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あんこデラックス  作者: キノぴょ
3章 〈海は、砂糖で出来ている〉
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第28話 人魚の気持ち

 わたしは、人魚。

 恋することを夢見てきました。恋に憧れてきました。


 恋に落ちたのは、つい最近なんです。

 わたしは、とても理想が高く、相当のイケメンを探していました。

 それを、あなたは、叶えてくれました。


 海の上の海上レストラン。

 カッコいいと思える人を、発見しました。

 お名前とか、海上レストランの方に聞きました。

 海鮮精霊サハギンさま。

 好きな人は、サハギンさま。あなただけ。わたし、はじめて、現実の男の人を好きになりました。

 それが、あなたです。


 わたしのことなんて知りませんよね。

 もう、好きな人いますよね。

 嫌だな。何で、もっと早く出会えなかったのでしょう。

 悔しいです。


 暴露しますね。

 わたし、お野菜精霊の佐糖イモ代っていいます。

 美人じゃ、ありません。

 人魚なのも、嘘です。似てもいません。


 ただ、あなたを好きになった一人のお姉さんです。



 第28話 人魚の気持ち



 ウオ市場。

 漁師たちが、水あげした新鮮な魚介類を売る場所。


 甘港区。海上レストラン。

「甘味女王アンコリン。お初にお目にかかる」

 海鮮精霊サハギンさまが、お辞儀してきた。

 ウオ市場の魚介類の売り上げが伸びていることを感謝していると言う。

「魚介類の消費税減額ね」

「皆んな喜んでくれてうれしいワン」

 徐々に、アンコリンは女王としての知名度を上げている。

 お野菜の消費税減額に続き、魚介類を減額。

 順調な政策のようである。


「えーと」

 アンコリン。佐糖さんを紹介してあげようと考える。


「…わ、わたし、お野菜学園の卒業生なんです!」

 消え入るような声で、佐糖さんが、前に出る。

「佐糖イモ代っていいます」

 お知り合いになりたい。

「あなたのお名前とか、お聞きしたいです」

 近づきたい。


「俺は、海鮮精霊サハギンだ。女王のお知り合いか」

 応えてくれた。うれしい。うれしい。


「アンコリンちゃんとは、仲良しです」

 会ったばかり。嘘ついてしまった。

「さっきまで、屋内プールランドにいました」

 これは、本当のこと。良し。

「知っていますか。ここの“海は、砂糖で出来ている”んですよ。人魚の流した涙真珠が、砂糖で出来ていて、その成分がこの海に混ざっているんです」

 長台詞、言っちゃった。

 呆れられたかな。


「うむ。聞いたことのあるウワサだな」

 知っててくれたー。


 感無量の佐糖さん。ドキドキしすぎて、顔が熱い。

 このまま、お付き合い出来ないかな。

 海は、甘いよね。しょっぱくないよね。

 甘い恋がしたい。

 あなたを好きな人魚だって、言いたい。

 無理。言えない。

 勇気無い。

 誰か、助けて。

 恋が叶うお守りが、真珠のネックレスなの。

 叶えて、真珠のネックレス。

 ああ、無理。何を言えばいいの。

「…アンコリンちゃん。ごめんなさい。助けて」


「待ってたわ!任せてちょうだい」

 ウインクする、アンコリン。

「サハギンさま。佐糖さんと仲良くしてあげて」

「仲良く…?」

 サハギンさまは、不思議そうに首をかしげる。

 その態度は、佐糖さんの切実な想いに気づいている様子とは思えない。


「カウンターのお隣りの席に座らせていいかな」

 アロハシャツのバーニさま。

 海上レストランのカウンター席のお隣り同士に、佐糖さんとサハギンさまを座らせる。

 ちょうど、窓の外の海が美しく見える席だ。サハギンさまは、この景色を楽しむために、このカウンター席に座っていたのだろう。


 熟練のスタッフが、デザートメニューを2枚持ってくる。

「うわー」

 佐糖さんは、隣りにサハギンさまがいるのを意識しながら甘いもののことを考える。

 この甘い展開。

 楽しいことばかり起こること。

 これを、待ってたのだ。


「私は、食べちゃいけないの?」

「食べたいワン」

「女王アンコリンは、午後3時のおやつしか、甘いものを食べてはいけません」

 アロハシャツのメイプルくんは、きっぱりと言う。

「後で、ちゃんと用意しますから」

 念をおすメイプルくん。

 甘味女王だからといって、甘いものばかり食べていると、糖ニョウ病になってしまう。

 先代からの教訓。

 突然、倒れられては困る。

 アンコリンには、健康でいて欲しいのだ。

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