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底辺職の下剋上 〜見捨てられた4人でパーティーを組んだら、理不尽な世界が崩壊し始めた〜  作者: yamayo8


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境界の脱皮

1. 覚悟と観測


村を出て三日。街道を外れた「境界の森」の奥深くで、アラトが足を止めた。


「リナ。次の魔物を倒せば、お前の経験値は満たされる。……レベルアップだ」


アラトの横顔は、いつになく真剣だった。


「俺の時のように、肉体の再構築が始まる可能性が高い。それには、心臓を直接掴み出されるような激痛を伴う。……覚悟はできているか?」


アラトが見せた、あの血を吐くような絶叫。リナの指先が微かに震える。けれど、彼女は真っ直ぐにアラトを見上げた。


「うん……。それでアラトの役に立てるなら、私、耐えられるよ」


「……そうか。なら、俺を信じろ。一瞬で終わらせる」


アラトの手が、リナの銀髪にポンと置かれる。その温かさが、逃げ出したいほどの恐怖を「戦う理由」へと書き換えた。



2. 執行の瞬間


茂みが激しく揺れ、銀灰色の毛並みを持つ巨体――大牙狼グレート・ウルフが姿を現した。


「リナ、見ろ!!」

「……っ、はい!!」


リナは恐怖をねじ伏せ、瞳に魔力を凝らす。アラトが石礫を投げ、狼の注意を惹きつけた瞬間、彼女の『魔力視』が狼の体内を流れる魔力の奔流を捉えた。


(見えた……そこ!!)


「アラト、右の喉元! 魔力が渦巻いて、色が薄くなってる!!」

「了解だ。……捉えたぞ」


叫びに応じ、アラトが爆発的な踏み込みを見せた。

アラトのナイフが、リナの指し示した「綻び」へ、寸分の狂いなく吸い込まれた。


ドサリ、と重い肉塊が地面に転がる。

二人の力が完璧に噛み合った瞬間、リナの頭の奥で、無機質な音が鳴り響いた。



3. 美しき脱皮と「無限収納」のストック


【経験値:1000 / 1000】

【レベルアップ:1 → 2】


心臓が爆発し、全身の骨格が作り変えられるような激痛がリナを襲った。


「……っ、が、あああああああッ!!」


リナは泥の中に跪き、激しく吐血した。肺が焼け、筋肉が千切れ、より強靭な組織へと再構築されていく地獄の苦しみ。


「耐えろ、リナ。これがお前を縛っていた世界の殻を破る痛みだ」


数分後。痛みが引き、リナが顔を上げた瞬間、アラトは思わず息を呑んだ。


慢性的な栄養失調でガリガリだった体は、劇的に変化していた。鎖骨のラインは健康的になり、ぼろぼろの布切れのような服の上からでも、女性らしい柔らかな曲線を描いているのが分かる。発光するかのような銀髪と、知力「95」がもたらす凛とした知的な光。


しかし、レベルアップの負荷で服のあちこちが裂け、白い肌が露出していた。


「……あ!!」


自分の状況に気づいたリナが顔を真っ赤にする。アラトは慌てて視線を逸らし、自らの『無限収納アイテムボックス』に手を突っ込んだ。


「……流石に狩りたての狼は生臭いからな。ドブさらってた頃に、廃棄場で見つけて洗浄しておいた『銀猫シルバーキャットの加工毛皮』がある。……待ってろ」


アラトが取り出したのは、防魔処理が施されたしなやかな銀色の毛皮だった。手際よく蔓で繋ぎ、リナの肩を覆うマントに仕立てる。


「……はい、これ。とりあえずこれで体を隠せ」

「……ありがとう、アラト」


狼の皮を被った時よりもずっと、彼女の美しさは際立っていた。

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