第31話 お邪魔ペンギン
甘港区。海上レストラン。
「あの…」
アンコリンは、遠慮がちにカウンターのスタッフに声をかける。スタッフは、笑顔で対応してくれる。
佐糖さんは、真珠のネックレスを取りに来たという。
「サハギンさまが、ひろってくださり、保管していました」
「え。サハギンさまが?」
真珠のネックレスは、やはり、佐糖さんとサハギンさまに接点をもたらしてくれるのだ。
「その後、海兵ペンギンが、元彼だったとか言う話になりまして海兵ペンギン軍事学校に向かって行きましたよ」
「海兵…ペンギン…?」
佐糖さんに、元彼がいたのだろうか。
しかも、海兵ペンギン?
「おいおい。無理矢理連れて行かれたんじゃないのか」
「女の娘好きのペンギン学生たちなんですよ。佐糖さんは、大丈夫でしょうか」
アロハシャツのバーニさまとメイプルくん。
顔を見合わせる。
「行ってみるワン」
「海兵ペンギン軍事学校ね。行きましょう」
アンコリンたちは、佐糖さんを探しに行くつもりだ。
第31話 お邪魔ペンギン
海兵ペンギン。
糖京の海の平和を守る。海兵。アニマル。
甘港区。海兵ペンギン軍事学校。
女王専用車で到着する。
「甘味女王アンコリン。わざわざどうしましたペン」
海兵ペンギン長官が出迎えた。
佐糖さんのことを聞く。
ペンギンの問題児ペギが、海上レストランで、佐糖さんに一目惚れして連れてきたと言う。
その途中、徒歩で炎天下の中を歩かせたため、佐糖さんは、すごく疲れてしまった。
現在、保健室で休憩中らしい。
サハギンさまも一緒に…。
保健室。
「な、何度も言いますけど。真珠のネックレスを拾ってくださってありがとうございます」
ベッドで横になる佐糖さん。
そのそばには、心配そうに見守る海鮮の精霊サハギンさまがいる。瞳が優しい。
「大事なものなのだろう」
「はい。そうなんですよ。砂糖で出来てまして、甘いんですよ。海も甘いんですよ」
「そうだな。あまり、しゃべらないで休んだほうがいい」
「で、でも、帰っちゃいますよね」
「俺か。甘味女王が来るまでは、いる」
サハギンさまは、佐糖さんを、甘味女王アンコリンたちのもとにつなげるつもりだ。
「甘味女王と友達なのだろう」
「は、はい」
「女王別荘に連絡を頼んでいる。やがて迎えに来てくれるだろう」
「あ、ありがとうございます」
優しい、サハギンさま。
真珠のネックレスを握りしめる。
ありがとう。ありがとう。真珠のネックレス。
サハギンさまと、こんなに近くにいる。
夢じゃ、ないよね。
このまま、お付き合い出来ないかな。
何て言うと上手くいくかな。
この糖京の海は、砂糖で出来てるから甘いんだ。
上手くいく言葉は…。
「やっと見つけたペン」
海兵ペンギンの問題児ペギが、保健室に入ってきた。
佐糖さんに一目惚れして、連行してきたのだ。
それを、後をつけてきたサハギンさまに邪魔された。
そう。サハギンさまは、佐糖さんを助けた。
「ペギとやら、彼女は、困っている」
「お前に、何がわかるペン」
「彼女は甘味女王の友人だ。遊びで連れまわそうとしたというのなら、大問題になるぞ」
サハギンさま、ハッキリと言う。
カッコいい。
「う、ううペン」
本当に、遊び心だけの問題児ペギ。
「でも、元彼ペン」
「…それは、本当なのか」
「わ、わたし、誰ともお付き合いしたことありません」
「気に入ったから、彼女にしたいだけだったペン…」
居心地が悪くなったペギは、逃げ出した。
「気に入ったから、彼女に出来るなんて、甘い話は無いのではないのか」
サハギンさまは、甘い話が、無いと言う。
「いいえ。ありますよ。この糖京の海は砂糖で出来ているんですから」
「…そうか。それならば、良いな」
佐糖さんは、塩のようなしょっぱいことよりも、砂糖みたいな甘いことを夢見ている。サハギンさまは、もしかして、海は、しょっぱいだけだと思っている?
「この糖京の海は、甘いですよ。サハギンさま」
「…そうか」
佐糖さんとサハギンさまは、見つめ合う。




