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初日1

少し長くなりました。申し訳ありません。

 何の因果か偶然なのか知らないがCLUB EDENに在籍している全ホストの中でNo.1の位置に居る姫神楓と言う名前を持つホストに、何故か気に入られてしまった俺は、安物のスーツを買いに行くつもりが、あれよあれよと流されている内に、超高級ブランドのスーツ一式を姫神楓さんから、入店祝いと言う名目で買って貰い。


 今は、それらスーツ一式を両手に持ち今日から働く事になっているホストクラブのお店に向かっている。

お店がある場所は、今まで働いていた居酒屋と同じ繁華街の中にあるのだが、場所としては少し距離が離れている。その事から俺は何時も利用している地下鉄の駅よりも1つ手前の駅で降りると、誠からRAINのトークで既に聞いていた、お店から1番近くにある8番出入り口を目標に地下構内を歩いている。


 誠からは、スーツは着てきたらいい。そう言われているが。あの後で家に着いてから、自分なりに調べると総額が75万を超えている物をプレゼントされた事を知り、正直ブルって【着ていく】等の選択肢は考えられなかった。何故なら、開店前にお店の掃除をする事を事前に知っていたから。高級ブランドのスーツを着たままで汚れる可能性があるような掃除など出来ない。


 そう思い。お店で掃除をした後に着替えようと思い、スーツは買って貰った時のまま、袋や箱やカバーが掛けられた状態で持って行く事にした。


 教えられていた通りの地下鉄駅の8番出入り口の階段を昇り地上に出てくると俺は、周りを見渡して自分が今何処に居るのか?を確認した。直ぐにここがどの辺りなのかの見当が付いた俺は、お店のある方に向かい歩き始めた。


 5分程歩いてお店に到着した俺は、事前に誠から教えられていた通りに、正面のドアに手をかけて、ドアを開くとカギは掛かっておらず、中に入っていく。そして面接の時に見たのと同じく、2人の地味な感じの普通のスーツを着ている人がカウンターの向こう側に立ち何やら仕事をしている姿が見えた。すると、カウンターの中に居る2人の内の1人が俺の事を認め。


 「おっ今日から来る東堂聖くん?おはよう時間通りだね。」


 と声を掛けてきたので。俺もすかさず。


 「おはようございます。今日からよろしくお願いします。」


 と頭を下げて挨拶を交わした。

そしてお店の中へと進んでいくと、数人の若そうな見た目の色とりどりのスーツを身に纏ったホスト達が思い思いの場所に座っていた。その中から俺の事を見つけた、友達でもある誠が俺の近くまで来て。


 「まぁ後で朝礼の時にも紹介はされると思うけど、先に来てる俺達と同じ立場の若手のホスト達に紹介するから向こうに行こうか。」


 そう言って俺を、みんなの居る近くへと誘うと、誠から。


 「今日から入る事になった。東堂聖。全くの未経験者だからみんなよろしくフォローしてやってくれよな。」


 そう言って俺の事を紹介した。俺も誠の後に続き。


 「東堂聖です。今日からお世話になります。未経験なので分からない事だらけですが、よろしくお願いします。」


 そう言って自分からも自己紹介と挨拶をすると、アチラコチラからも。


 「よろしくね。」「はじめまして。」「これから一緒に頑張ろうね。」「分からない事は何でも聞いてね。」


 等、好意的な返事が返ってきた。その後に1人のホストから。


 「あれ?東堂君はスーツは着てこなかったの?手に持ってるのスーツだよね?あっ俺は(れん)渋谷 蓮(しぶたにれん)よろしくね。」


 と尋ねられると、俺が答えるより早く俺の横に立つ誠から。


 「聖。お前あれだろ?着てきて掃除の時に汚れたりしたら?なんてビビって着て来なかったんだろ?いや……分かる!よ〜く分かる。俺でも多分着てこない。」


 そう言って俺の肩をパシパシと叩きながら言ってきた。正にその通りの事を言われた俺は、図星を差されて照れ笑いを浮かべた。


 そして誠は「コッチだ付いてこい。」と言い誠に付いて行くとそこはカウンターのカーテンで仕切られた向こう側。奥に厨房が見えている手前に並ぶロッカールームに連れて来てくれた。


 「えっと……ここだな。ここお前使っていいから。ここにスーツ掛けて入れとけよ。掃除が終わってから着替えたらいいからさ。」


 そう言って誰も使っていない空いているロッカーを俺に使えと言ってくれた。


 俺は空いてるロッカーの中に持ってきたスーツ一式をハンガーに掛け、袋は下に置き仕舞った後に着てきた服のままで、またみんなの居るフロアへと行くと、みんなからはスーツに着替えたらいいのに。等と言われたが、誠がすかさず。


 「まぁまぁ、ちょっと事情があるのよ。それは、掃除が終わった後にみんなにも分かるからさ。別に私服で掃除して後で着替えても問題は無いんだし、いいじゃん。」


 と言ってフォローしてくれた。


 その後は、誠の指導の元で、お店の掃除を若手ホスト達に混ざり行った。


 「先ずは、掃除機とかモップ掛けなんかは、やれる人が決まってるから。俺達のような【掃除組】の中でも売り上げを多少なりとも上げている人達しか出来ないルールだから。俺達みたいな売り上げがゼロのホストは、はい!コレ。」


