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初日終わり

 その後は、リエさんの座るVIP席と環さんの座るBOX席をセット時間を考えてコチラに何分ぐらい、アチラに何分ぐらいと内勤の小林さんが慣れないと言うか初日の俺の為にわざわざ時間の管理を計算してくれて、どちらの席にもセット時間の終わり5分前には、ヘルプ席に座っていられるように調整をしてくれた。


 俺は小林さんに言われるままに自分の腕に巻かれた、自分じゃない他の誰かの腕時計の針に気を配りながら、また店内を巡回している小林さんからの合図を見逃さないように気を付けて、2つのヘルプ指名の入っている席を立ち回り、なんとか場を楽しませ過ごした。リエさんも環さんもどちらの姫様も途中でお帰りになる事も無くそのまま閉店の時間まで延長を繰り返し、楽しまれていた。

 

そして、俺は忙しく目も回る勢いでヘルプに精を出していると、あっという間にお店も閉店間際の時間を迎えた。


 店内のBGMが消え、照明が少し落とされると、静かにカラオケの曲が流れ始めた。そしてお店のNo.2である早乙女和哉さんの歌声が店内に響いた。


 その時丁度リエさんの座るVIP席のテーブルに着いていた俺は、横に座る誠が。


 「今日のラストソングは早乙女さんか。」


 そうつぶやくのを聞いて誠に質問をした。


 「誠、ラストソングって何?」


 そう聞くと誠は「1日の売り上げが1番高かったホストがその日閉店の間際にカラオケを歌う栄誉と権利を貰えるんだよ。」と教えてくれた。


 その後、早乙女さんの歌うラストソングが終わると店内を普段の時よりも明るめの照明が照らしだした。


 それを合図にするかの様に閉店まで残っていたBOX席に座る姫様達が一斉に帰り支度を始め、隣に座る担当のホストとの暫しのお別れを惜しみ合い、場を盛り上げ楽しませてくれた、若手のヘルプに着いていたホスト達を労い。担当ホストと一緒にとある姫は腕を組み、とある姫は手を繋ぎ、思い思いにお店の自動ドアの向こう側に消えて行った。


 俺は最初に、八神さんが担当をしている環さんの席で環さんに向け。


 「本日は、ご指名本当にありがとうございました。またいつでも遊びに来てください。」


 そう指名してくれた事にお礼を述べて環さんと席で軽い別れの挨拶のやり取りをした後に、八神さんと一緒に手を繋ぎお店から出ていかれるのを見送ると、急ぎリエさんの座るVIP席に戻り、そこでも誠と一緒にヘルプ指名してくれた事。飲み物を何杯も戴いた事、初日で緊張していた俺に優しい言葉を掛けてくれた事、色々な想いを1つにまとめて【感謝】の言葉に変えて深く頭を下げお礼をして、姫神さんにエスコートされて1番最後にお店から出ていかれるのを見送った。


 そして全ての姫様達が居なくなった店内では、No.を持つホストも中堅のホストも【掃除組】と呼ばれている若手ホスト達も、1日の仕事をやり切ったと言う顔を浮かべて、思い思いBOX席のソファに座ったり、カウンター席に座ったり、またカウンターの中に入り冷蔵庫から飲み物を取り出して飲んでいたりと、営業中とは違う寛いだ表情を浮かべていた。


 俺は誠と一緒にカウンターから1番近くにあるBOX席の柔らかいソファに並び腰掛けていると、姫様を見送ってお店に戻って来ていた、No.2の早乙女和哉さんが近付いて来て、俺達が座るソファのテーブル向こうのヘルプ椅子に腰を下ろすと。


