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第六話 " やるか "

 

 意気揚々と出発したのはいいものの、全くのノープランな二人。


 助けるなんて豪語したけど、どうすれば助けられる何て思い付かない。

 取り敢えず正面から殴り込む…のは無し。なるべく戦闘は避けて行きたい。


 なら話し合い?いや、何処ぞの馬の骨かも分からない相手に辺境伯が取り次いでくれる訳もない。


 " 小さな脳みそを働かせて考えるコウタ。"


 …おい、俺の思考に介入してくんなファル。誰が小さい脳みそだコラ。


 げらげらと笑い隣を歩くファル。本当に楽しそうだなクソ、俺もまぁまぁ楽しいけど。


「さて、結局何も思い付かないまま行くのか?流石に無謀じゃろうて」


「分かってるよ。そもそもここの言葉が分からないし…あれ?なんでさっき俺村の人の言葉が理解出来たんだ?」


「あぁ、それは私の力じゃな。言葉が分からぬのでは話にならぬから、我が勝手に翻訳してコウタの脳に届けておるのだ」


 なぬっ、そんな事が。流石はドラゴン…いや、普通のドラゴンってそんな事出来んの?


 話が脱線しかけたが、今は辺境伯の税をどうするかが優先だ。

 あの貧困具合を見る限りかなりの税をかけられているだろう。

 次の街まで行くのなら、食糧と水は必須。キノコばっかり食べるのは飽きるし、放ってもおけない。


 恩を売りたい訳じゃないけど、人脈を広げるのも大切だ。

 だから辺境伯に問い詰めてもいい筈だ!理由次第じゃちょっと怒るかもだけど。


 なんの策も思い付かないまま、辺境伯の屋敷が見える木々の間から少し姿を現す。

 外観は洋風であり、周りは黒の高い柵で囲まれている。


 屋敷はとても広い敷地を有しており、ぐるっと回れば日が暮れそうだ。


 抗太とファルは茂みに隠れ、門が見える位置まで移動し様子を伺う。


 門番は一人、眠そうに欠伸をしていた。


 こんな辺境に態々盗賊も(おもむ)かないだろう。油断しているみたいなので、侵入は容易そうだ。


「どうやって侵入するか。案外話し合ってみればいけそうか。なぁファル…あれ?ファル?」


 先程まで隣にいたファルが居ない。まさか迷子!?と抗太は慌てて周りを見渡すと、いつの間にか門番の前へと歩み寄っていた。


 馬鹿野郎!!と心の中で叫びながらも、一人茂みに潜み二人を眺める。


「あん?子供がこんなに所で何してんだ?」


「子供とは失敬な、私はこう見えてお前より歳上だぞ?それより、ここに居る辺境伯と話がしたいのだ。通して貰えないだろうか」


「ダメに決まってるだろう。子供のおままごとに付き合ってる暇は無いんだ、ドラゴンごっこなら他でやれ」


 しっし、と面倒臭そうに手を振る門番。


「そうか」


 ファルはにっこりと微笑むや否や、隠していた尻尾で回し蹴りならぬ回し尻尾で門番の後頭部を殴る。


 門番は、ぶぉえ!!と変な声を上げて地面に伏してしまった。


 ちょちょちょ、何してくれてんの!?


 流石の抗太もこれにはあんぐりと口を開ける他なかった。


 いきなり後頭部殴るとか通り魔だろ!!


「コウター、中へ入ろうぞ!」


 ファルはニコニコお日様の様な笑顔で抗太を呼び手を振る。


 可愛いけど怖いよ。薔薇には棘があるとか言うけどありすぎ。もうウニだよウニ。


 こうなってはもうファルに続くしか無く、門番が首にぶら下げていた鍵を使い門を開くと茂る植木に身を隠し徐々に移動して行く。


 屋敷に近付くにつれてその大きさを実感する。相当豪華な暮らしをしていると外観で分かる。

 中央に大きな噴水や女性の裸体を象った彫刻、それに広い花壇に水を与えるメイドの様な人物の姿も確認出来た。


 これが村から搾り取った税であれば、かなり性格の悪い辺境伯だろう。

 それを確かめる為にも、屋敷へ潜入しなければ。


「ファル、何か良い案は無いのか?」


「私はドラゴンだ。変身を解いて姿を現せば囮になれるぞ?」


「それはダメだ」


 真面目な眼差しで語尾に被せる様に言葉を挟む。


「もう傷付いてる姿を見たくないからさ」


 ファルは頬を朱に染め、胸元で手を重ねる。知らない鼓動に戸惑いながらも、そうか…と小さく返事を返した。



 見ている限りでは中の警備も手薄かも知れない。大きい屋敷だからといって警戒し過ぎたか。


 抗太は場所を移動し、屋敷の裏側へと回る。そこには裏口の様なものが存在しており警備も居ない。


 入るなら今かと腰を上げた瞬間、そっと服の袖をファルが(つま)んで引き留める。


「コウタ、ここは気配を消す能力を使おう。私が使えるから、じっとしていてくれ」


「分かった。…いや最初から使えよ!!」


 てへ、とあざとく微笑むファル。今回は可愛いより怒りの天秤が傾いた為ゲンコツを食らわせた。


 きゃう!と声を上げ涙目で頭を摩りながら気配遮断の魔法を互いにかける。俺とファルは認識可能だが、その他の人間にはほぼ気配を悟られないと言う超便利な力。


 何で最初から使わなかったのかと問い(ただ)すと、すっかり忘れていたらしい。

 ドラゴンが気配を遮断した所で有り余る覇気で結局見つかるらしく、今まで無用の長物だったと説明した。


 結果オーライと言う事で、二人は裏口からの潜入に成功し屋敷の中を探索し始める。


 中はかなり広い構造であり、何の為にこれだけ部屋があるのか分からない程だった。

 廊下に点々と並ぶ骨董品や絵も丁寧に装飾されている。


 なるべく人を避けて上層階へと登り、最上階である四階へ辿り着くと一際大きな扉を見付けた。多分ここに居るだろうと二人は視線を合わせて頷く。


 部屋の中から小さな話し声が聞こえる為、そっと扉へ耳を当てて盗み聞きを行う。


「いやいや、いい土地を貰いましたなぁ。ここは資源も豊富で暮らしには困りませんぞ」


「はっはっは、儂の成果が認められたのだ。ま、殆ど金で買った様なものだがな。その金は周りの村から徴収すればすぐ集まる。実質タダで貰う様なものよ!」


「あの話、忘れていませんでしょうな?」


「分かっておる。お前には沢山働いて貰ったからのう、税の三割を今後くれてやる」


「ありがとうございます。しかし、村が暮らしに困っていると苦情が入っているのですが…」


「放っておけ。村が無くなってもここの資源で幾らでも稼げる。何人死のうとどうでもよい!」


「そうですな!」


 二人の男が高笑いを浮かべ、楽しそうに会話をしていた。


「…ファル」


「うむ」


「やるか」


「後の事はどうする?辺境伯を襲ったとなれば、王国が黙っておらんぞ?」


「知らん。悪い奴の味方なら全員ぶっ飛ばす」


「カカ、そうかそうか。…では、やろうかのう」




 二人は勢いよく扉を蹴り破った。

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