送り
早乙女さんが担当をしている姫【美幸】さんからヘルプ指名を貰い、美幸さんの席でヘルプの仕事をしていたら、突然カウンターから俺にリクエストが掛かった。俺は直ぐに美幸さんと早乙女さんに席を1時離れる事を伝えた後にカウンターに向かうと、そこには俺が初めて1人で接客した、今日がホストクラブに遊びに来る事自体が初めてだと言っていた【玲奈】さんの席に俺の後に着いて接客してるはずの誠が小林さんと並び立っていた。
誠は俺がカウンターに行くと突然「ガバッ」と俺の肩に手を回して「グイッ」と少し力強く自分の方に俺の頭を引き寄せると。
「このやろ~やったな!おい!俺なんて1週間ぐらい掛かったのに初めてでこの!この!」
と何か物凄く興奮した様子でしきりに俺の事をホメていると、小林さんが冷静な声で。
「誠君。嬉しいのは分かるけど待ってるからほどほどに後でいくらでも言ってあげたらいいでしょ?」
そう言って誠の事を窘めた後に、俺の顔を見て笑顔で。
「東堂君。おめでとう初めての【送り指名】だよ。さっき席に着いてた初回のお客さまから、東堂君に見送って欲しい。って送り指名が入ったから。ほら、呆けてないで行くよ。」
俺は何が起きてるのか訳も分からず、とにかく小林さんに【送り指名】を貰った事。今から玲奈さんを俺がお見送りする事を言われ、小林さんの後に着いて玲奈さんの待つBOX席に移動した。
そして小林さんは、初めて送り指名を受け実際に姫様を見送る俺に向けて。
「いい?東堂聖。外に出てお客さまと話してていい時間は3分~4分までだから、必ず3分~4分経ったらお客さまと別れてお店の中に入ってきてね。」
と移動している間の少しの時間で送りのルールを教えてくれた。
「送り指名ありがとうございます。東堂聖です。」
そう言って玲奈さんの横に座ると、玲奈さんは微笑を浮かべた顔で横に座った俺に向け。
「なんかボーイさん?がもうすぐ時間だから、飲み直しをするか、誰かに見送ってもらい帰るか、自分だけで帰るか、どうしますか?って聞いてきたから、そろそろ帰ろうかなって思って、それでまぁ話しをしてて1番楽しくお話しも出来た聖君に見送って貰おうかな?って聖君の名前を言ったの。迷惑とかだったかな?」
そう玲奈さんに言われた俺は、ちょっとだけ慌てて。
「迷惑だなんてそんな事ある訳ないじゃないですか。玲奈さんにも言いましたけど、僕も玲奈さんと同じでホストクラブ初心者なんですよ。そしてモチロン【送り指名】を姫から貰う事も玲奈さんからが初めてなんです。」
そう即座に答え2人で顔を見つめ合い小さな声を出して笑い合った。その後少し話しをした後に。
「それじゃ玲奈さんそろそろ行きましょうか。」
と玲奈さんを誘導し、BOX席から立たせると手を引いてフロアの通路まで移動して貰った後に。
「手は繋いだままでもよろしかったですか?腕とか組んじゃっても大丈夫ですが?」
ふざけ気味にそう言うと玲奈さんからは。
「それじゃ手を繋いで外まで案内して欲しいな。」
その言葉通りに俺は玲奈さんの柔らかな手のひらを自分の手のひらで優しく包み込むように手を繋ぐと、そっと手を引きフロアの中を通りカウンター席に向かう途中で、ヘルプ指名が掛かっている美幸さんの座るBOX席の前を通った時に、早乙女さんがビックリしている顔で俺を見ていた。
そしてフロアを抜けてカウンターに行くと、待機しているホスト全てが席に座っていた者は立ち上がり、ホストに手を引かれてお店から出ようとしている姫に向けて軽く頭を下げていた。その中には、俺の友人でもある誠の姿もあり、誠の横を通り過ぎる時に誠は俺に向けサムズアップをしていた。
玲奈さんと一緒にお店の自動ドアをくぐり、ソトに出ると外は昼間の暖かな気温と違い少し肌寒く感じた。そして2人お店から少しだけは離れた道の上で別れの挨拶の軽いやり取りの後、最後に玲奈さんに向けて。
「今日はCLUB EDENをお選び東堂聖を送り指名してくださり誠にありがとうございました。またのご来店心よりおまちしております。」
そう言って帰っていく玲奈さんに向け深く一礼すると共に声を掛け、名残惜しい気持ちを抑えて踵を返すとまたお店の中へと戻った。
店に戻ると受け付けに立つマネージャーの若林さんは、俺が送りのルール通りの時間内に店にちゃんと戻ってきた事に対してなのか、初めての送り指名を貰えた俺の事を褒めているのか分からないが深く頷いていた。そしてカウンターでは友人の誠が待っていて、俺と初めての送り指名について、喜びを分かち合おうと待ち構えていたが、俺は両方の手のひらを体の前で合わせて。
「誠。ごめん、後でな後で俺……早乙女さんのとこにヘルプ指名入ってるから。」
この後も直ぐに指名の入ったままになっている席がある事を告げると、そのまま早乙女さん担当の美幸さんの座るBOX席に戻って行った。そして戻った先では、早乙女さんと早乙女さんから事情を聞いたであろう美幸さんの2人から、からかわれつつもおめでとうと言って貰えた。
その後は美幸さんからヘルプ指名を貰ったままで、ヘルプ仕事を1セット程してそのまま閉店時間を迎え。俺のホスト2日目が終わった。




