第34話 納涼花火大会
甘港区。海の見える公園広場。
「お祭りの太鼓の音がするわ。出店も出てるわ」
「ワクワクするワン」
浴衣姿のアンコリンとスア丸は、目移りしてしまう。
「女王アンコリン。甘いものを食べてはいけませんよ」
メイプルくんも浴衣姿。厳しいのも変わらない。
「えー」
「我慢するワン。健康のためワン」
「ホーホケキョ」
訳・水風船すくい、やりましょう。
「好きな色、選ぶだよ。アンコリン」
「えー。楽しそうね。やるやる〜」
「僕も水風船、欲しいワン」
ワイワイ。色鮮やかな、水風船に心ときめく。
伝統和菓子あんこと同じ赤紫色と、ウグイスあんの緑色と、きな粉の黄土色。三色混ざった、水風船を見つけてすくいあげる。
見事に、取れた。
皆んなで、好きな色の水風船をすくっていく。
全員、見せ合う。
皆んな、すごく綺麗なものを選んだ。
「楽しそうです。アンコリンちゃんたち」
「そうだな」
離れた竹椅子に、佐糖さんは、座っていた。
隣りには、恋焦がれたサハギンさまがいてくれる。
二人共に、浴衣姿だ。
何て、幸せなことだろう。
第34話 納涼花火大会
納涼花火大会。
暑い夏の中で開かれる、屋外イベント。
出店や屋台が楽しめる。
目玉は、もちろん夜空に打ち上げられる花火だ。
『打ち上げ花火は午後7時からはじまります』
アナウンスが流れる。
打ち上げ花火は、やるようだ。
「花火やるって、スア丸」
「花火楽しむワン。アンコリン」
「ホーホケキョ」
訳・早く見たいな。
「待ちきれないべさ」
アンコリンたちは、屋台で、たこ焼きと焼きそばを買うことにした。
打ち上げ花火を見上げながら、食べるのだ。
「花火の見えやすい別荘のテラスに移動しよう」
浴衣姿のバーニさまは、ひょっとこのお面をつけている。
「あー。お面良いわね」
「どこで買ったワン」
「ホーホケキョ」
「ずるいだべ」
バーニさまに、詰め寄る女の娘たちとスア丸。
「夏の屋外で、元気だな」
「暑いけど、外が花火大会の醍醐味よ」
「お面買って、テラス行くワン」
女王アンコリンたち。
打ち上げ花火は、女王別荘のテラスからも見える。
海の近くの公園広場で、お祭り気分を味わった後は、女王別荘に戻って、テラス席で夜空の花火を見上げるのだ。
「ペンペンペンペ〜ン」
「お祭りペン」
「どけペン。どけペン」
海兵ペンギンたちが、現われた。
人を蹴飛ばしたり、ゴミをそこら辺に捨てている。
マナーの悪いペンギンたちだ。
「また会えたペン。運命ペン」
問題児ペギが、佐糖さんの前に立ちふさがった。
「行儀良くしたらどうだ」
佐糖さんをかばうサハギンさま。
「掃除する人間が、掃除すれば良いペン」
「お前は、海兵に志願しているのではないのか。海兵は、海も、陸地も守る守護者なのだろう」
「う…」
どうやら、問題児ペギは、海だけ綺麗にすれば良いと思っている様子。
「海だけじゃなくて、陸も守るんだペン?」
「そうだ。教官に教わっていないのか」
「海兵ペンギン整列!」
海兵ペンギン長官が、大きく声を張り上げた。
ビシっ。
直立不動になる海兵ペンギンたち。
「ゴミは、全部回収。人間に謝ること!」
海兵ペンギンたちは、公園広場の人々に謝りながら、ゴミの回収をはじめた。
元々、見世物にされてきたペンギン族。人間に、ドレイにされてきたと思っている。
人間が、根本的に悪い人々だと思っている。
その割には、人間に惚れっぽい。
高圧的な態度も、訓練を続けて、緩和していくしかない。
「申し訳ないですペン」
海兵ペンギン長官が、サハギンさまに頭を下げる。
「いいや。大丈夫だ。指導も大変な仕事だな」
「やりがいのある仕事ですペン」
若いペンギンは、徐々に、人間を許せるようになっていくのだと言う。
ペンギンたちにも、色々あると言うことだ。
「佐糖さん。女王別荘に戻って、打ち上げ花火を見ましょ」
「楽しむワン」
アンコリンたちが、呼んでいる。
「行こうか。佐糖さん」
「はい。サハギンさま」
二人は、手をつないで歩きはじめた。




