初めてのヘルプ
明日19時予約投稿済。
突然のヘルプ指名で姫神さんの担当している姫様【リエさん】の元へと友人の誠と一緒に向かい、緊張しながらも何とか無事に挨拶を済ませてヘルプのホストが座る丸い椅子に腰を下ろした俺は。先ず最初に誠から。
「聖。姫様と姫神さんの飲む飲み物から作るんだ。最初に姫様に「今日は何をお飲みになられますか?」と聞く。ほら、リエさんに聞いてみろ。」
と俺にヘルプの仕事を教えようとしている。それをテーブルの向こう側から見ている姫様は、どこか優しげな目で暖かく見守っていてくれている気がした。誠が先程カウンター席で「優しい姫様」と言っていた意味が少しだけ理解出来た。
「姫様。本日は何をお飲みになられますか?」
と誠に習った通りに姫様に聞くと、姫様は少し小さな声でクスクスと笑いながら。
「はい、聖君。今日はこのリシャールをいただく事にしますね。水割りを作ってくれるかな?」
そう言って返事を返してくれた。それを聞いた俺は「あっこの姫様本当に優しい人だ。」と直感で感じ取ると。次に誠が。
「それじゃ、姫様と担当のホストには、この少しサイズの大きな【ゲストグラス】を使い飲み物を作るんだ。聖、お前水割り作れるか?」
そう聞いてきたので誠に。
「作れる。前のアルバイトでも何度も作った事あるから。」
そう答えて、俺はゲストグラスを2つテーブルの隅に置かれている氷の入ったアイスペールの中から、アイストングを使い、氷を入れると次にテーブルに飾られているHennessyリシャールのボトルのキャップを外した後に、そっとグラスの中にボトルの中身の高級ブランデーをゆっくりと注ぎ、適量を入れた後に氷の入ったアイスペール等と一緒に置かれていた、ミネラルウォーターのペットボトルを開けて、グラスの中に水を注いだ後にマドラーを使いグラスの中のブランデーと水を混ぜ、出来た水割りを、コースターを先に最初は姫様の前に置き水割りの入ったグラスを乗せ、次に姫神さんの前にコースターを置いて同じように水割りの入ったグラスを置いた。
そして、水割りを2杯作り、姫様と担当のホストに出した後「どうだ?合ってるか?」と隣に座る誠の事を見ると、誠は。
「お〜上手い上手い。流石元居酒屋店員。」
と上手く出来た事をホメてくれた。そして、姫様と姫神さんからも「上手だね」「うん、これなら大丈夫だな。」と言われて素直に嬉しく感じた。
そして、姫様と姫神さんがお互いのグラスを【チンッ】と合わせて乾杯をした後に一口水割りを飲みその後に姫様から。
「誠君と聖君も何か飲んでいいよ。」
と声を掛けられた。俺はそれを聞いて、目の前に置いてあるお店の価格で数百万円を超えている高級ブランデーはどんな味がするのか?と素直にこれを飲んでみたい。そう思った。そして、テーブルの隅に置かれているグラスを手に取り自分の分の水割りを作ろうとしていた時に、誠から。
「聖、それはダメ。それは姫様か担当の人が飲んでもいいよ。と言われた時しか飲んじゃダメ。ごめんなさいねリエさん。コイツ本当に何も知らないから。」
と俺のやらかしにも代わりに謝ってくれてフォローまで入れてくれた。一連の俺のやらかしを見ていた姫様からは。
「聖君、気にしなくていいからね。知らない事だらけだもんね。後、良い友達が側に居てくれて良かったね。」
そう声を掛けられ。本当に本当にそうだと心から思い少しだけ涙腺が緩みそうになるのを必死で耐えた。
そして、誠は定期的にテーブルに置かれている灰皿やアイスペールの中の氷等が減って交換が必要かどうか?をお店の中を巡回している内勤さんに向け手を軽く挙げて呼ぶと、呼ばれてやって来た内勤さんに向け。
「ほろよいを2つお願いします。」
と丁寧な口調でお願いすると、俺に向かい。
「聖もほろよいでいいよな?」
と言ってきたので「もちろん。」と答えた。
そして、ほんの直ぐ後に誠が頼んだほろよいを銀のトレーに乗せて運んで来てくれた内勤さんが、それをテーブルの上に乗せると、誠がほろよいの2本並んだ缶をそれぞれ指で指している。俺はそれを見て頭の中に「?」を浮かべると誠が呆れ笑いを浮かべながら。
