第40話 ポカポカの魔導書
神さまのことが好き。
それは、絶対叶わない恋心。
でも、好きなの。放っておいて。
いずれ、忘れるつもりだから。
こんな風に、性格の良くない女の娘なんて、誰も見向きもしないんでしょう。
でも、ね。
神さまは、放っておかないの。
手を差し伸べられたことがあるの。
「一人なんですか?一緒に、オレンジ食べませんか?」
「え。うん」
ものすごくうれしかったの。
顔、熱かったもん。照れまくった。
顔も名前もおぼえてもらっちゃったんだ。
でも、一回きり。二人きりになれない。
神さまの周りには、いつも人がいて、あーだこーだ、お仕事ばかりしているの。
わたしのことなんて、考えてないよね。
考えて欲しいな。
わたしのことばかり考えて欲しいな。
無理かな。
何でだろう。
あきらめる気持ちになれない。
第40話 ポカポカの魔導書
甘チョコ区。最大図書館。
このジャパン国の全ての書物を集めた国内最大の図書館。
会員制で、大人しか書物にさわってはいけない。
アンコリンとスア丸は、若いので、資料をさわれない。
「ねえ…。ポカポカの魔導書、探してちょうだい」
天使ユズエルは、目を閉じる。
神さまが大好き。
神さまが心配。
あの方は、オレンジがとても好きだから、助けたい。
地上界のことなんて、よく知らない。
だから、地上の甘味女王たちに協力してもらう。
ソーラーオレンジは、特に神さまが大好きな果物だから、いっぱい食べて欲しい。
「ポカポカの魔導書って、何かしら」
オレンジドレスのアンコリンが、聞く。
「聞いて無かったの?人間さん」
天使ユズエルは、肩を落とした。わけわからない図書館に連れてこられて、ポカポカの魔導書を聞いて無いなんて、これだから人間は愚かだ。
「ソーラーオレンジを育てる神さまの魔導書が、ポカポカの魔導書なんですね」
オレンジ色のシャツのメイプルくんは、書物を広げて、読み解いている。
メイプルくんは、背が低くて、子供に見えるけど大人だ。
「ポカポカの魔導書は、無くなったんだよな」
オレンジ色のジャケット姿のバーニさま。
天界には、ソーラーオレンジの楽園があるという。
そのソーラーオレンジを豊作にするのが、ポカポカの魔導書なのだ。ソーラーオレンジは、ポカポカ太陽に照らされると大量に実をつける。
そのポカポカの魔導書が、無くなってしまい、太陽のラー神さまの食事からソーラーオレンジが消えたのだろう。
「ポカポカの魔導書は、太陽神と柑橘天使なら使用できるそうですよ」
太陽神は、ラー神さま。
柑橘天使は、ユズエルと他にもいるのだろう。
「糖京で、ソーラーオレンジの大豊作が起こった。柑橘天使っていうのが怪しいな」
「柑橘天使が、怪しいの?天界には、悪い子なんていない」
ユズエルは、否定する。
柑橘天使の仲間は、全員、悪くなんて無い。
悪い人がいるのは、地上界だ。
「集団行動を取る中で悪さを考えるヤツは出てくるものさ。人も精霊も天使も、同じだ」
バーニさまは、ユズエルの顔色をのぞく。
この娘は、他人を疑って、仲間を信じているのだろう。
普通は、そうだ。
知り合いに悪いヤツがいるなんて考えない。
天使の住む天界は、神さまに頼りすぎているのではないだろうか。
だから、たくさん仕事をしてもらう。
任せてしまう。
天使は、働くことで、暮らしが豊かになることがわかっているのだろうか。
「柑橘天使っていえば、デコポルが、地上界に行ったきり帰ってこないけど」
天使ユズエルは、情報を持っていた。
疑うべきかもしれない。
天使デコポル。
おでこが広い、イケメン天使。
「天使の居場所って、確認方法はあるんですか?」
「天界スマートフォンで、わかるけど…」
ユズエルは、自分のスマートフォンを出す。
大理石のような見た目のそれを操作して、デコポルの居場所を検索する。
「あれ?」
デコポルは、同じ現在地にいる。
「近くにいるの?どういうこと?」
「どこワン?」
アンコリンとスア丸は、図書館を見渡す。




