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底辺職の下剋上 〜見捨てられた4人でパーティーを組んだら、理不尽な世界が崩壊し始めた〜  作者: yamayo8


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22/25

死の山脈と、王の犬

夕方、俺たちは再び冒険者ギルドへと足を運んだ。

「査定終わったか?」

受付のミーナの窓口へ向かうと、彼女は顔を青ざめさせて身を乗り出してきた。

「あ! アラトさん! 査定は終わりましたけど……そんなことより、騎士団の団長様がアラトさんを名指しで訪ねて来てますよ!」

「騎士団団長? なんでそんな偉い奴が俺のことを訪ねてくるんだ?」

「なんでって……騎士団からの手紙にはなんて書いてたんですか!?」

「手紙? そんなものは知らないぞ」

「え!? 受け取ってないんですか!?」


「アラト! お前何をした!」

背後から怒鳴り声が響いた。振り返ると、いかにも怒り心頭といった顔のギルドマスターが立っていた。

「騎士団長の野郎が……いや、騎士団長様が俺の部屋でお待ちだ」

「いや、おれも何がなんだか……」

ギルマスは深くため息をつくと、俺たちを自分の部屋へと促した。

「ふぅ、いいか? 騎士団長は性格も悪くて人を見下す差別主義者だが……あいつは貴族だ。下手なことするんじゃねぇぞ」

部屋に向かう道中、ギルマスは周囲を気にしながら小さな声で教えてくれた。


コンコン。

「失礼します。アラト一行を連れてきました」

「入れ」

(なんで自分の部屋なのに許可が必要なんだ……)

ギルマスがボヤくのを耳にしながら部屋に入ると、そこにはギルマスの椅子にふんぞり返って座る豪奢な鎧の男と、その傍らに立つ2人の騎士がいた。


「君がアラト君か。私は王宮騎士団騎士団長のレジナルドだ。手紙は無視してくれたようだね。下民に無視されたことがなかったから驚いたよ」

「いや、そもそも手紙なんて……」

「まぁ、私は寛大だからね。許してやってもよい」

「いや、だから……」

「ヴィンスを知っているかい?」


その名前に、俺とリナに緊張が走った。

「勇者のヴィンス様ですよね。有名人ですからもちろん知っています」

「ふふふ、有名人だからか。君たち、同じ孤児院出身なんだろ?」

(そこまで調べがついているのか……)

ギルマスは驚いたように俺とリナの顔を見た。勇者が孤児院出身という過去は伏せられ、どこかの貴族の息子として大々的に発表されていたはずだ。


「ふぅ……。確かに俺たちは、同じ孤児院出身の幼馴染です」

俺が認めると、レジナルドはニヤリと笑った。

「実はヴィンス君がね、行方不明なんだよ」

「は?」

「君たちは底辺職なのに、そこそこ戦えるらしいねぇ。私からヴィンス君捜索の指名依頼を出してあげよう」

「お断りは……」

「幼馴染が行方不明で、君たちもさぞ心配だろう。前金にいくらか渡すから、すぐに出るといい」

俺がギルマスの方を見ると、彼は微かに首を振り(あきらめろ)と目で訴えかけていた。

「……はぁ、わかりました」

「実は一つ情報が入ってきてねぇ。ドラグフ山脈の方に行くのを見たという者がいたんだよ」


その名前を聞いた瞬間、ギルマスが目を見開いた。

「ドラグフ山脈っていったら、ワイバーンがウヨウヨいる死の山脈じゃねえか! 最低でもBランク以上のパーティーじゃなければ、近づけさせることもできねぇ!」

ギルマスが大声で怒鳴る。

「ガロン君、大きな声を出すなよ。君たちのランクはなんだい?」

(ギルマスの名前ってガロンっていうのか)

「Cランクですけど……」

「そうかそうか。おめでとう、君たちは今日からBランクパーティーだ」

「そんなこと認められるわけがないだろう! そもそも冒険者ギルドは国に属している組織ではない! あんたの命令を聞く必要なんて糞ほどもないんだよ!」

ガロンが激昂するが、レジナルドは鼻で笑うだけだった。

「口が悪いよ、ガロン君。私は幼馴染を心配するアラト君たちを思って話しているだけなのにさぁ。まぁ、少し時間をあげるから、試験でも何でもして早くBランクに上げてしまいなさい」

「簡単に言いやがって……」

「それでは、なるべく早く出発するんだぞ。私も暇ではないのでこれで失礼するよ」

レジナルドは部下2人を引き連れ、悠然と部屋を出ていった。


「くそっ!!」

ガロンが力任せに机を殴りつける。

「この依頼を断ることってできないんですか?」

「不本意だが、受けないわけにはいかない。貴族からの指名依頼を断るとなると、反意ありと捉えられてしまう。少なくともこの国での活動は難しくなるだろう」

ガロンが悔しそうに、そして申し訳なさそうに話す。王都での活動拠点と換金ルートを失うのは、今の俺たちにとっても大きな痛手だ。


「そのドラグフ山脈を越えると、何があるんですか?」

俺の問いに、ガロンは重い口を開いた。

「エルフの国、ドワーフの国……そして、獣人の国だ」


その瞬間、俺の後ろに控えていたウルの銀色の耳が、ピクリと動いた。

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