「どっち飲む?」
と。【もも】と【グレープ】のどちらをお前は飲む?と聞いてきた。俺はそんな簡単な事にすら気付けない程に緊張している自分に少し呆れ返りつつも、照れ笑いを浮かべて。
「誠が好きな方を選んでいいよ。」
そう伝えた。そして【グレープ】を選んだ誠は俺に【もも】を渡してきた。
俺の座っている位置の方がグラスや氷等が近い事もあり、俺は自分と誠の分のグラスに氷を入れて、1つは自分の前に、もう1つを隣に座る誠に渡し、2人で揃って、ほろよいの缶のプルトップを開けると、中身をグラスに注いだ。そして誠はそのグラスを両手で大事に抱えるように持つと。最初に姫様の前にグラスを差し出し。
「ご一緒させてもらいます。いただきます。」
と言うと、グラスを姫様の掲げたグラスよりも下側に重ね合わせて乾杯をした後に続けて、担当ホストの姫神さんにグラスを向け、同じように「いただきます。」と言った後にグラスを重ねた。そして乾杯を終わらせた誠から俺に向け。
「ほら、聖も姫様と姫神さんと乾杯を。ちゃんとお礼も忘れずに後、乾杯する時は必ず自分のグラスが下に来るようにグラスを合わせるようにな。」
と乾杯の作法を教えてくれたので、誠の教えに習い姫様にご馳走して貰う事をお礼の言葉と共に乾杯をし、姫神さんとも乾杯をした。
そして、誠と2人で、戴いたほろよいに口を付けてグラスの半分程の量を飲んだ後に、グラスを自分の側に置いた。
姫様から。
「飲みやすいよねそれ。でもあんまり沢山飲んだら酔いつぶれちゃうから注意するんだぞ♡」
と声を掛けて貰い。確かにアルコールが3%程しか無いはずのお酒は飲みやすくついつい飲んでしまいそうだと思った。
そして姫様や姫神さんの飲んでいる高級ブランデーの水割りの減り等に注意を払い、誠に教えられて姫様や担当の人が電子タバコ等を用意していたら素早く灰皿を差し出し、吸い終わりのカートリッジが灰皿に1本入れられたら、新しい灰皿を使い終わった灰皿に重ねて自分の元に引き寄せ、下側の古い灰皿だけを残し、重ねた新しい灰皿を差し出す。
飲んでいる飲み物の入ったグラスに【汗】と呼ぶ水滴が付いていたら、内勤さんを手を挙げて呼び、内勤さんにちゃんと敬語で【おしぼり】を頼み、貰ったおしぼりでグラスの水滴を拭く。
等の本当に基礎の基礎の作法を習い、実践してヘルプの仕事を誠のフォローの元に何とかこなして行った。
そして、姫神さんから。
「いいか?聖。ヘルプの時に上手く楽しくお喋りが出来なくてもいい。誰だって最初から上手く接客なんて出来る訳が無いからな。だけど、今、誠から教えて貰ったテーブルにヘルプに着いた時に行う作業は本当に徹底的に、ほんの少しグラスに1滴でも水滴が付いていたら、姫様がカバンやバッグに手を伸ばし電子タバコを取り出したと思ったら直ぐに、そして姫様の飲む飲み物の減りに気を配り、徹底的に姫様が【居やすい環境】を作れ。話が下手でも、面白い話が例え出来なくても、その気配りは、どんな面白い話よりも、どんな上手い喋りよりも、姫様が楽しくこの場に居られる。そう感じるヘルプにとって最上の接客方法だからな忘れるなよ。」
と俺にとても大事な事を伝えてくれた。
私がホストクラブの経営に携わっていた時に【こんなに優しく寛大な姫様】なんて1人として見ませんでした。笑
まぁ今と違いイッキ飲みが当たり前に行われ【アルコール・ハラスメント】なんて言葉も当然無い時代でもありましたが。私が現役時代にリエさんが来店していたら、もうテコでもリエさんの席から離れないと言い出すでしょう。
まぁ、お陰様でヘルプをしていた時間はとても短く直ぐに担当が出来、楽が出来たんですけどね。
当時ほろよいのようなお酒があったらどれだけのヘルプに付くしか無いホストが助かった事でしょう。当時は瓶ビールの小瓶をグラスに入れてはイッキ飲みをし、入れてはイッキ飲みをしと、瓶が空になるまで飲んだものです。まぁおかげで今もビールが大!大!大嫌いのままです。笑 アイツは苦味と炭酸で酔いと吐瀉物を運んでくるヘルプにとっての死神です。




