帰還と、土煙の競走
ダンジョンから這い出すと、眩い太陽が真上近くにあった。影の長さから推察するに、時刻はお昼前といったところか。俺たちはそのまま、ダンジョン街にある冒険者ギルドの出張所へと足を運んだ。
「これ、換金頼むわ」
俺は59階層までに収集した魔石や素材をカウンターへ並べた。60階層のリッチの財宝まで出すと流石に国家規模の騒ぎになるため、それは『無限収納』の奥に隠してある。
だが、それでも十分に騒ぎになった。出張所の職員が悲鳴を上げる。
「な……なんですか、この量は!? 普通は数階層ごとに戻ってきて換金するものでしょう!」
そもそも、この世界の冒険者は30階層より下へは滅多に行かない。この人数では査定に数日はかかるし、素材が駄目になってしまう恐れがあった。
「王都のギルドに応援を要請しますので、それまでお待ちを……」
「いや、それなら自分たちで行くよ。その方が速いだろ」
俺たちは呆然とする職員を尻目に、山積みの素材を再び収納へ放り込み、王都へと出発した。
「来るときは馬車で半日ほどかかったけど、今の俺たちならどのくらいかな」
「競争ですね、アラト様!」
「いいわね。負けた人が今日のお昼ご飯をおごること。……よーいドン!」
リナの声と同時に、俺たちは地を蹴った。土煙だけを残して消えた俺たちを呼び止めようと、職員が慌てて追いかけてくる。
「あ、あの! 王都からお手紙が転送されて……! いっちゃった……」
職員の手に残された封書には、王宮直属の騎士団の紋章が刻印されていた。
種族進化を果たした俺たちのスピードは、並の暗殺職を圧倒する。小一時間で王都の門へ到着した時、先頭を走っていたのは俺だった。
「ぜぇ……はぁ……、負けるとこだった……」
「こっそり自分にだけ『ヒール・レイン』使って回復してたのに……。アラトに追いつけなかったわ」
リナは涼しい顔をしているが、俺はステータス97の素早さをフル稼働させて死守した。最後尾のウルが肩で息をしながら追いついてくる。
「はぁ……はぁ……、お二人とも、速すぎですぅ……」
重装備のウルがこのスピードで走れるほうが凄い気がするが、それを指摘する余裕もなかった。
そんな俺たちを、4人の門兵が武器を構えて険しい顔で待ち構えていた。
「遠くからすごい勢いで正体不明の土煙が近づいてきていると聞いて出てきてみれば、人間ではないか」
「驚かせて……ハァハァ……すみません。これ……ハァハァ」
俺は門兵に冒険者カードを提示した。不自然に肩で息をする俺とウルの傍らで、リナが『ヒール・レイン』を放つ。癒やしの雨が降り注ぎ、俺たちの疲れを急速に吹き飛ばしていく。
その雨はついでに、門兵たちの二日酔いや腰痛、小さな傷、果ては水虫までをも癒やしてしまった。彼らは不思議そうに自分の体を触りながら首を傾げていたが、カードを確認すると、どこか晴れやかな顔で俺たちを王都へと通した。
パーティーステータス(王都正門前)
扉をくぐる前、俺たちは改めて自身の状態を意識した。
【 アラト 】
レベル:15
種族:ハイヒューマン
職業:【無名の器】
基礎ステータス:ちから 92 / 耐久力 101 / 素早さ 97 / 知力 77
装備:【深淵の黒外套】、【死を退ける指輪】
解析状況:
勇者の加護(光属性防御):85%
腐食:40%
硬化、分身、毒牙:習得済み
【 リナ 】
レベル:14
種族:ハイヒューマン
職業:【不変の瞳(慈悲)】
基礎ステータス:ちから 55 / 耐久力 67 / 素早さ 88 / 知力 138
装備:【叡智の銀首飾り】
スキル:真理魔眼、静謐の聖域、不変の愛、【天恵の慈雨】
【 ウル 】
レベル:14
種族:霊獣種:銀狼族
職業:【静寂の盾(忍耐)】
基礎ステータス:ちから 72 / 耐久力 125 / 素早さ 85 / 知力 61
装備:【白銀の騎士盾】
スキル:天命の守護、金剛不壊、銀狼の祝福




