深淵の王、土下座する
1. 35階層からの進撃
35階層を出発した俺たちは、種族進化によって得た新たな力を確かめるように奥へと進んだ。最初は出力の調整に戸惑いもしたが、一度慣れてしまえばあとは速かった。
ウルが敵を一箇所に固め、リナが最適化された広域魔法で一掃する。その隙間を俺が縫うように動き、残党を処理しながらスキルを解析していく。これまでの苦戦が嘘のように、俺たちは吸い込まれるように深淵の最深部へと突き進んでいった。
そしてついに、人類の誰もがその先に辿り着けなかった、60階層の巨大な扉の前に立った。
パーティーステータス(60階層ボス部屋前)
扉を開ける直前、俺たちは最終確認としてステータスを展開した。
【 アラト 】
レベル:15
種族:ハイヒューマン
職業:【無名の器】
基礎ステータス:ちから 92 / 耐久力 101 / 素早さ 97 / 知力 77
解析状況:
勇者の加護(光属性防御):85%
腐食:40%
硬化、分身、毒牙:習得済み
【 リナ 】
レベル:14
種族:ハイヒューマン
職業:【薬草摘み】
基礎ステータス:ちから 55 / 耐久力 67 / 素早さ 88 / 知力 138
【 ウル 】
レベル:14
種族:霊獣種:銀狼族
職業:【囮】
基礎ステータス:ちから 72 / 耐久力 125 / 素早さ 85 / 知力 61
2. 死の王との対面
重厚な扉を開くと、そこには禍々しい魔力を纏った死の王が待ち構えていた。
「ククク……愚かな人間め。ここが貴様らの墓場だ……」
「あれ? このモンスター喋れるん……」
ウルの言葉を遮るように、リッチが冷酷に指を鳴らした。
放たれたのは、このダンジョンの攻略を止めていた最凶の初見殺し――即死魔法だ。ゲームとは違い、死んだら終わりのこの世界において、即死魔法は圧倒的な脅威だった。
だが、俺の目の前で黒い魔力の塊は「パフッ」と霧散した。解析が進んだ『勇者の加護』が、魔法が当たる寸前でそれをかき消したのだ。
「……あれ?」
もう一度即死魔法が放たれるが、やはり俺の鼻先で消え去る。
「あれれ? ……もしや貴様、勇者か!?」
「違うんだけどな……」
焦ったリッチが持っていた杖で殴りかかってきたが、俺の『ちから』の前に呆気なく弾かれる。標的をウルに変えて殴りかかったが、「ボキッ」と小気味良い音が響いた。鋼鉄以上の耐久力を誇るウルを殴り、リッチ自身の手首が折れたのだ。
ふとリッチが後ろを見ると、そこにはリナが特大の『青炎球』を指先に灯し、今にも放たんとしていた。
「……すみませんでしたぁぁぁ!!」
深淵の王は、その場で見事な土下座を披露した。
3. 略奪と転職の儀式
「転職の宝珠? あ、ありますぅ! 私の宝物庫にあった気が……取ってきますぅ!」
リッチが這いつくばりながら持ってきたのは、なんと3つの『転職の宝珠』だった。
「もともと高位の神官だったので、転職の儀式も代行できます。ですので、何卒……!」
リッチの案内で、リナとウルが祭壇へと上がる。
転職による進化:新スキルの反映
リッチの儀式により、二人の職業とスキルは以下のように再定義された。
【 リナ 】:薬草摘み → 不変の瞳(慈悲)
【真理魔眼】:もともとの魔力視に鑑定の力が加わった進化スキル。魔物の弱点だけでなく、あらゆるものを鑑定し、その内容はステータス画面でパーティー共有される。
【静謐の聖域】:魔力感知が範囲・精度ともに進化し、広域索敵能力となった。
【不変の愛】:あらゆる精神異常、および外部からの精神干渉を完全に無効化する。
【 ウル 】:囮 → 静寂の盾(忍耐)
【天命の守護】:挑発の進化系。敵の注意を引くだけでなく、味方が受けるダメージを自分の耐久力で計算し、強制的に肩代わりする。
【金剛不壊】:物理耐性の進化系。どれほど強力な衝撃を受けてもノックバック(吹き飛び)せず、その場に留まり続ける。
【銀狼の祝福】:自己治癒能力が劇的に高まり、受けた傷を即座に修復する新スキル。
「よし、二人とも。これでようやく戦える準備が整ったな」
転職を終え、圧倒的な存在感を放つ二人を見て、俺は満足げに頷いた。




