第36話 女王の甘いもの制限
甘港区。
納涼花火大会の翌日。女王住居のエアコンの修理。取り換えが完了した。
これで、甘味女王アンコリンたちは、女王別荘から戻ることになった。
「お別れですね。アンコリンちゃん」
佐糖さんが、アンコリンの手を取る。
短い間だったけど、友人になれた。
佐糖さんは、恋人のサハギンさまと一緒に、会いに行くと約束してくれる。
「いつでも、来てちょうだい」
「電話も出来ますよね」
アンコリンと佐糖さんは、電話番号を交換した。
「アンコリンちゃん。本当にお世話になりました」
「女王アンコリン。また、会おう」
佐糖さんとその肩を抱く、サハギンさま。
恋人同士を超えて、夫婦に見える。
この二人の恋を見守れたこと。本当に良かったと思える。
同じ糖京に住むのだから、また、いつでも会える。
「また、会いましょう。アンコリンちゃん」
「また、お寿司や魚を送ろう」
海が、本当は甘いことを教えてくれた二人。
これからも、お幸せに。
第36話 女王の甘いもの制限
糖京都心。甘チョコ区。甘味宮殿。
午後3時。女王食卓。
「わたアメ!わたアメよ!」
「わたアメを出すワン!」
甘港区の納涼花火大会。その出店で、出会っていたのだ。
わたアメに。
あれは、お祭りで、絶対食べるべき甘いものだろう。
それを我慢させたのは、メイプルくんである。
「はいはい。申し訳ありませんでした」
メイプルくんは、両手に、わたアメの乗っかったお皿を運んできた。
あの、ふわふわした甘いもの。
真っ白ふわふわの甘いもの。
「これ、よ!」
あむ。
「あ、ま〜〜い」
「甘〜いワン」
感動する。女王とケモミミの婚約者。
大感動だ。
お祭りの時、これを食べたかった。
お祭りの時の分のおかわりを望んだが、メイプルくんは、腕を組んで、険しい顔。
「駄目です」
アロハシャツのメイプルくんは、女王の健康のために、糖質制限をやめるつもりは無い。
可愛らしい美少年なのだが、頑固である。
女王アンコリンの身を案じてのことである。
メイプルくんは、伝えるつもりは無いが、女王アンコリンのことがとても大事に思えるようになっていた。
元気なアンコリンが好きになった。
それは、言わない言葉だ。婚約者スア丸がいる。
「あの。ちょっと怖くて、聞いてなかったんだけど。私って糖ニョウ病のリスクがあるの?」
疑問だった。
メイプルくんは、目線をそらす。
「女王就任の頃から、精密検査をして、女王アンコリンは、糖ニョウ病予備軍であることがわかりました」
「え、えええ」
やっぱり、そうなのか。
甘いものをたくさん食べてきたアンコリン。
糖ニョウ病の危険がある気はしていた。
「スア丸くんもですよ」
「う、うわ。ショックだワン」
アンコリンのみならず、スア丸もだ。
一緒のものを食べて来たのだから、当然だろう。
「甘いものは、1日1個ですよ。わかりましたね」
「わ、わかったわ」
「う、ううう。ショックだワン」
落ち込むアンコリンとスア丸なのであった。
「糖ニョウ病予備軍のアンコリンとスア丸。大丈夫か」
アロハシャツのバーニさまは、資料片手に目線を合わせてきた。
「い、言わないで」
「そっとしておいて欲しいワン」
目線をそらす二人。
「緊急情報だ。この夏の暑さで、何故かオレンジが大豊作になって、あふれかえっているらしい」
バーニさまは、写真の資料を見せてくる。
「オレンジが大豊作?」
「それは、食べ放題ということワン?」
二人は、明るい顔をした後。暗い顔になる。
「私たち、1日1個しか、食べれないわ」
「1日1個じゃ、泣けてくるワン」
写真の資料には、木に実る大量のオレンジが、たくさん。
「良いわ。オレンジの消費税減額をして、皆んなでたくさん食べてもらいましょう」
「オレンジがたくさん食べれれば良いワン」
これは、政策。
糖京の都民のための政策なのだ。
「アンコリン。オレンジがたくさんあるんだから、1日1個の甘いものに、オレンジ1個をおまけにもらえばいいんじゃないのか」
バーニさまは、それぐらいの余裕を持って良いと言う。
「オレンジ1個。うれしいわ」
「オレンジ、食べたいワン」
「…そうですね。1個だけ、増やしましょう」
メイプルくんが、許可してくれた。
オレンジが、たくさんあるなら消費しなくてはいけない。
「私、明日から、オレンジリンになるわ」
「僕は、オレンジ丸になるワン」
ジャパン国。糖京都心。
甘港区の“海が、砂糖で出来ている”と知った、暑い夏。
恋が甘いと知ったのに。
糖ニョウ病予備軍だとわかってしまったんだね。
名前は、変えなくても良いと思うよ。多分。
塩よりも、砂糖のような、甘い恋の物語があったんだ。




