被り
少し長くなりました。お遊びが過ぎたようですごめんなさい。
得意なカラオケで場を盛り上げる事に成功した俺は、喉の渇きを新たにリエさんからご馳走された、ほろよいで潤すとリエさんから。
「無くなったら勝手に頼んだらいいからね。もちろん誠君もね。」
と優しい言葉を掛けてもらえた。それを聞いた誠は俺に向けて。
「な!聖。リエさん物凄く優しいだろ?言った通りだろ?俺が1番大好きな姫様なんだから。」
と少し興奮してリエさんの事を褒めちぎっていた。もちろん本心なのかどうかまでは分からなかったが……。
そして楽しく過ごしていた4人の時間を1つの店内に響いたマイクの音声によって奪われる事になる。
「姫神楓。カウンターリクエスト。」
と店内に響いた内勤さんの誰かの声を聞いた姫神さんは、横に座るリエさんに向けて。
「ちょっと行ってくる。直ぐ戻るから。誠、聖、リエを頼んだからな。」
と告げてソファから立ち上がるとBOX席から離れカウンターのある店の入り口の方に消えて行った。
そして姫神さんだけが消えた席では、誠が今まで以上に大きく明るい声を出して。
「リエさん、誠と聖と3人で楽しみましょう。あっ!また聖に歌でも歌って貰います?」
と担当が抜けてしまった姫様を落胆させないように努める。それを横で見ていた俺は。心の中で「なるほど。ここからがヘルプの本当の仕事の始まりなんだな。」と直感で悟り。俺も明るく笑顔でリエさんに向けて。
「はい!聖に何でもリクエストして下さい。リエさんの為に一生懸命に歌わせて貰いますから。」
と誠の言葉に続いて場を楽しい空間にしよう思った。
その後はリエさんからリクエストされて好きなアーティストの俺に歌える曲を1つ2つ歌っていると。突然。
「東堂聖。カウンターリクエスト。」
とマイクで俺の名前を告げられカウンターに来いと呼ばれた。俺は少し戸惑いどうしていいか分からずに居ると。横に座る誠から。
「おい、聖。呼ばれてるから早く行ってこい。後、席を離れる時は必ず着いていた席の姫様に「失礼します直ぐに戻ります。」と挨拶とお礼をしてから離れるようにな。」
と作法を教えて貰ったので、リエさんに向けて。
「リエさん。失礼いたします。直ぐに戻って来ます。」
そう声を掛けた後にヘルプが座る丸い椅子から立ち、何で今日が初日の自分が呼ばれているのか、訳も分からぬままに、カウンターに向かって歩いた。
そしてカウンターに向かっている途中で、数あるBOX席の中の1つの席に座る、姫神さんの姿を認めた。「なるほど。他に姫神さんは担当の姫様がお店に来たから、リエさんの席を離れた訳か。」と姫神さんが居なくなった理由を自分の目で知ると、俺自身も呼ばれている事を思い出し急ぎカウンターに向かった。
カウンターに到着すると内勤さんの小林さんが俺に近寄り。
「東堂君8番にヘルプ指名だよ。」
と告げてきた。俺はその言葉を直ぐに理解する事が出来ずに、先ず頭の中に「何故?」が浮かび少し惚けていると、小林さんが。
「東堂君大丈夫?ヘルプ指名が入ってくるから行ってきてね。後、東堂君は腕時計は……してないね。ちょっと待っててね。」
と言い残して俺の側から離れ、カウンターの中に入ると何やら探し物をするかのような動きの後に。俺の元に戻って来て。
「取り敢えずコレ。飛んだ子が着けてたヤツ止まって無かったし時間も狂って無かったからコレ腕に着けて。そして、席に座ってから30分ぐらい経ったら、最初に居たVIP席に戻って。VIP席の延長時間終了5分前になるから。席を離れる時の挨拶は誠君から教えて貰ってるね?居た席から離れて来てるんだし。」
と俺に腕時計を押し付け着けるように言った後で、言われるままに渡された腕時計を着け、着け終わった俺に、研修の時にくれたメモ帳と同じサイズの小さなラミネート加工されたカードを差し出して来た。そのカードにはお店の全てのBOX席のテーブルが書かれ、それぞれのBOX席に番号が振られていた。
俺はその渡されたカードを見て、8番のBOX席がどこかを確認する。丁度開店前の掃除の時に、自分がテーブルの脚を拭いていたBOXだった事もあり直ぐにどこの席かは判断出来たので、席へと足を進めた。
そして目的の8番のBOX席の前に来ると、誠に教えて貰っていた言葉を思い出し。
「ヘルプ指名ありがとうございます。東堂聖です。失礼してもよろしかったですか?」
と一言、姫様と横に座る担当のホストに挨拶をしてから丸い椅子に腰を下ろした。
その席には、朝礼の後で軽く挨拶だけは交わしていた先輩ホストの【八神渚】さんの担当する姫様の席だった。
「ごめんね。東堂君、初日で不慣れなのに姫神さんの担当の姫様の席から離すような事しちゃって。」
と八神さんが俺に優しく言ってきたので、俺は内心は正にその通りで、どうしたらいいのか訳分からなかったが、それをそのまま言う訳にもいかずに。わざとらしく明るい声で。
