教育とご褒美
2日目の営業も始まった。俺は誠と2人何時ものカウンター席の端っこ2つに浅めに腰を下ろし、姫様が来店されたら直ぐに立ち、挨拶が出来るように準備を終えた。
そして少しの時間が経つと、通常料金で遊びに来たのか、初回や新規で遊びに来た姫なのかを受け付けでの動きで見分けられるようになって行った。それも今日、元プレイヤーでもあった加藤さんから教えて貰った、初回の姫の動き。を覚えていたからだ。
先ず同伴等では無く普通に担当が決まっている通常の料金やCLUB EDENプランを使い遊びに来た姫や、どなたか新規の姫様と一緒に来た、ご新規姫様お連れプラン等のプランを利用して遊びに来た姫様は受け付けを済ませると、受け付けの真向かいに置いてあるソファベンチに腰を下ろし、担当のホストが迎えに来て、受け付けで割り振られたBOX席へと入って行く。
初回または新規の姫様は担当も決まっていない事から、受け付けを済ませると内勤さんの案内で店内に入って行く。この事からお店の自動ドアを開けて入って来た姫様が、どちらの姫様なのか安易に見分けが付くようになった。そして、内勤さんの案内で席に通された姫様に、受け付けで男本で選ばれているかも知れない。選ばれずとも本日の付け回しの内勤さんに呼ばれるかも知れない。昨日よりも遥かに緊張していた。
そして開店から1時間程経過した頃に、それまでにも1人2人の新規の姫様が来店していたが、運良く(運悪く)付け回しに呼ばれる事も無く誠と過ごしていると、お店の自動ドアを開けて、昨日のリエさんとはまた違う女性と一緒に姫神さんが同伴で1時間遅れで店に出勤してきた。
「おい、姫神さん来たぜ今日の姫様は、あやのさんって名前の姫様。まぁリエさんが天使に見えるぐらい、ちょっとクセ強の姫様。迷惑行為とか、俺らヘルプに意地悪とかはしないどな。」
と小声で姫神さんの担当姫様の事を教えてくれた。姫神さん派閥に所属しているのだから、派閥の長の担当している姫様は知ってて当然だろうと、誠からの優しさを素直に受け止めて、姫様の顔や特徴を頭に焼き付けた。
「姫神さんおはようございます。あやのさんいらっしゃいませ。」
と誠と揃って挨拶をすると、姫のあやのさんは誠には笑顔を向けて挨拶をしていたが、初めて見る俺の事をチラリと見た後で、姫神さんに。
「楓〜この子誰?挨拶されたけど。」
「コイツは東堂聖。新人のホストで俺のとこで面倒見てるんだよ。あやのも誠と同じように可愛がってくれよな。」
そんな会話のやり取りの後、また俺の事を見てきたあやのさんは少しだけ先程よりも表情を和らげて。
「ふ〜ん。よろしくね東堂君。後で呼んであげるね。」
と後からヘルプ指名を入れてくれるとまで言ってくれた。1セットのヘルプ指名で最低保証の¥10.000-にプラスして指名バックが¥3.000-も入るのはめちゃくちゃ嬉しい。頭の中でそんな皮算用をしていると横から姫神さんが。
「いや……今日から暫くは聖は俺と俺の派閥の席全てからヘルプに呼ばれない。内勤の誰かに今日から初回も回れって言われてるだろ?聖は今日から実践練習の日。まぁ早乙女や他の無派閥の奴等からヘルプ指名が入ったらその限りでは無いけどな。」
そう言って、俺を突き放した。俺は今日も姫神さんの席にヘルプ指名を貰い、最低保証と一緒に初日の日の様に高額の日給を貰うつもりマンマンだったので、姫神さんからの言葉に明らかに残念がっていると、誠から。
「これも姫神さんの優しさだから初回や新規の姫回りも出来ないようなホストに自分の担当なんて一生作れる訳ないもんな。」
そう言われて心の中で誠に言われた言葉を反芻していると、確かに先輩の傘の下にずっと居たら、そりゃ多少なりとも恩恵に与らせて貰えたり、楽も出来るけどそれじゃいつまで経っても1人前にはならないな。そう結論に出して、姫神さんの今日はヘルプに呼ばない。を俺を自立させようとしてくれている優しさの裏返しだと考えるようにした。
その後、姫神さんは受け付けで受け付けを済ました後に誠を連れ俺を残してBOX席のあるフロアに行こうとした矢先に。何かを忘れていて思い出したかのように。
「あっ忘れ物した。誠、ちょっとお前あやのを先に席に連れて行っといて、あやのも直ぐ終わる用事だから直ぐ行くから。」
と行きかけていた足を停めるとクルリと後を向いて、俺の目の前に立つと手に持ってた紙袋を、俺の方へと差し出すと。
「はいコレ、2日目初回回りデビューのお祝い品。」
とだけ言ってあやのさんが待つ席にと足早に歩いて行った。俺は突然渡された紙袋を持ち、呆然としていると後ろから突然声を掛けられた。そこにはマネージャーの若林さんが立っていて、相変わらず渋い声で。
「素直に貰っとけ、それは姫神派閥の2日目を迎えた新人ホスト全員に渡している物だから。中を開けて今日から役に立てろそうしたら姫神も喜ぶから。」
俺はカウンター席に座り紙袋から、青と緑が混ざったような色の小さな細長い箱を手に取ると中を開けてみた、そこにはケースに納められた箱の色と同じ色のボールペン。もう1つの同じ色した少し薄い長方形の箱を開けると中からは、箱と同じ色をした金属製の名刺入れ(カードケース)が入っていた。
「へぇ……お前姫神に何かしたのか?やけに気に入られてるんだな。それ何処のメーカーか分からんか?その箱の色見ても。」
と若林さんに誂うように言われた俺は「この箱の色どっかで見た事が確かにあるんだよなぁ……。」と数分考えたのちに。
「えっ!え〜〜まさか〜〜何で、テフオニーのボールペンとカードケースを貰っちゃってんの俺?これ有名なテフオニーブルーじゃん!」
驚いている俺の横で若林さんはポツリと。
「去年、誠には確か……。カルチェのボールペンとダンヒムのカードケースを送ってたな。でもお前運悪いな……去年まではウチも紙のタバコOKだったから、誠まではライターも貰ってるんだぜ。」
え〜スーツ。身に付けている小物類に関しては
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