄目です」
「知らないわ。ムカつくんだもの」
「こらしめるワン」
女王アンコリンとスア丸は、ご立腹である。
ここへ、オレンジジャケットのバーニさまが現われた。
「朗報だ。太陽のラー神さまが、反省しているらしい」
メイプルくんに向けて、「心配は、無い」と言う。
聞いてきたのだ。
太陽のラー神さまに芽生えた感情を。
「なるほどですね」
本当に、女王アンコリンは、奇跡を起こす。
神さますらも、導いてしまう。
「あ、オレンジ禁止令なんて、どうかしら」
アンコリン本人は、こらしめることで頭がいっぱいだ。