「大丈夫ですよ八神さん。姫様も呼んでいただいてありがとうございます。初日で至らない事も沢山ありますが、ヘルプ頑張りますね。」
と言うと、それを聞いていた八神さんが自分の横に座っている担当の姫様に向けて。
「ほら〜環。ちゃんと東堂君に謝って、緊張しちゃうに決まってるだろ?」
と言うと。環と呼ばれた姫様は少しだけ悪戯っ子ぽい笑顔を浮かべて。
「ごめんね東堂君。でもね、どうしても東堂君にお願いがあったから無理言って呼んで貰ったの。あっ!東堂君も何か飲んでね。そうだ、もう直ぐ無くなっちゃうからコレ飲んでよ。」
とテーブルに置かれている【ラーセン】と言う名前の帆船の形を模したボトルを指差していた。
そして姫様に言われるままに、グラスに氷を入れラーセンの中身の高級コニャックを注いだ後にミネラルウォーターで割り、水割りを作ると。
「ご一緒させてもらいます。いただきます。」
と先程習った挨拶をして先ず姫様の環さんと、次に担当ホストの八神さんと乾杯をした後、グラスに口を付けて中身を飲んだ。高級コニャックなだけに甘く香りも良く非常に美味しく感じられたので、思わず。
「美味しい……こんな美味しいお酒初めて飲んだ……。」
と言葉遣いも普段のままに感想が思わず口をついて出ると。テーブルを挟み座る姫様から。
「美味しい?良かった東堂君も喜んでくれて。あっ!それでね東堂君に言ってたお願いなんだけど、さっきの歌、東堂君が歌ってたんだよね?私も歌って欲しい曲があるの。歌ってくれる?」
と、俺がここに呼ばれた理由が判明した。なるほど、俺に歌を歌わせたくてヘルプ指名までして呼んでくれたのか。とその事に嬉しく思った俺は。
「はい。環さんの頼みなら何でも。カラオケで良かったら何曲でも歌いますよ。それで何を歌えばいいんですか?」
と姫様に聞くと、横から八神さんが。
「待ってね東堂君。こいつ歌をリクエストしてるくせにカラオケ歌い放題にしてないから、内勤さんにカラオケ歌い放題を伝えてくれるかな?」
と言われたので、俺は店内を巡っている内勤さんに向け手を挙げ呼んだ後に。
「カラオケ歌い放題をお願いします。」
と伝え、料金に加算をして貰った後に届けられたデンモクを持ち、環さんからのリクエストに備えていると。環さんから。少し前に一世を風靡したビジュアル系のバンドの曲の中から、冬をテーマした曲をリクエストされた。有名な曲でもあるので当然俺も何度か歌った事もあり、二つ返事で環さんからのリクエストに了承すると、曲の番号を入力してカラオケ本体に飛ばし、流れてくる曲に合わせて、感情込めて歌い上げた。
その後もヘルプとしての仕事を自分なりに頑張りつつ、環さんからリクエストされる曲を数曲歌い、場を楽しませていると、環さんが飲んでいたお酒が空になっていた。そして、八神さんから環さんに。
「どうする?またラーセンをキープするか?」
と1本で¥300.000もするお酒をまたキープしておくかを軽い感じで話していると、環さんが突然。
「東堂君に【真紅】を原曲キーで歌ってもらって採点で90点以上が出たらCAMUSのブックをキープするよ。」
と言い出した。この曲は元祖ビジュアル系バンドの代表曲で、このバンドのヴォーカルは非常に高音域で歌う事を得意としており原曲キーとなると一気に難易度が高くなる曲でもあった。
俺は「え?俺の歌で何をボトルキープするのか決めるの?」とどうしていいか分からずにいると、隣に座る担当の八神さんからは「頼む!東堂君!俺の売り上げの為に90点以上を!」と言う懇願の声が聞こえてくるような目で見られ、取り敢えず断る事も出来ずに。なし崩し的に変なゲームに付き合わされる事となった。
そして何とか歌い上げ。いよいよ採点結果の画面になると点数が表示される。その点数は92.832点。
俺は八神さんと言う先輩ホストの売り上げの為に呼ばれたヘルプのホストとして、やるべき事をやり切った。環さんの拍手と、八神さんのちょっと違う意味の拍手と共に。
そして新たに内勤さんの手により運ばれて来たボトルに今までラーセンに掛かっていたキープタグを掛け替えてテーブルにボトルを飾った。
担当の八神さんや何故だか俺の事を気に入ってくれてお店に来たら必ずヘルプ指名するからねと言ってくれた環さんとヘルプの俺の3人で会話を楽しんでいると。最初に言われていた30分の時間が過ぎようとしていたので、俺は環さんに向けて。
「環さん。ごめんなさい、少しだけ失礼します。直ぐに戻ってきますからね。」
と席を中座する事に断りを入れた後に席を立ち、そのまま最初に座っていたVIP席のリエさんのテーブルに向かった。
うーうーとハミングから入る曲と
ホニャララじゃぱんの曲の2曲でした。
今回は替え歌はありません。
明日19時予約投稿済。
(今月末31日まで毎日予約投稿済)