 「お疲れ様、誠に聖。どう?緊張した?」


 と誠と俺に労いの言葉と俺に初日はどうだったか?と聞いてきたので2人揃い。


 「早乙女さんお疲れ様でした。」


 と言った後に俺だけが。


 「めっちゃ緊張しました。まさかヘルプの指名が八神さんの担当の姫様からも入るなんて予想もしてなくて……。」


 そう言うと早乙女さんは笑顔で。


 「実はね僕の担当している姫からも、聖の歌声を聞いてヘルプ指名して目の前で私の好きな歌を歌って欲しい。そう言われたんだよ、そして実際にその時ヘルプで着いていた工藤に、聖のヘルプ指名を内勤さんに伝えようとしていたから、僕が止めたんだ。【初日の子で2つ席から指名が入りきっと頭の中がパニックになっているだろうから今日は止めておきな。聖は明日も明後日もお店に居るのだからまた別の機会にするように。】ってね。」


 そう言われて早乙女さんが止めてくれなかったら、3つもの席からヘルプ指名されていたかも知れないと言う事実を知らされ、2つの席だけであたふたしていた自分が3つもの席で上手く立ち回れるはずも無いと、早乙女さんが止めてくれた事に感謝を感じ。


 「早乙女さん。ありがとうございました。絶対にパニックになって何かやらかしてたと思います。」 


 そう言うと横に座る誠からも。


 「初日で何も知らない状態で2つの席からヘルプ指名かかる事ですら大変なのに、3つだったら絶対に聖は何かしでかして姫様を怒らせてたかも知れないよな。早乙女さんに感謝だな。」


 と言ってきた。俺はその通りだと思ったので誠に「うんうん」と頭を上下させて応えた。


 その後、早乙女さんは俺達に「それじゃ僕はこの後姫様とアフターの約束があるから、行くね。また明日。」と言葉を残し、自分の派閥の若手ホストの工藤龍と一緒にお店から出ていった。


 その後は誠と2人で初日の勤務についてアレコレと雑談をしていると、片手にグラスに入れたお茶を持って、俺達の派閥の(おさ)であるこの店のNo.1の姫神さんがやって来た。俺達2人はソファから立ち上がると。


 「姫神さんお疲れ様でした。」


 と挨拶をすると姫神さんからも。


 「はい、お疲れ様。聖どうだった?緊張は……まぁしたよな。でも楽しく仕事が出来たか?あっ!そうそうこれ八神から預かっていたんだ、アイツこのままアフターに行くって言ってたから俺から聖に渡しといて下さいって」


 と言ってお店のロゴの入った白い小さな封筒を俺に差し出して来た。


 「緊張めっちゃしました。まさかヘルプ指名が他からも入るなんて予想外過ぎますよ。あっはいありがとうございます。」


 そう返事を返すと渡された白い小さな封筒を受け取る。


 「聖の歌のおかげで売り上げを伸ばす事が出来たから、これでメシでも食え。だってさ、まぁありがたく貰っときな。」


 そう言われて俺は渡された封筒を開けて中を見ると、キレイに折りたたまれた¥10.000札が見えた。


 俺はただゲーム感覚で姫様の選んだ歌を歌い姫様の出したクリア条件を満たしただけ。それだけの事しかしてないのにと思ったが、姫神さんの「これも八神の感謝の気持ちだから。」の言葉に納得して封筒を内ポケットの中に入れた。


 姫神さんが座っていた椅子から立ち上がり。


 「よし!それじゃ今日も皆でご飯でも食べに行くか。誠、今日は何にする?」


 「今日は聖の初日祝いも兼ねて回ってる寿司なんてどうですか?」


 ときっと毎日行われているであろう事が伺える、2人のやり取りを見ていた俺は、誠から。


 「ほら、聖。姫神さん派閥の皆でご飯食べに行くんだからお前も一緒に来るんだよ。さっさと着替えて来いよお前私服で来てるだろうが。」


 そう言われて、そう言えばそうだった。と思った俺は慌てて立ち上がるとロッカールームに急ぎ着替えを始めた。こうして、東堂聖と言う若手ホストの初日は終わりを迎えようとしていた。

明日19時予約投稿済。


☆☆☆☆☆を★★★★★にして欲しいのじゃぁ〜笑

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