 と誠から1本の【おしぼり】を渡されると。


 「各テーブルの脚拭きから始めようか。」


 と言われて「実際にやってみせるからよく見て覚えろよ。」と誠がテーブルの下へと体を潜り込ませて、テーブルの脚をおしぼりを使い丹念に拭いていた。俺はそれを見て、直ぐに理解して誠の拭いている隣のテーブルの下に体を潜り込ませると、おしぼりでテーブルの脚の隅々まで丁寧に拭いた。


 そして、テーブルの脚拭きをしているのは、俺と誠の2人だけではなく他に後2人程のホストが同じようにテーブルの下に潜り込んでいた。


 全てのテーブルの脚を手分けして拭き上げた後は、誠に教えられるまま、先程のロッカールームの先の厨房の入り口に積んである、おしぼりの入った黄色のケースの中に汚れたおしぼりを入れ、代わりに別のケースから袋に入っている新しいおしぼりを4本程渡されると次に掃除をする場所に連れて行かれた。


 「ここの掃除は1番の新人の担当。今日は俺も一緒に手伝うけど、明日からは聖、お前1人でやる事になるから。」


 そう言って連れて来られたのは、トイレ。であった。


 「先ずは床のモップ掛けからだな。ほら、そこのちょっと他よりも狭いドアの向こうが掃除道具入れになってるから開けて、モップとバケツを取り出せよ。」


 と言われて明日からは1人でやるんだし、手順をしっかりと聞き覚えようと思った。


 トイレの床にモップを掛けた後に誠から。


 「次は、便器の掃除。持ってきたおしぼりを使い、便器の外側をトイレクリーナーを噴き掛けてから拭き掃除。ほら、隣の個室の便器をお前も拭いてみろ。」


 と言って手に持っていたトイレクリーナーを渡してきた。おしぼりで便器の外側を拭き終わると次に誠から。


 「次は新しいおしぼりに替えて、便器のフタと便座を拭き掃除。」


 と言われ先程と同じようにトイレクリーナーを使いフタと便座を磨き上げる。そして今度は、誠が外側を拭いていた個室の便器も俺が便座とフタを拭いた。それを見ていた誠から。


 「聖。お前トイレ掃除上手いな。ちゃんと隅々まで拭いてるし。」


 と言われた俺は。


 「まぁな。前のアルバイトの居酒屋でも同じようにトイレ掃除してたからな。」


 そう言って2つの便器を拭き上げた。


 「最後にまた新しいおしぼりを使って洗面台を拭き、ガラスクリーナーを使って鏡を磨いたら終わり。まぁ居酒屋と大して変わらないだろ?」


 そう言われて俺は頷き。言われた洗面台と鏡を拭いた後に、トイレ掃除を終わらせて誠と2人で洗面台で手を洗い、トイレから出ていった。


 「誠。ちょっと質問。ここ大きな便器しか無かったけどお客さま専用のトイレなんだろ?俺達ホストはトイレはどこで済ませるんだ?」


 そう聞くと、誠から。


 「おっ!よく気付いたな。正解!ここは姫専用のトイレ。俺達ホストのトイレは、ロッカールームの反対側にちゃんとあるから安心しろ。後、間違ってもさっきのトイレは使うなよ。これは、No.1の姫神さんですら守ってるルールだから。」


 と釘を刺された。そしてトイレ掃除を終わらせた俺達は他のみんなと合流した後に、最後にみんなでおしぼりを手に、テーブル拭きをして掃除を終わらせた。


 「誠。質問!」と誠に質問すると誠からは「おっ?何?」と返って来たので頭に浮かんでいた疑問を投げ掛けた。


 「入り口のカウンターの上とか拭いてないし、厨房の中も掃除はしなかったけど?」


 そう聞くと誠は笑顔で。


 「カウンター周りの掃除は内勤さん達の仕事。後、厨房キッチンはキッチン担当の人の仕事。俺達の掃除はあくまでも姫様が利用する表側のみなんだよ。」


 「もう1つ質問。面接の時に店長から、内勤さん?はお店で働くホストのフォローやボーイさんの様な仕事だと聞いたけど、何で掃除を俺達がやるんだ?」


 「そうだな。内勤さんの事を理解してないとそう思うよな。でも内勤さんは決して俺達の下の人達じゃないんだ。むしろ俺達ホストよりも上の立場の人達。そう思っとけ。これも仕事してたら実感出来るから。後、掃除をやるのは、お前の言う通り内勤さん達でもいいんだが、これは【掃除をしたくないなら早く売り上げを上げるホストになれ!】って言うメッセージも込められてるんだ。だから、みんな嫌な顔1つせずにお店の掃除をしてるだ。早く掃除組から抜け出してやる!ってな。」


 そう言って笑顔を向けてきた。

 

明日19時予約投稿済。

作中で分からない業界用語がありましたら感想等を使い作者に質問してきて下さい。答えます。


☆☆☆☆☆を★★★★★にしてくれると部屋中を駆けずり回り歓喜の舞を披露するのじゃ。笑

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