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【御礼20,000PV到達】戸侯記  作者: 和音
■第五章■

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33-6 丹波【御相手】


「「どなたでございますか?」」

永重と半佐が異口同音に聞く。


「まあ待て」

永勝が笑みを浮かべたまま言う。

「しかし其方等、本当に気が合うのだのう……」

二人ともまさに「待て」と言われた犬状態である。


「半佐」

「はっ」

「一つ聞くが、御相手は其方よりもおおよそ一回り歳が下じゃ。異存はないな?」

半佐は今年二十八歳だ。

一回り下という事は、十六歳頃である。

「御相手がお嫌でなければ、某に異存はございませぬ」

半佐が答える。


「うむ。わかった」

永勝は笑みを消し、真顔になると

「先程申し上げた通り、御相手は其方等もよく知る御方の御息女じゃ」

「……」

「御相手の名前は綾と申される」

「綾殿……」

半佐が呟く。

「そして、綾殿の御父君は、広瀬兵庫助殿だ」

「なんと……!!」

永重は目を真ん丸にして驚く。

半佐も無言で驚愕の表情だ。



広瀬兵庫助康親――


本能寺の変の際、秀吉親族の避難でその隊の指揮をとった武将。

永重のその後の人生を左右するほどの経験をした、あの避難行である。

そして何より、永重と半佐が出会い、また半佐が永重に仕える事になった縁深き恩人でもあった。



「兵庫助様の御息女……」

半佐がまた呟く。


「半佐」

「はっ」

半佐が居住まいを正す。

「異はあるまいな?」

永勝が再び笑みを浮かべて聞く。

半佐は深く頭を下げて答えた。

「はっ。異などあろうはずがありませぬ」

「そうかそうか」

永勝は満面の笑みである。


「父上」

永重が言う。

「ん?」

「いま、兵庫助様はいずこに居られるのですか?」

あの避難行ののち、文をやりとりはしたものの、永重らは兵庫助と会う事が無かったのだ。

「兵庫助殿はいま、美濃広瀬を治めておる。一国一城の主じゃ」

「さすがでございますね」

永重はふっと笑いその姿を思い浮かべながら言った。


「半佐」

「はっ」

永勝が再び半佐に言葉をかける。

「念のために言っておくが……」

「は……?」

「永重のように綾殿のもとへは参るなよ?」


永重は苦笑いして頭をかいた。




--------------------------




「いいご縁を頂き良かったな」

「はい」

帰路、夜光に跨る永重が轡を取って歩く半佐に声をかけた。


「どのような御方か、見目が気になるか?」

笑いながら永重が聞く。

すると半佐が永重に向き直り

「滅相もございませぬ!某のような者に、これ以上ないお話でございます!」

「はは。そうか」


本心である。

見た目が云々ではない。

(もちろん見目麗しければ嬉しいけれども……)

永重との縁を繋げてくれた兵庫助と再び繋がるのだ。

半佐にとって、文字通りこれ以上ないお話であった。

綾殿を必ず幸せにする――

半佐の心にはその事しかなかった。


「ならば、お迎えする準備を進めねばならんな」

「準備、でございますか?」

半佐がきょとんとする。

「一家を構えるのだぞ?今のようにウチに住み込むわけにはいかぬ」

「え?」

「ましてや兵庫助様の御息女だ。余計な御気遣いなく其方と暮らして頂かねばならん」

「なるほど……」

「それの掛かり(費用)は儂が見てやる」

半佐が驚く。


「どんな家を建てるか、帰ったら皆で相談だ」

半佐以上に楽し気な永重。

ぶるるんっと夜光も連れて笑うように鼻を鳴らした。




--------------------------




家に帰ると、重兼はもちろん、夕霧と伊織、普段はほぼ出かけている月心までもが待ちわびていた。


「どうであった?」

重兼が半佐に前のめりに聞いてきた。


「はい。いいご縁を頂きました」

半佐は落ち着いて応じる。

「昔、御世話になった広瀬兵庫助様の御息女だ」

永重が笑いながら言う。


「なんと!それはそれは……」

夕霧。


「時期はいつ頃で?」

伊織が聞いてくる。


「これから三ヵ月ののちとの事だ」

永重が答える。


「これから忙しゅうなりますな」

月心がめずらしく笑いながら言う。


「……」

一方、重兼は背中を向けて震えていた。


それを見た伊織が笑みを浮かべて言う。

「重兼殿。しっかりなされ」

「……すまぬ。嬉しゅうてつい……」

重兼が涙声で応える。

「重兼殿」

半佐まで目に涙を浮かべて

「ありがとうございます」

深く頭を下げる。

「うむ……」


そんな二人を見て、夕霧やあの月心までが目に涙を浮かべていた。


「いい仲間を持ったな、半佐殿」

伊織が言う。


「さて。これから準備をしていかねばならん」

永重。

続けて

「まずは、新居だ」

「「おおーー」」


「さて、皆で、どこにどういう家を建てるかを考えるとしよう」

皆を見渡して永重が言った。




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